2009年3月21日(土)「しんぶん赤旗」

主張

自衛隊法等の改定

軍部独走の歯止めなくす危険


 政府は、防衛省設置法と自衛隊法の一部改定法案を会期内に成立させる構えです。

 昨年七月の防衛省改革会議の報告を受けた措置で、今回は、防衛省の文官が任命されている防衛参事官制度の廃止、「防衛会議」と「防衛大臣補佐官」の新設を主な内容としています。来年度は、防衛政策や運用面での自衛隊の権限をさらに肥大化させる法的措置をめざしています。戦前のような軍部の暴走を許さないためだとして、政府が自衛隊政策のかなめだと説明してきた「文民統制」をつきくずし、自衛隊の権限を肥大化させるのが狙いです。

制服組の言い分通り

 改定案でとくに重大なのは防衛参事官制度の廃止です。制服組の権限肥大化につながるからです。

 防衛参事官制度は、防衛局長など内局を通さないと自衛隊制服組が防衛大臣に直接意見を具申できないようにしたしくみです。戦前の軍部が暴走し日本を侵略戦争に導いたことから、制服組が政治介入を通じて再び暴走することがないようにということで、政府が「防衛政策」の土台にすえました。

 自衛隊創設時の国会審議のなかで、当時の木村篤太郎保安庁長官は、「昔のような弊害を再び繰り返させてはいかん」(一九五四年五月三十一日参院内閣委員会)といい、「参事官制度を設けまして、長官を補佐するこの制度によって、私はいわゆる政治が軍事に優先する、この建前を堅持して行きたい」(同年三月十八日参議院本会議)と説明していました。

 政府の立場からいっても、防衛参事官制度を廃止することは、「政治が軍事に優先する」保障を取り去る重大問題であるはずです。

 河村建夫内閣官房長官は、防衛参事官である防衛省の官房長や局長が忙しすぎて「職務を十分に果たしていない」から、制度を廃止するといっています。しかしこれは、制服組の要求が背景になっている事実を覆い隠すものです。

 制服組は長年、防衛参事官制度の廃止をせまってきました。二〇〇四年七月には古庄幸一海上幕僚長が制度を廃止して制服組の権限強化を公然と要求しました。政府は発言を批判するどころか、制服組の言い分に従ったのです。

 古庄海幕長や現職の空幕長として戦前の日本の侵略戦争を美化した田母神俊雄空幕長の政治介入発言は、〇三年九月に当時の石破茂防衛庁長官が、制服組が政治に意見をのべるのは「権利であり義務だ」と訓示したことに応えたものです。防衛省の責任は重大です。

 自衛隊いいなりの組織改革は制服組を勢いづかせるだけです。ただちにやめるべきです。

海外派兵の強化やめよ

 政府が自衛隊の権限を肥大化させるのは海外派兵の強化と軌を一にしたものです。田母神前空幕長は統合幹部学校長のときに、「自衛隊の海外派遣が頻繁に行われるような情勢」だから「自衛隊は軍事専門的見地から意見を述べなければならない」(自衛隊内誌『鵬友』〇四年三月号)といっています。海外派兵を強化するために自衛隊の権限を肥大化させることは、自衛隊の政治介入を強め、軍部独走の危険を大きくするだけです。

 海外派兵の強化に反対するとともに、自衛隊の権限を肥大化させる自衛隊法等の改定案を廃案に追い込むことが重要です。



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