2009年3月18日(水)「しんぶん赤旗」

欠陥明らか 実施は無謀

要介護認定 新基準見直し


解説

 介護保険制度の要介護認定について厚生労働省が新たな調査基準の一部見直しを決めたことは、新基準に欠陥があることを同省が認めざるをえなくなったことを意味します。しかし見直しの内容は、利用者の懸念に照らして全く不十分です。

 「移乗」(ベッドからいすへの移動など)の調査項目では、新基準は重度の寝たきりの人は移乗の介助が生じていないとして「自立(介助なし)」と判断するよう迫っています。見直しではこの基準自体は変更せず、床ずれ防止やシーツ交換のために体の向きを変える介助を受けている人について「全介助」を選択すると追記します。

 しかし、介助を受けておらず、床ずれを放置されている人は「自立」(「介助されていない」に文言変更)と判断するといいます。

 認知症の人の「買い物」では、無駄なモノを多数買っていても買い物ができれば「できる(介助なし)」とする新基準は変えません。支払い不足や過払いのまま帰宅し介護者が精算しに行く手間がかかる場合に「一部介助」とするよう追記します。

 このほか同省は、いくつかの項目について手直しを検討中ですが「根幹を変えるものではない」と説明しています。

 この程度の手直しでは、必要な介護を取り上げられるのではないかという恐れは到底払しょくされません。

 同省は、「認定のバラツキを正す」ことが新基準の目的だと説明します。

 利用者の生活よりも「バラツキの是正」を上に置いて判断基準を機械化、単純化しようとする考え方です。利用者が抱える困難の具体性や特殊性をばっさり切り捨てているのです。

 それらは「特記事項」に書き込むと同省はいいますが、「特記事項」は一次判定に反映されません。認定方式の変更により、低く出た一次判定を二次判定の審査会で是正することが困難になる危険も指摘されています。

 欠陥ぶりが明らかになった制度を見切り発車させるのは、無謀です。四月実施を延期して十分な再検討を行う必要があることは、ますます明らかです。(杉本恒如)



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