2009年3月11日(水)「しんぶん赤旗」

献金疑惑、「派遣切り」、日本経済をどうするか

ラジオ番組 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、九日夜、FMラジオJ―WAVEの情報番組「JAM THE WORLD」に出演し、ナビゲーターで政治ジャーナリストの角谷浩一氏、リポーターの鮎河ナオミ氏の質問に答えて、西松建設献金疑惑、雇用破壊問題、日本経済をどうするかなどについて縦横に語りました。


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(写真)J−WAVEの「JAM THE WORLD」に出演する志位和夫委員長=9日、東京・六本木

 番組の冒頭、鮎河氏が、「年度末を迎え、社会問題化する『派遣切り』が急増する恐れが強まっています。製造業を中心に派遣各社には三月末の契約更新時期に合わせ、派遣先から契約解除の通知が連日のように届いています」と報告。「そんな状況にあって、いま、日本共産党を支持する声が高まっています。なんと、イギリスのタイムズ紙やロイター通信など、海外メディアも取材するほどの注目ぶりなんです」と述べ、志位氏を紹介しました。番組は、まず違法献金疑惑からはじまりました。

企業献金はどんな形であれワイロになる

 鮎河 まず、西松建設の巨額献金事件についてうかがいたいのですが、次々と新事実が明らかになっています。志位さんはこの問題をどうごらんになっていますか。

 志位 全体の構図としては、西松建設から十年余にわたって二つのダミー団体を通じて、自民党と民主党などの国会議員に、四億七千八百万円ものお金が渡っていたわけですね。そして西松建設は公共事業を年間一千億円くらい受注しているわけですよ。ということは、国民のみなさんの税金がこういう政治家に還流していた。それだけのお金を西松が出すんだったら、何を見返りに求めていたのか。これはやはり、自民党にも民主党にも説明責任がありますし、自浄能力が問われている。こういう問題だと思います。

 角谷 企業献金というと、政党を経由すれば問題はないということに政治資金規正法のなかではなっている。だけどその政党の支部が、政治家がやっていれば結果的にはそれはもう同じ財布にいってしまうんではないかということになってしまう。大きな企業からの献金はまさにいまおっしゃったように見返りがあるかどうかということによって献金が決まる。となると、それとワイロとの違いがよくわかんないんですけれども。

 志位 企業献金というのは本質的にはワイロですよ。

 角谷・鮎河 うん。

 志位 企業というのは営利団体なんですから、見返りを期待して献金を出すわけです。政党に対するものであれ、政治家個人に対するものであれ、企業献金というのはみんなワイロ性を持ってくる。

 ところがいまの政治資金規正法というのは、二重にザルになっています。つまり、いまおっしゃられたように、政党に対するものは、企業献金がOKとなっている。政治家個人に対するものはだめということになっていますけれども。ところが、政党に対するものでも、ワイロ性を持ってくることには変わりない。これが一つです。もう一つは、政党支部にもOKとなっている。ところが政党支部の支部長は実は政治家なんですよ。実はそういう迂回(うかい)した形で、お金が回ってしまう。

 角谷 お財布が一緒だというような感じがしますね。

 志位 そういうザルの法律だということがいえるわけですね。

なぜ政党助成金をもらわないのか

 角谷 そこでうかがいたいんですけれども、僕たちはいま税金で、政党助成金というものを国民だいたい一人二百五十円、数百億円を払っている。日本共産党は、この政党助成金をもらっていませんよね。

 志位 受け取っていません。

 角谷 これはどうしてなんですか。

 志位 まず原理的にいいますと、一人当たり二百五十円、国民みんなが強制的に出させられているわけです。そうすると角谷さんがある政党を支持されているとして、支持していない党までカンパがいくことになるわけです。思想・信条の自由に反して自分が支持してもいないようなところにお金が回っちゃう。これは憲法違反だということで、まず存在そのものがおかしいといっています。

 角谷 まず存在そのものがおかしい。だから受け取らない。

 志位 受け取らない。それからもう一つ、こういう仕掛けがありますと、政党が堕落する。つまり政党というのは、やはり国民のみなさんと草の根で結びついて、募金をしていただいたり、私どもは「しんぶん赤旗」を購読していただいたりして、自分で汗を流して国民のみなさんからの個人の献金で運営するというのが当たり前だと思うんですよ。それが税金頼みになってしまったら、堕落しますよ。

 角谷 逆に言えば、税金で政党の運営がまかなわれているならば、僕たちは政党にもっと文句をいってもいいような。僕のお金がどこに使われているかわからないと。

 志位 政党助成金が最初に導入されたのは細川内閣の時だったんですけれども、このときは、企業献金は少なくとも禁止の方向にしますと。

 角谷 そうでしたね。

 志位 その代わり、ということで、この政党助成金ができたんですよ。

 角谷 つまり、妙な金に手をつけなくてもいいようにするために。

 志位 というのが名目だったわけですよ。ところが企業献金の方は野放しになっている。いろいろな問題も起こってくる。それなのに政党助成金をまだもらうのか。私は、このさい、企業献金を禁止することとあわせて、政党助成金を撤廃すると。

 角谷 それもやめたほうがいいと。ただ志位さんのところはもらいませんといっているけれども、共産党がもらわなかった部分は、ほかの政党でまた山分けしているんですよね。

 志位 これはいまの制度上の矛盾で、腹の立つところなんですけれども。でもやはりここはもらわないで、制度を廃止していくというところで頑張りたいと思います。

 角谷 つまり企業献金と政党助成金の両方を廃止すべきだと。

 志位 両方を廃止すべきです。

漆間発言問題――どちらが真実だったかは明らか

 角谷 漆間(うるま)官房副長官が、「自民党には(捜査が)及ばないよ」ということをオフレコの懇談でしゃべったという問題がありました。これをどう思いますか。

 志位 まず、官房副長官として絶対に許されない発言です。この問題は、きょう(九日)の国会で問題になって、漆間さんがどう答えたかというと、「一般論として違法性の認識を立証するのは難しい」ということをいったまでで、「自民党に波及することはない」ということをいったことは「記憶にない」という。

 角谷 いやー、ロッキード事件を思い出すような。(笑い)

 志位 思い出しますね。「記憶にない」といったときは、だいたい事実だったというのが多いんですけれども(笑い)。この「記憶にない」というのは、結局、否定できなかったということなんですよ。

 角谷・鮎河 うん。

 志位 各社がいっせいに、「自民党に波及することはない」と流したわけです。だから、それを否定できなかったということは、どちらが真実だったかということは明瞭(めいりょう)です。

 角谷 (メディアの)全員が間違えちゃったとはちょっといえない。

 志位 いえないですね。これは、どちらが真実だったかは明らかで、マスコミの報道の側に真実があったと思う。漆間さんの方にうそがあったのではないか。さらに真相をつめて、この問題を明らかにしたうえで、こういう人は辞めてもらうしかないですね。

「自民か、民主か」という狭い枠組みでは、日本の大問題は解決できない

 角谷 先週、参院で西松の献金のことで、小池政策委員長がただしたら、自民党の閣僚(二階俊博経済産業相)はお金を返しますと。(笑い)

 志位 (小池氏は)「どこへ返すんだ」と。(笑い)

 角谷 もう団体は解散しているじゃないかと。もらっていたけど問題があるなら返します。これは(民主党の)小沢代表も同じようなことをいいました。返せばいいんですか。

 志位 返せばいいっていうものじゃない。西松の問題というのはどういう問題かというと、西松からのお金を、二つのダミーの政治団体からのお金であるかのように偽装していたわけでしょう。その偽装を、小沢さんの場合は、公設第一秘書が知っていた、あるいは(西松と)共同でやっていたのではないかという疑いで逮捕されているわけですよ。その疑惑をきちんと説明する必要があるのに、政治団体から先のことは知らない、詮索(せんさく)しない。小沢さんがいう、二階さんも同じことをいう。これは通りませんね。両方とも通らない。

 角谷 そうなると、自民党にも民主党にもそういう話がでてくると、野党共闘はどうなりますか。

 志位 こういう問題が出てきた以上、きちんと民主党としても自浄能力を発揮してもらわないと困る。小沢さん自身も説明責任を果たしているとはいえないし、民主党の方は党としてきちんと調査する必要があると思うんですよ。

 角谷 なるほどね。

 志位 小沢さんがどういうこういうというのを見ているだけじゃなくて、党としてきちんと客観的な調査をする。

 角谷 見守っているだけじゃだめだと。

 志位 見守っているだけじゃだめです。自浄能力が民主党には問われていると思います。

 角谷 そう考えますと、選挙制度が変わって、二大政党制で自民党がだめなら民主党があるさと、二大政党がいつでも代われるようになるのが一番健全になるんだといわれて小選挙区制が導入されました。ところがどっちにも問題がある可能性があるとなると。

 志位 どっちに変わっても、たとえばそういう(献金)疑惑の問題で同じような同質・同根ということになりますと、政治はよくなりませんよね。

 鮎河 ええ。

 志位 やはり、政治の中身を変えていく事が大事で、たとえばいまの問題であるならば、企業・団体献金禁止に踏み込むのかどうか、この中身が問われると思いますね。

 角谷 いま日本の政治の中で人気が高まってきている志位さんのところが、二大政党のどっちかだなんて選択肢じゃなくて、もう二者択一じゃないんだと。

 志位 そうです。

 角谷 第三極もあるぞっていうのはもっといっていいんじゃないですか。

 志位 第三極というか、「自民か民主か」という狭い枠組みのなかでどっちにいったって、いまの日本の政治の大問題は解決できない。それをこえた大きな変革をやらなければ日本の政治は立ち行かないというところにきていると思っています。

「派遣切り」――あきらめないでたたかおう

 角谷 そこで、もう一つの大きな問題、雇用不安ということです。三月までに職を失う非正規労働者が十五万人以上にのぼるともいわれている。どうご覧になりますか。

 志位 十五万人という数字は厚生労働省の数字ですが、業界団体の数字では四十万人という数字もあります。非常に心配です。三月末で契約満了になるケースが非正規の方で非常に多い。契約満了の「雇い止め」ということで、たくさんの方がまた路上に放り出される危険がある。それにくわえて、昨年末に「非正規切り」などで切られた方々の雇用保険が出たとしても九十日で終わってしまう。生活の糧がなくなってしまう。大量のホームレスが出ることを、私はたいへん危ぐしています。

 角谷 「雇い止め」でその先が見えないと、やっぱり不安は大きいですよね。

 志位 きょう呼びかけたいことがありまして、「派遣切り」ということで、派遣労働者の方に、三月の末ということになると、一カ月前から通知がくるんです。「あなたは雇い止めですよ」と。ぜひ、あきらめないでたたかおうということを呼びかけたいのです。

 角谷 どんなふうにたたかえばいいんですか。

 志位 いま全国の百二十をこえる職場・企業で、非正規の労働者の方々が、組合をつくったり、既存の組合に結集したりして、立ち上がっている。泣き寝入りしないで、立ち上がれば道は開かれる。現行法でも、「雇い止め」をさせないで、直接雇用・正社員への道は、たたかい方によっては、なかなかたいへんだけど、開かれるということを私はいいたいのです。

 角谷 みんなで集まろうというのはしたことがないし、やり方もどうやってつくっていいのかわからない。そういう不安な人いっぱいいると思いますけどね。

 志位 これは、お近くにユニオンがありますから相談していただきたいし、共産党に相談していただければ私たちも相談にのりたい。労働組合は二人でもつくれるんですよ。

 角谷 あっ、そうなんですか。

 志位 そうですよ。団体交渉権がそれで生まれてくる。憲法でそうなっている。

 角谷 そうすると、(派遣先の)会社は、派遣会社にいってくれといわれませんか。

 志位 いまの「派遣切り」というのは、私は国会でとりあげたんですけど、実は派遣労働というのは、最長でも三年までしか使えないことになっているのに、話を聞いてみると四年も五年も六年も同じ会社の同じ場所で同じ仕事していたという人が多いんですよ。

 角谷 ほんとは社員にしなきゃいけなかった。

 志位 そうです。こういうケースは当然、直接雇用、正社員にする義務が派遣先企業に生まれてきます。そういう状況(同一業務で期間制限を超えて派遣が使われていた場合)にある方はぜひ労働局に申告してほしい。私は、この前の国会で、請負が「偽装請負」だった場合は、派遣労働と同じですから、派遣労働に通算されると政府に確認させました。だからたとえば、「偽装請負」を一年半やっていた。そのあと派遣を二年やっていた。その場合は、通算三年半で、もう期間制限を超えていますから、こういう方は当然、直接雇用、正社員化を求める権利があります。ですから、これはぜひあきらめないで、労働局に事実をもって申告し、たたかってほしい。

 角谷 つまりもっとたずねる場所はいっぱいあるはずだ、あきらめちゃいけないと。

 志位 あきらめないでこれは頑張っていこうということをいいたい。

 鮎河 さて、せっかく志位さんに来ていただいたので、リクエスト曲をお願いしたいと思っているんですが、お好きな曲はありますか。

 志位 ショパンの「革命のエチュード」を、きょうはリクエストしたいです。これは、ポーランドがロシアによって蹂躙(じゅうりん)された時の抵抗の曲です。祖国を愛する抵抗の曲としてショパンは書いたんです。

 角谷 若い人が苦しんでいる。泣き寝入りしちゃいけないと。

 志位 泣き寝入りしちゃいけない。たたかおうと。

内需活性化、労働のルールについて 

 鮎河 「派遣切り」問題の背景には世界的な不況がありますが、共産党としては、どうすれば不況を打開できると考えていますか。

 志位 日本のいまの経済の悪化は、本当に急速です。アメリカやヨーロッパよりもっと悪い。どうしてこんなに墜落するように景気が悪くなっているかというと、やはり日本の経済があまりにも外需・輸出頼み、内需・家計が痛めつけられてきた。庶民の暮らしがずっと痛めつけられてきた。その犠牲の上に一部の輸出大企業が大もうけをして、もっぱら外需で稼いできた。その弱さが出たのです。ですから、内需主導への経済の切り替えがどうしても必要だと思います。

 鮎河 内需拡大への具体的な方法はあるのでしょうか。

 志位 日本経済の55%は家計消費ですから、家計消費が元気になるような政策がどうしてもいるわけですね。まずは安定した雇用がどうしても必要です。「派遣切り」をやめさせる、正社員にまで及ぼうとしているリストラにストップをかける。製造業のラインがとまっている状況があるけれども、サービス業などの人たちは、過労死させられるほど長時間労働でしょう。長時間労働、「サービス残業」をなくして、雇用を増やす。

 それから安心できる社会保障です。年々、二千二百億円ずつ社会保障費を削ってきたことが、介護、医療、年金とみんな悪くしてきたわけですから、充実の方向に転換する。そうすれば家計を直接応援しますし、将来不安をなくしますし、福祉の雇用がでてくるでしょう。これは一石三鳥です。

 角谷 志位さんは正規雇用、正社員として、いわゆる定年まで雇用されることを大前提とした社会のほうがうまくいくと。

 志位 私はそう思っています。やはり雇用というのは、期限の定めがない雇用、そして間接雇用ではなく直接雇用、これを当たり前の原則にすべきだと思います。たとえばヨーロッパの場合、非正規社員は一割前後です。日本は、非正規社員が四割近くまできちゃっている。私はヨーロッパくらいのところを目指すべきだと思うんです。ヨーロッパの場合は、正社員と非正規社員の間に均等待遇のルールがあります。同じ仕事をしたら、同じ給料、ボーナス、休暇がもらえる。ドイツにも派遣労働者がいますが、派遣労働者と派遣先の正規労働者と待遇が同じですから、そうしますと、会社からすると派遣労働者のほうがコスト高になる。ですから、だんだんと正社員のほうに移っていく。こういう形を日本も追求すべきだと思います。

なぜいま共産党か

 鮎河 そんななかでいま共産党の人気が高まっています。とくに若者の人気がすごいようですが、なぜいま共産党なんだと思いますか。

 志位 自分でいうのはなかなか難しいんですけど(笑い)、この間、私たちは、若い方々の「使い捨て」労働、人間を絞れるだけ絞って、「使い捨て」というひどい労働のあり方をずっと問題にして、人間らしい労働のルールをつくろうとずっとやってきました。それがかなり若い方々の気持ちにも響いているという感じがします。

 それからもう一つは、世界的な状況では、多くの方が、資本主義はどうも危なくなってきたという感じを持っていると思うんですよ。資本主義の本家だと思っていたアメリカで大失敗がおこったわけでしょう。はたしてこの資本主義というシステムで、貧困や格差、投機マネー、恐慌、地球環境、こういう問題が解決できるんだろうかということがいわれだしました。私もメディアによばれて、「資本主義は限界か」というテーマでお話しさせていただいたことがありましたけれども、そのときにはマルクスの『資本論』の一節を引いてという話にもなってくる。資本主義という体制に先があるんだろうかというなかで、共産党に対するいろいろな新しい注目が生まれていると思います。

 鮎河 志位さんきょうはありがとうございました。

 角谷 まだまだうかがいたいことはあったんですけれども、どうも時間がきてしまいました。ありがとうございました。

 志位 ありがとうございました。



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