2009年3月9日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

9条の会が劇団

僧侶・保育士…「きゅう」旗揚げ

初体験者でも、思いは熱く

来月初出張「君が代」問題描く

大阪市西区


 全国に広がっている「9条の会」は憲法9条を守ろうの一点で力を合わせ活動しています。講演会や学習会はもとより、会員の創意を生かした取り組みもみられます。静岡県の「九条の会掛川」では会員の趣味の野鳥観察を通し平和を考え、9条を実現しようと、野鳥観察会を実施しています。ユニークなものには劇団をもっている「会」もあります。大阪市の「憲法9条の会・西区」です。同「会」の文化活動を紹介します。


 大阪市の「憲法9条の会・西区」の会員でつくる劇団「きゅう」。一月末の旗揚げ公演は四回とも満員御礼。早くも決まった四月の初出張公演に向けて、練習で汗だくです。

 演目は永井愛の「歌わせたい男たち」。都立高校卒業式で「君が代」を歌わせようとする校長らと、自らの意思を貫く社会科教師を描くものです。

 出演者を奮い立たせるのは観劇者の半数にも及ぶ人たちからのアンケートでした。

 観劇した中学校現役国語教師(56)は「おもしろい劇なのにやがて怖い。その中に笑ってられへん部分がいっぱいある。職場の人を誘って行ったんですが、『いつも先生が職員会議で言うてることが、このことだったんですね』と言ってくれた」と話します。

 出張公演にかける思いを、練習の汗をぬぐいながら劇団員は語ります。座長で保育士の川崎洋子さん(53)は「戦争の話になった時、父の初めての涙を見た。ついこの前のことです。戦争に行った人は、六十年たっても傷を引きずっていると思うと、戦争を知らない私たちこそ、思い切り強く声を上げなければ」と力を込めます。

 僧侶で舞台監督の佐野彰義さん(61)は「ここは大阪大空襲の地。寺は全焼したが父はかろうじて助かった。八回も大空襲にあい一万人を超える死者を出した被災地であるからこそ、平和を求める発信地にしたい」と話します。

 同「会」事務局長の泉田忠義さん(65)は「戦争をする人間に変えるためにはどこを抑えたらいいかを考えて、権力者は一番自由であるべき教育の現場に焦点を当てている。憲法九条を守る、戦争をさせないと西区で頑張っているが、全くマッチする中身の劇、それを今度も見てもらいたい」と言います。

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 「憲法9条の会・西区」の誕生は二〇〇五年。同「会」文化部長の清水賢造さん(58)は「七千ある九条の会といえど、文化部がある会は、そうはないはず」と誇ります。文化フェスタを開き、平和ツアーやうたごえの会など多彩に企画してきました。

 同「会」会長の宮本福夫さん(81)は昨年六月、文化部が劇団を結成したことを「えらいこと始めた、しまったと思ったもんな。けいこを見たら中学校の学芸会みたいやった。大丈夫かいな、後から苦情来んければいいが」と心配していました。

 宮本さんはスタッフとして初公演は受付を担当しました。その時の驚きを「ワーッとホールから笑い声が聞こえてハッとした。信じられへん思いやった。途中から抜けて行く人もいない。出てきたと心配したらトイレ、やれやれと思った」と話します。

 平和への思いは人一倍でも、演劇はやはり素人。福祉ボランティアの本田睦子さん(65)は初体験を「とにかく間違えないでやることでいっぱい。セリフがなかなか出てこなかった」と明かします。

 同じく初体験で元市職員の泉田さんは「感情移入が難しく行動もついていかない。役所勤めでしたが、人生でこんなにぼろくそに言われたのは初めて。しかし公演最後で涙が出た。これが感情移入いうものなのかなとわかった」と劇団員としての成長を語ります。

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 会場は狭くて立派な装置も組めず観客席まで手づくりだった前回。それでも「よくまあ、あの観客席をつくりましたね」と評判を呼んだ苦心作です。今回は京都府精華町の二百人収容のホールです。

 年齢も職業もさまざまです。「けいこに来れなくなったり、公演直前にも仕事でやむをえず出演できない人も出て、急きょ、役柄を女性バージョンにしてほかの女性に演じてもらった」と川崎座長は劇団員を気遣います。

 演出をした立場から佐保田章さん(63)は「なんぼ、ぼろくそに言われても役者はじっとがまんせなあかんのですけれど、何でそこまでいわれなあかんねんとなってしまう」と語ります。

 しかし「そこを、みんなが乗り越えてがんばった。初々しいとは言えへんけど、素人でもこの問題を訴えるためにここまで頑張るのかと、その心意気が伝わった。伝わったことがまたみんなの心を励まして、こうしてがんばってけいこしている」と力を込めます。

 劇団員の思いは一つです。九条の会呼びかけ人・澤地久枝さんの「小さな人間は小さな力しかないが、集まれば大きな力を持つ相手を変えることができる」の言葉です。大阪市の西区でも小さな力を育て、それで憲法九条を守る、の強い意思です。

 けいこの合間、大森輝夫さん(65)は笑いながらしかしはっきりと、言い切りました。

 「われら、怖いもの知らずの憲法九条の会です」(小林信治)



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