2009年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

“経営者の誇りはどこに”

御手洗氏ら国会に呼べ

宇都宮参考人 きっぱり

衆院予算委 笠井氏質問


 国会ではじめて「非正規切り」に責任がある業界団体の代表が呼ばれて行われた二十四日の参考人質疑(衆院予算委員会)。「反貧困ネットワーク」代表の宇都宮健児弁護士と、日本自動車工業会の川口均労務委員長が出席しました。日本共産党の笠井亮議員が雇用を守る大企業の社会的責任をただしました。(Movie


大企業は社会的責任果たせ

 笠井氏は「大量の『派遣切り』『非正規切り』をつくり出した、企業の『社会的責任』の核心点はどこにあるのか」と参考人の見解をただしました。

 宇都宮 大企業の大変な内部留保がどうして増えたのか。派遣労働者が残業を繰り返し、働いた結果ではないか。それなのに不況になると(非正規労働者の)首を切り、寮や社宅を追い出している。なかには生存の危機に陥り、自殺を試みる方も発生している。こういう人たちのおかげで企業は利益を上げているのに、「関係ない」ということでいられるのか。

 自動車工業会の川口氏の前で、宇都宮氏が鋭く告発しました。▽何年働いても賃金が上がらない▽都合が悪くなればいきなり首を切られる▽結婚もできないし、子どももできない―など、宇都宮氏は派遣労働者から聞いた実態を突きつけ、「怒りを通りこして悲しくなる。自分のところで働いている労働者が、人間らしい生活ができて、幸せな家庭を築けることを、誇りに思うべきだ。そういう誇りやプライドはどこへ行ったのか」と訴えました。

 宇都宮氏の発言は、財界総本山の日本経団連にまで及びました。

 宇都宮 派遣労働者が働いているのは、経団連の役員もかねているような名だたる一流企業だ。そういう会社で人間をモノのように使い捨てている。

 笠井 そうした大企業に社会的責任を果たさせるために、国会はどういう仕事をすべきか。

 宇都宮 国会に経団連の役員の方は来ているのか。経団連の御手洗冨士夫会長、トヨタの経営者など経営者自身を呼んでもらいたい。なかにはこういう経営者が、違法・不当な派遣切りを行っている。国は強く指導すべきだ。

自動車業界団体の代表は

人員削減計画 実態の把握もせず

 笠井氏は自工会の会員企業(十四社)の、グループ会社も含む人員削減計画を質問。川口氏は、昨秋から三月末に向けて、自工会参加各社で契約が非更新となる非正規労働者は三万人だと述べたものの、企業ごとの数字は答えません。それどころか、「三万人の数字も新聞報道等で報じられた内容の集計だ」と発言しました。笠井氏は「自工会として(実態を)つかんでもらいたい。いわないなら、個々の企業をよぶしかない」と厳しく指摘しました。

 さらに、法令順守(コンプライアンス)の問題では――。

 労働者派遣法には、「派遣期間」が三年を超える場合は、派遣先の企業が労働者に「直接雇用」を申し込む義務が定められています。ところが、この規制を逃れようと製造業大企業では「偽装請負」が横行してきました。

 この問題をめぐり、「各社ごとの状況は把握していない」などと人ごとのように答える川口氏に対して、笠井氏は「自工会としては知らぬ存ぜぬではすまされない」と追及。国の「労働者派遣事業適正運営協力員制度」に自工会役員がかかわっていることを指摘しました。

 協力員は、労働者派遣事業の運用の実態をめぐって、法違反の疑いがある事案を把握したとき、行政機関に連絡する役割を担っています。東京労働局ではこの協力員に、自工会から奥村政一参与・労務室長が入っているのです。

 笠井 自動車業界内の法違反の実態について法令順守の立場からも、当然つかんで、報告すべきではないか。

 川口 ご指摘の点については、自工会に持ち帰って各社と確認をすすめてまいりたい。

内部留保活用 担当者に認識なし

 笠井氏はさらに「偽装請負」で働いていた期間も「派遣期間」に通算され、合算して三年以上なら「直接雇用」の義務が生じることを指摘。「その場合、すでに『直接雇用』になっているべきだ」とのべ、自工会の認識を確認しました。

 川口 三年継続した後の(直接)雇用に関しては当然、コンプライアンス(法令順守)の観点で対応するべく準備をしていたが、昨今の経営環境の大幅な変化の中で、その状況が百八十度変わってしまった。

 笠井 「経営環境の悪化」ということにかかわらず、(これは)法令だ。すでに五年、六年と働いているのに「直接雇用」を申し入れていないという事態がもう起こっている。

 笠井氏はさらに、大量解雇は「万策尽きたものだとは納得できない」と強調。自動車関連を含む製造業大企業がためこんでいる百二十兆円の内部留保のわずか1%を活用すれば、四十万人を直接雇用できると主張しました。

 河村建夫官房長官や麻生太郎首相も内部留保の活用を経営者団体などに要請するとのべています。

 笠井 政府から内部留保の活用について働きかけがあったのか。

 川口 記憶にない。

 政府の「要請」については、「派遣切り」に一番の責任がある自動車業界の団体の労務担当者の認識になかったのです。



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