2009年2月24日(火)「しんぶん赤旗」

主張

財界の消費税17%提言

国民に負担転嫁の身勝手さ


 日本経団連が「国民全体で支えあう持続可能な社会保障制度を目指して」と題する提言を発表し、改めて消費税増税を求めています。「現役世代に過度に依存」した「低負担」では社会保障を維持できないとして、二〇一五年度までに10%、二五年度までに17%への増税が必要だとのべています。

 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、消費税増税を財源に、法人税の10%減税を要求してきました。この要求ではっきりしているように、提言の狙いは財界・大企業の保険料と税の負担を減らすことです。

庶民は過酷な負担

 提言は、社会保障には救急医療体制への不安など「ほころび」はあるものの「中福祉」の水準であり、「低負担」では維持できないとしています。国民の「低負担」を「中負担」に増やすことに焦点があるかのような描き方です。

 北欧を「高福祉」、ドイツやフランスを「中福祉」とするなら、日本は「低すぎる福祉」です。社会保障として国民に給付されている水準は、GDP(国内総生産)と比べてドイツ、フランスが30%をちょっと切るぐらいなのに、日本は17%にすぎません。

 「低負担」と言いますが、日本の所得税の課税最低限は先進国で最低です。国保や国民年金をはじめ社会保険料は低所得層ほど過酷な負担を強いられています。「低所得者のほうが社会保障負担が非常にシリアス(深刻)で、むしろ高額所得者は負担感が非常に緩い」(塩川正十郎元財務相)。こんな声が元閣僚から上がるほどです。

 負担が低いのは塩川元財務相が指摘した高額所得層だけではありません。大企業の税・社会保険料の実際の負担率を比較すると、例えば自動車大手では「中福祉」と目されるドイツより7%、フランスより11%も低いのが実態です。

 低所得層ほど所得に占める負担割合が高い消費税を大幅に増税し、大企業の負担を減らすことには、まったく道理がありません。

 提言は「ドイツやイギリスにみられるように、消費税率が10%台後半になることは不可避である」と決め付けています。しかし、ヨーロッパ諸国の社会保障の財源の大半は社会保険料、とりわけ企業の保険料負担の比重の高さが特徴です。社会保障の財源に占める消費税は日本もヨーロッパも一割程度です。一方、企業の保険料負担はフランスが四割台、ドイツ、イギリスが三割台に対して、日本は二割台にとどまっています。

 財界の社会保障財源の議論は、大企業の負担をさらに減らして、あわよくばすべて消費税に置き換えようという身勝手極まりない主張です。ヨーロッパ諸国のあり方とは正反対です。

財界の言いなりでは

 そのヨーロッパでも消費税の逆進性には厳しい批判があります。「付加価値税(消費税)は、(フランス)革命前体制にひけをとらない逆進税である」(パリ第一大学のリエム助教授、ルモンド・ディプロマティーク日本語・電子版)

 麻生内閣と自民・公明は来年度税制法案の「付則」に書き込むという卑劣な手段で、消費税増税のレールを敷こうとしています。

 きちんと負担しなければならないのは財界・大企業です。財界の言いなりでは不況の打開どころか暮らしも経済も成り立ちません。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp