2009年2月23日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

妊娠解雇 ひどすぎる

法律違反なのに 依然として横行


 妊娠や出産を伝えたら、「会社を辞めてくれ」と言われた―。妊娠・出産を理由とした法律違反の解雇や退職強要が、依然として横行しています。新しい命を宿した女性が大事にされない社会は間違っています。(染矢ゆう子、平井真帆)


実態(1) 切迫流産で安静必要

夜10時まで残業つづく

 Bさん(35)は結婚して、それまで勤めていた東京都内の会社をやめ、名古屋市で就職活動をはじめました。

 結婚した女性を採用する会社は少なく、ようやく見つけた印刷会社。「妊娠したあとも自宅で仕事ができるようにコンピューター環境を整えていく」との約束を信じて就職しました。

 夜10時までの残業のある職場。裁量労働制で残業代はなく、手取りは17万円もありませんでした。

 数カ月後、妊娠2カ月だとわかりました。妊娠を告げると専務は「やめる方向で」と言いました。

 会社側にBさんの健康に配慮する姿勢は見られませんでした。

 Bさんは切迫流産と診断され、薬を飲んで安静にしていなければならない事態になりました。

 薬の副作用で気分の悪い日が続き、週に3日休むこともありました。

 もともと就職をよく思っていなかった社長は「気分が悪いような顔をするな」と嫌がらせ。夜10時までの残業も続きました。

 体調がすぐれなかったこともあり、妊娠がわかった翌月に退職することになりました。

 専務も「すぐ妊娠するような人をとったのが間違いだった」と追い打ちをかけました。

 「はじめの約束は何だったのかと思います」。Bさんは今でも納得していません。

実態(2) 保育士やめ「パートに」と…

園長の嫌味 耐えられず

 首都圏で保育士として働いていたAさん(26)が妊娠したのは、勤めて1年数カ月たったときでした。

 園長に告げると「あら、困ったわね」と迷惑顔。Aさんはつわりもひどく、おなかも張り気味でしたが、「病気じゃないんだから」と通常通りに勤務。園庭の飾り付けのために、屋根の上に登らされたこともありました。

 Aさんの園では、出産後も正社員として勤めている人は1人もいません。

 園長には、「1度退職して、パートになることも考えたら? ほかの人もみんなそうしてるのよ」と言われました。

 毎日顔をあわせるたびに嫌味を言われ「パートに」と迫る園長に耐えられず、Aさんは妊娠8カ月で退職することにしました。

「一人で悩まないで」

相談相次ぐ にいがた青年ユニオン

 新潟県のにいがた青年ユニオンには女性からの相談が相次いでいます。

 裁量労働制で働く正社員の女性は、昨年結婚。昨年11月に「子育て後、仕事を続けたい」と上司に伝えたところ、12月に「業務縮小で解雇する」と根拠のないことを理由に、1月半ばに退職を余儀なくされました。

 契約社員の複数の女性は、「3月に親会社にうつってほしい」と言われました。サインするように言われた契約書には「3年の契約で、更新はない」と書かれ、「妊娠したら解雇」と口頭で言われました。しかも男性は正社員になりますが、女性はなれません。現在ユニオンで相談中です。

 にいがた青年ユニオン書記長の山崎武央さんは「派遣切りの次は正社員切りです。若い男性や女性がターゲットにされています。妊娠・出産を理由にした解雇や不利益取り扱いは均等法違反です。一人で悩まないで組合に相談を」と話しています。

増える非正規雇用

育休ほとんど取れず

 法律上は禁止されているはずなのに、へらない妊娠等を理由とした解雇。「正社員にという話もあったが妊娠がわかり解雇された」「妊娠がわかり、派遣先に『責任を負えない』といわれ解雇された」「『うちの派遣会社は育児休暇を認めてないよ』といわれた」などの実態が横行しています。非正規雇用の増加がその一因だと考えられます。

 2005年から育児・介護休業法が改定され、非正規雇用の労働者でも、一定の要件を満たす人は育児休業が取れるようになりました。

 しかし、厚生労働省によると、08年に育児休業を取得した労働者は、正規雇用の労働者が15万6182人いるのに対し、非正規雇用の労働者は4966人。働く女性の2人に1人は非正規雇用ですが、育児休業を取れている人はごくわずかです。

 派遣会社に聞くと「今年100人が育児休暇を取得しました。法律で取得可能な方にはこちらから声をかけています」という会社もある一方、「出産前に契約を終了する方が多く、産休・育休をとる人はほとんどいません」という会社もありました。

 不安定な非正規雇用の現実が、妊娠等を理由とした解雇や退職強要を許している背景の一つといえそうです。

妊娠理由の解雇は禁止

 労働基準法19条1項は、会社(使用者)が、産前産後休業中とその後30日間は女性労働者を解雇してはならないと定めています。この期間内は、経営上の都合などを含めどんな理由があっても解雇できません。

 また、男女雇用機会均等法9条3項は、会社が婚姻、妊娠、出産したことや産前産後休業等の権利を行使したことを理由として、女性労働者に対し解雇やその他の不利益な取り扱いをしてはならないとしています。

 さらに、同法9条4項は、妊娠中及び産後1年以内の解雇は、会社が「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇でないこと」を証明しない限り、無効と定めています。

解雇を通告されたら…

 本人の同意なしに辞めさせることを解雇といいます。解雇するには、合理的な理由が必要で、妊娠したことを理由とした解雇は許されません。

 女性労働者に無理やり「同意」させたとしても、女性労働者の真意に基づくものでないと認められるときは、「退職強要」に該当し、許されません。

 解雇を通告されたり、退職を強要されたりしたら、きっぱり同意しないと伝えましょう。

 理由を書面で説明させ、記録をとっておくことも大事です。

 できるだけ早く、職場や地域にある労働組合に相談しましょう。


お悩みHunter

希望部署に行けず休日出勤も

  飲食店で正社員として勤めて1年くらいです。私は厨房(ちゅうぼう)に入って、つくる仕事をしたいのですが接客をやらされています。おまけに休日も「忙しいから出てきて」と言われ、断ると「もう少し愛社精神を持て」と言われてしまいました。今の仕事は好きですが、休みの日は自分のことに使いたいし、希望の部署に行けるかもわかりません。この仕事を続けるか迷っています。(26歳 女性)

まず上司に希望を伝えてみて

  1年くらい仕事を続けていれば、そろそろ職場や仕事のいいところや、悪いところが見えてくるころだと思います。

 あなたにとっていまの仕事のいいところは何でしょうか。お客さんが喜んでくれたこと、少しずつ仕事ができるようになったこと、などいろいろあると思います。

 逆にいまの仕事が自分に合わないとか不満に思うことがあると、なかなか続けられないですよね。

 いま、あなたが希望の部署でないところで働いているのも休日に出てくるように言われるのも、ようするに職場がうまく回るようにするためかもしれません。

 ただ、会社の都合とも言えますから、そう考えるとちょっと理不尽に思うかもしれません。

 私は自分を犠牲にしてでも会社のために働くべきだという考え方は間違っていると思います。

 それを押し付けることはもってのほかです。

 しかし、上司はそこで働いている職場のみなさん全体のことを考えて、あなたに接客の仕事を任せたり、休日の調整をしているのかもしれません。

 あなた自身が負担に感じてしまうようだと職場の仲間にとっても良くありません。やはり上司に希望を伝えることが大切です。

 たとえ希望がすぐには通らなくても、それを理解した上であれば、働けるのではないでしょうか。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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