2009年2月16日(月)「しんぶん赤旗」

主張

宇宙の軍事利用

憲法度外視の作業を許さない


 自民・公明の与党と民主党が強行した「宇宙基本法」の施行(二〇〇八年八月)から半年にしかならないのに、宇宙の軍事利用に向けた動きは大きく進んでいます。

 防衛省は宇宙を軍事利用するための「宇宙開発利用に関する基本方針」を先月十五日発表し、具体化に向けた作業を加速しています。宇宙の軍事利用は、世界で有数の軍隊となった自衛隊の作戦能力を飛躍的に強めるものであり、許すわけにはいきません。

海外で戦争する備え

 防衛省が具体化を急いでいる宇宙の軍事利用計画は、政府の宇宙開発戦略の中核です。政府の宇宙戦略本部が四月にもまとめるとしている「宇宙基本計画(案)」でも、年末までに行われる「防衛計画の大綱」の見直しでも、軍事利用計画は戦略的な国家政策に位置づけられるとみられています。

 政府・防衛省は、宇宙で大もうけを狙う軍需産業との一体化を進めるだけではなく、独立法人・宇宙航空研究開発機構や大学が培ってきた技術的成果をとりこみ、宇宙開発事業に軍事秘密の網をかぶせることさえもくろんでいます。

 防衛省の「基本方針」があげている情報収集・警戒監視、情報通信、測位、気象観測の軍事衛星はどれも、日米軍事同盟の侵略的強化政策にもとづいて、アメリカとともに海外で戦争できる作戦能力づくりが主眼です。

 「基本方針」は偵察衛星である情報収集衛星が「国際平和協力活動に資する現地状況の把握」のため必要といっています。海外の戦場で交戦相手の動きを把握し、作戦することを考えているのです。政府が運用する情報収集衛星を他省庁とともに使う現在のやり方ではなく、自衛隊専用の衛星を求めているのはそのためです。

 通信衛星の保有も海外の戦場でたたかう部隊への「確実な指揮命令」が目的です。戦場での部隊間の通信はぼう大で、民間の回線を利用する現在のやり方では対応できないからです。

 早期警戒衛星の保有もアメリカの戦略にそったものです。弾道ミサイルの早期探知が「日本防衛」のためという説明はごまかしです。日米安保条約にもとづく米軍基地防衛の義務を果たし、「日米同盟」を口実に、日本の頭上を越えてアメリカ本土に向かう弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とすよう求めるアメリカの要求にこたえるというのが実際です。

 宇宙の軍事利用は、アメリカとともに海外で戦争するさいの備えにほかなりません。世界では紛争を戦争ではなく政治的・外交的に解決する動きが大勢となっています。日本は、国際社会の平和のとりくみに冷水をかけ、孤立の道を進むべきではありません。

国民生活守るためにも

 政府・防衛省の宇宙軍拡は、日米軍事一体化を狙うアメリカの要求と、宇宙を新たなもうけ口にしようとする財界・軍需産業の要求にこたえるためだけのものです。しかも軍事衛星の開発・保有・維持には巨額がかかります。現在地球を回っている四基の情報収集衛星でさえ、かかった費用はすでに六千億円を超えています。天井知らずの経費負担のために犠牲にされるのは、国民生活予算です。

 宇宙の平和と国民のくらしを破壊する憲法度外視の作業を、政府はただちにやめるべきです。



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