2009年2月13日(金)「しんぶん赤旗」
キヤノン工事裏金事件
御手洗会長に強いコネ
大賀容疑者が誇示 元社員証言
キヤノン工場の大型工事を舞台にした裏金脱税事件で、所得隠しを主導したとされるコンサルタント会社「大光」(大分市)社長の大賀規久容疑者(65)が日ごろから部下に「御手洗さんと強いコネがあるから会社はなりたっている」と吹聴し、キヤノン会長の御手洗冨士夫日本経団連会長との太いパイプで業務をすすめていることを周辺に誇示していたことが本紙の取材でわかりました。
今回の脱税で所得隠しに使われたとされるのは、「大光」のほか、内装工事業「ライトブラック」(大分市)、「匠」(東京都千代田区)の三社です。いずれも大賀容疑者が経営しています。
脱税の舞台となった会社で大賀容疑者の部下だった男性は「大賀社長は社内で『御手洗さんとは相当強いコネがあるから会社はなりたっている。御手洗さんがバックにいるから仕事が来ているんだぞ』と話していた」と証言しました。
元社員によると、ライトブラックは内装業や中小企業の技術開発協力が主力業務だったといいます。同社が取り扱っていた延べ床材は米国製で、通常の国内品より割高。キヤノンが大分新工場で利用したほかは全く需要がなかったといいます。大賀容疑者は技術開発支援についても「御手洗さんがバックにいるから来ているんだ」と発言。キヤノンが出資した技術開発の代行協力という形だったと打ち明けます。
三社あわせての社員は十三人しかいませんが、キヤノン関連の売り上げは二〇〇三―〇七年の五年間に、約五十一億円と収入の大半を占め、キヤノンへの依存が際立ちます。
三社の中でもっともキヤノンからの受注額が多いのが「ライトブラック」の約三十二億九千万円です。大分キヤノンマテリアル事業所のほか、川崎、宇都宮両市のキヤノン関連施設の建設工事でも下請けを受注。「匠」は、キヤノン本社役員室の内装工事を直接請け負うなどしていました。
御手洗会長は大賀容疑者逮捕後に「長年の友人」と認めたうえで「私とキヤノンが関与したことではない」とのべました。
工事見積書を事前点検
大賀容疑者 鹿島にかさ上げ指示
キヤノン工場建設をめぐる脱税事件で、コンサルタント会社「大光」の社長大賀規久容疑者が大手ゼネコン「鹿島」に対し、キヤノンに提出する工事見積書を事前にチェックし、一部工費をかさ上げするよう指示した上で了承していたことが十二日、分かりました。
関係者によると、大賀容疑者が見積書を要求したのは、鹿島が計約四百二十億円でキヤノンから元請け受注した大分市内のデジタルカメラとプリンター関連部品製造の二工場建築工事。同容疑者は鹿島が見積書をキヤノンに出す前に見せるよう求め、鹿島担当者に「もっとコストを上げて、もう一度持ってこい」などと指示したといいます。
鹿島は工事に掛かる経費を算出し直し、二回目で大賀容疑者の了承を得ました。鹿島が同容疑者に支払ったコンサル料は受注額の3%程度に当たる十数億円に上ったとされます。
大分の工場建設をめぐっては、大賀容疑者が一部下請け業者を指名し、鹿島に各業者の見積もりを丸のみさせていたことが既に判明しています。
大賀容疑者がキヤノンに出す鹿島の見積額をかさ上げするよう指示したのは、自らの意のままになる業者を下請けに入れ、多額の架空工事代金を支出させるための事前工作だった疑いもあるとみられています。