2009年2月5日(木)「しんぶん赤旗」

理不尽な「派遣切り」止めよ
政治は責任果たせ

衆院予算委 志位委員長 生々しい実態示しただす

大企業には雇用守る体力ある


 四日の衆院予算委員会の基本的質疑。日本共産党の志位和夫委員長は、大企業による「派遣切り」の生々しい実態を具体的に示し、麻生太郎首相に、政治の責任で「派遣切り」をやめさせるよう迫りました。いすゞ、マツダ、パナソニックなど大企業の横暴を突きつけた志位委員長の質問に、委員会室は静まり返り、与野党議員が食い入るように論戦を見つめました。(ムービーはこちら


内部留保は急膨張

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(写真)パネルを示し、「派遣切り」問題で麻生内閣を追及する志位和夫委員長=4日、衆院予算委

 「『政治災害』であるという認識と反省が必要ではないか」。四日の予算委員会で質問に立った日本共産党の志位和夫委員長は、大量の「派遣切り」「非正規切り」を引き起こした政治の責任を追及しました。

 派遣労働の急増は、自然現象ではありません。政府・与党は財界のもとめに応じて、一九九九年に派遣労働を原則自由化し、二〇〇四年からは製造業にも広げるなど、労働法制の規制緩和を繰り返してきました。

 志位 政治の責任への真摯(しんし)な反省があってこそ、対応も真剣で本腰を入れたものになる。

 麻生首相 労働者派遣法は雇用を確保し、働き方の多様性にこたえるうえで、一定の役割を果たしてきた。

 「政治災害」の責任を認めようとしない首相に対し志位氏は、「雇用を確保したというが、つくられたのは大量のワーキングプア(働く貧困層)だ。労働者派遣法は労働者のニーズではなく、財界のニーズでつくったものだ」と批判しました。

 大企業による大量解雇は拡大する一方です。厚生労働省の調査でも昨年十月から今年三月末までに約十二万五千人、業界団体の試算では製造業で働く派遣・請負の失業は三月末までに四十万人にものぼるといいます。

 こうしたもとで、失業者の住居、生活、再就職の支援に万全をつくすとともに、これ以上の「非正規切り」をやめさせるために、可能なあらゆる手段を尽くすことが求められています。

 志位氏は、こう述べた上で、大企業が進めている大量解雇がやむを得ないものといえるのかとただしました。

 「大企業は、つい最近まで空前の黒字を誇っていたではないか。その金はいったいどこにいったのか」。志位氏はパネルを掲げて、この十年間に大企業が非正規労働者を急増させる一方で内部留保を急膨張させていることを示し、「この巨額の内部留保のごくわずか、1%を取り崩すだけで四十万人の非正規社員の雇用を維持することができる」と述べ、大企業には雇用を維持する体力があることを明らかにしました。

 志位 大企業には雇用を守るための「努力」の余地はまだある。大量解雇はそれを行わなければ経営破たんに陥るといったような、「万策尽きたやむを得ないもの」とはいえない。

 首相 いまあわてて(首切りをして)いる企業も目立つ。がんばれるところもあるのではないか。

 志位氏は、「大企業にはその気になれば雇用を守れる体力があるとお認めになった」と述べ、大企業に責任を果たさせるよう求めました。

労働者より大株主優先 資本主義の堕落ではないか

 「少なくない大企業が不況下で株主配当を増やしながら、労働者の『首切り』を進めている」

 志位氏は、大企業が十年間で経常利益を八・二兆円、株主配当金を四兆円増やす一方、従業員給与を二・三兆円減らしていること(グラフ)を示し、「額に汗して働く労働者より、ぬれ手で粟(あわ)のもうけを手にしている大株主を優先する。これは資本主義としても堕落ではないか。企業にとっても未来がなくなるのではないか」と迫りました。

 志位 株主への配当を至上のものとし、「従業員やその家族」「地域社会」に対する責任を果たしているとはいえない経済団体、大企業の代表を集め、経営姿勢の誤りを、道理をもって説き、「大量解雇はやめよ」と正面から求めるべきだ。

 首相 私がみんなの前で経営のあり方という個別の企業のあり方を説くというのは納得できない。

 志位氏は「経済界をみんな集めて正面から説けと言っている」と批判し、二度とこうした「政治災害」を起こさないために、派遣法を原則自由化以前に戻し、登録型派遣を原則禁止する抜本法改正を行うよう求めました。

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労働者派遣法にも職安法にも違反

いすゞ “名ばかり期間社員”

 労働者派遣法の大原則は(1)派遣は臨時的、一時的なものに限り、正社員を派遣に置き換える常用代替は禁止(2)派遣期間は最高三年、それを超えたら直接雇用の申し出義務が生じる―というものです。

 志位氏は、「派遣切り」の実態について、その多くが、期間制限を超えて、四、五、六年と働かされ、直接雇用の申し出もないまま、「派遣切り」にあっているのが実態だとして、いすゞ、マツダの例を取り上げました。

 千四百人の「非正規切り」を行ったいすゞから一月で「派遣切り」されたTさん。二〇〇三年四月から五年十カ月も働いてきました。(パネル(1))

 初めの二年半は形だけ請負で、いすゞ社員に指示されて作業する偽装請負。その後、偽装請負が社会問題となったため派遣に切り替えられ、派遣期間上限に達した〇六年十月からは直接雇用の期間社員にされました。

 しかし、期間社員だったのはわずか三カ月。仕事場も業務も派遣の時と同じで、寮や送迎バスも派遣会社のもの。最初から派遣に戻すことを前提とした“名ばかり期間社員”だったのです。舛添厚労相は、「偽装請負の期間も派遣可能期間に通算する」と答えました。

 志位氏は、「まじめに働けば正社員になれる、北海道の家族を呼べると思って頑張ってきた。ものづくりが好きだった。いすゞはもっと働く人を大切にする企業になってほしい」というTさんの訴えを紹介し、麻生首相に迫りました。

 志位 五年十カ月も働いたTさんは、とっくに正社員になっているべき労働者だ。なのに直接雇用の申し出もないばかりか、「派遣切り」で職も住居も奪われた。あまりに理不尽ではないか。

 首相 まったく同じ(意見)だ。三年以上なので明らかに違反している。期間社員の期間を入れてまでやるほど有能な社員だったということを意味している。

 理不尽な大企業のやり方を認めた首相に対し、志位氏は「違反を是正させるよう求める」とのべました。

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残業、月150時間超 あまりに異常だ

パナソニック 過労死基準の倍にも

 続いて、志位氏が追及したのが、パナソニック・エレクトロニックデバイス若狭工場(福井県)で、三年十カ月働きながら、昨年十二月、「派遣切り」にあったMさんの例です。

 Mさんは原材料の補充や交換、トラブル処理など立ちっぱなしで常に緊張を強いられる仕事をしていました。日勤(午前八時半―午後八時半)、夜勤(午後八時半―午前八時半)の二交代制の十二時間労働。休日出勤も常態化していました。Mさんのある月の残業時間は、百五十四時間四十五分でした。

 「過労死基準である残業月八十時間の約二倍だ。あまりに異常ではないか」との志位氏の指摘に、首相は「異常だ」と認めました。

 しかし、Mさんの訴えに福井労働局はまともに対応しませんでした。Mさんが「三年を超えているのに、直接雇用の申し出もなく、解雇されるのは違法ではないか」と訴えたのに対し、労働局は「〇六年十一月以前は請負契約なので、違法ではない」と回答。Mさんが「請負というが、働かせ方は派遣と同じだった。偽装請負ではないか」と調査を求めても、労働局は「二年前のことなので会社側に資料請求できない」と言い放ちました。

 Mさんがやむなく偽装請負の証拠を自分で集めて再度訴えると、労働局はやっと調査と指導を約束しました。

 志位 労働局は調査すらしない。こんな対応で労働者の権利が守れるか。

 厚労相 個々の企業についてのお答えはさしひかえるが、法違反があれば、厳正に対処する。

 志位 そんな怠慢なことでどうして労働者の権利が守れるのか。

 労働局の指導を受けたパナソニックは一月中旬、派遣労働者に対し、「直接雇用」にするといいながら、時給八百十円で期限付きのアルバイトなら雇うと言ってきたのです。

 志位 到底受け入れられないような低賃金・劣悪な条件を示して、直接雇用の申し出だと開き直る。こんなことで直接雇用申し出義務を果たしたと認められるのか。

 厚労相 派遣法改正案において、違反した派遣先に対して、労働契約を申し込むこと、労働条件を低下させることがないよう勧告する措置が盛り込まれている。

 志位 勧告にすぎない。義務付けをしなければ、派遣先大企業はいうことを聞かない。

 志位氏は、パナソニックが全国で「派遣切り」をしながらその実態を明らかにしていないと述べ、「“明るいナショナル”といってきた企業が闇の中で『派遣切り』をやっている。三・六兆円もの内部留保をため込みながら、雇用への社会的責任を果たさない。あまりにも横暴ではないか」と追及。首相は「人を大事にするか、しないかは企業にとって大きな価値だ」と答えざるを得ませんでした。

 志位氏は「現在行われている製造業派遣は、偽装請負の期間なども含めれば、派遣可能期間をはるかに超えて使い続けているケースが多い」と述べ、「踏み込んだ調査をし、違法があれば厳しく是正指導すべきだ」と追及しました。

 舛添厚労相は「今後とも実態の解明に全力を挙げていく」と答えました。

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(写真)パナソニック・エレクトロニックデバイスで「派遣切り」にあったMさんの給与明細の一部


マツダ クーリング期間悪用

 続いて志位氏が取り上げたのは、派遣社員千三百人が解雇されたマツダのケース。

 派遣労働者が、いずれも三カ月と一日だけ「サポート社員」という期間社員に切り替えられ、三年以上働かされていました。(パネル(2))

 同一場所、同一業務でも三カ月を超えて派遣を受け入れない期間(クーリング期間)があれば継続した派遣と見なさないという厚生労働省の指針をマツダは悪用し、期間制限を逃れて派遣のまま使い続けたのです。

 このクーリング期間について舛添厚労相は、「再び派遣として就業させることを予定している場合は職安法違反になる」と述べ、「クーリング期間も派遣期間に通算されるので、最初の派遣開始時から最大三年以上経過したあとは派遣を行うことができない」と、答えました。

 「サポート社員への置き換えは、三カ月と一日のあとは派遣に戻すことを前提に進めた。派遣法逃れだった」という派遣会社の証言を示して志位氏は迫りました。

 「マツダは派遣法違反にとどまらず、職安法違反までやっていた。違法な方法で期間制限を逃れて派遣のまま働かせたあげく、『派遣切り』。悪質とは思わないか」

 「個別の案件について感想をのべない」とする首相に対し、志位氏は、そんな姿勢では派遣先企業が増長するだけだと指摘しました。

 「違法行為によって義務を逃れてきた派遣先企業に直接雇用義務を果たせと厳しく指導するのが当然ではないか。派遣先の罪は問わず、被害者の労働者は見殺しにするのか」と志位氏。舛添厚労相は、「的確な指導を厳正に行っている」と答えました。

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