2009年2月4日(水)「しんぶん赤旗」
オバマ政権の中東外交
アラブ、期待と懸念
特使が訪問
イスラエル パレスチナ
米国のオバマ大統領はイスラム諸国との対話推進を打ち出し、就任早々、ジョージ・ミッチェル中東特使を任命しました。同特使は一月二十八―二十九日と、イスラエル・パレスチナを訪問。アラブ諸国はブッシュ前政権の中東政策に失望が大きかっただけに、オバマ新政権への期待とともに、今後への懸念も示しています。(カイロ=松本眞志)
オバマ大統領は最初のメディアとの単独会見に、アラブ首長国連邦(UAE)衛星テレビ・アルアラビアを選び、イスラム諸国との相互尊重に基づく関係改善を強調。アラブ側は一様に歓迎の意を示しました。
中東和平案に「建設的要素」
オバマ氏はただ、ミッチェル氏の中東歴訪について、「関係者のことをすべて知ってるわけではない。ミッチェル氏には『まず聞くことから始めよう』と言った。彼からの報告を受けた後、特別の対応策を示すことになる」と述べました。
オバマ氏は、先の単独会見で、アラブ側が示す中東包括和平案(アラブ和平案)は建設的要素があると言及しています。ミッチェル特使はまずエジプト訪問で、ガザ停戦での同国の調停活動を評価。次にアッバス自治政府議長との会談では、米国が中東和平に積極的に関与していくと伝えました。ガザ問題についてはイスラエルが求めるイスラム武装抵抗組織ハマスの武器密輸阻止と同時に、「住民の生活物資の合法的な移送を認めることが必要だ」と語りました。米国一国で仕切ろうとしてきたブッシュ政権とは異なる印象を与えました。
一方、「ブッシュ外交との本質的な違いがあるのか」との声もあります。オバマ氏はアラブ和平案を評価しているものの、核心部分である「パレスチナ占領地からのイスラエルの全面撤退」に言及したことはありません。ミッチェル氏もロードマップの基礎となった〇一年の同氏の報告で「ユダヤ人入植地活動の凍結」を提起したものの、入植地を違法として撤去すべきとの姿勢には立ちませんでした。
ハマス除外に「不公正」の声
今回のパレスチナ訪問でも、ミッチェル氏の日程には、焦点となっているガザ地区訪問は含まれず、同地区を実効支配しているハマスとの接触もありませんでした。エジプト紙ミドル・イースト・タイムズ(二十九日付)は「オバマ政権は『アラブとイスラエルの言い分を聞く』といってミッチェル氏の報告を待っているが、ここではイスラエル・パレスチナ紛争の重要な当事者であるハマスがテロ組織として退けられている」と指摘し、ミッチェル特使の対応は公正さを欠いていると主張しました。

