2009年2月4日(水)「しんぶん赤旗」

幹部人事を内閣一元化

「公務員改革」へ工程表


 政府は三日、国会内で国家公務員制度改革推進本部(本部長・麻生太郎首相)を開き、今後四年間の「改革」の道筋を示した「工程表」を決定しました。幹部職員の人事を一元管理する「内閣人事・行政管理局」を二○一○年四月に設置し、現在、人事院が有している各府省のポストごとの人数を定める「級別定数」設定機能などを移管すると明記。政府は工程表に基づき、同局設置法案の今国会への提出を目指します。

 本部会合には、機能移管に強く抵抗してきた人事院の谷公士総裁も出席し、「(公務員が制限されている)労働基本権の代償措置が損なわれることを強く懸念する」と述べ、改めて移管に反対しました。

 工程表は、人事院の級別定数の設定・改定や、研修・試験に関する機能などを内閣人事局に移すと規定。一方で、「人事行政の公正確保の観点から、人事院による意見の申し出など必要な措置を講ずる」との一文を加え、人事院の意向にも一定の配慮を示しました。

 また、各省庁からのあっせんを通じた国家公務員の「天下り」については、「(公務員が)定年まで勤務できる環境の整備、定年延長等の検討」と表記。一一年からは、各省庁のあっせんによる「『天下り』の根絶に対応した新たな人事制度を実現する」として、「官民人材交流センター」による「天下り」の一元化を行う内容となっています。


解説

政権に都合いい人事に

 政府が三日に決定した「国家公務員制度改革」の「工程表」は、国家公務員の「天下り」を原則自由化した二〇〇七年の改悪国家公務員法や、官民人事交流の規制緩和・幹部職員の内閣一元管理の強化を決めた〇八年の国家公務員基本法を具体化するためのものです。

 工程表では、国民の批判の的となっている官僚の天下りについて、各省庁による幹部職員のあっせん廃止を確認し、「定年まで勤務できる環境の整備、定年延長等の検討」を行う方針を示しました。

 しかし、これは各省庁によるあっせんにかわって、「官民人材交流センター」に幹部職員の再就職先を一元的にあっせんさせるにすぎず、天下りに対する実効ある歯止めにはなりません。

 さらに、工程表では、政府が幹部職員の給与・人事を一元管理することで政権党の意向に沿った官僚組織をつくりだす方向を鮮明にしています。

 現在、国家公務員の給与・人事などの管理は、政府からの独立性が保障されている人事院が行っています。

 これは国家公務員が団体行動権(ストライキ)などの労働基本権が制約されていることに対する「代償措置」と位置づけられてきました。

 ところが、工程表では、労働基本権の回復を明確にしないまま、人事院の給与・人事などの管理機能を公務員の「使用者」である政府(内閣人事・行政管理局)に一元的に移管する方針を掲げています。これでは、政治任用を拡大する「国家戦略スタッフ」の導入などと合わせて、政府の一方的な減給や任命、懲戒などの人事権を通して、政権に都合のいい人材の登用・育成がまかり通ることになります。

 今、求められている改革は、汚職・腐敗とは無縁な国民本位の行政を実現することです。そのためには、歴代自民党政権のもとで、構造的に作られた政官財の癒着の根本にメスを入れることが不可欠です。

 また、国家公務員が国民「全体の奉仕者」として民主的・能率的に働ける環境を整備するために、労働基本権の著しい制限を見直し、政治的市民的自由を回復することが強く求められます。(佐藤高志)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp