2009年2月2日(月)「しんぶん赤旗」

主張

大量解雇

いまこそ蓄えを使うとき


 厚生労働省の調査によると、十二万五千人の非正規社員が三月末までに失職させられようとしています。派遣・請負の業界団体の調査では、三月末までに失職させられる派遣・請負労働者は四十万人に達する見込みです。

 昨年十二月の失業率は一気に0・5ポイントも跳ね上がりました。特殊事情による上昇を除くと「過去に例がない悪化」(総務省)です。

 財界トップ企業が先頭を切った非正規雇用切り捨ての影響が、急速に広がっています。

経営者の「堕落」

 政府の研究所も雇用削減の異常さを認めています。「過去と比べると恐らく四倍ぐらい速い。一年ぐらいかかる話が四半期(三カ月)でどっと出てくる」(岩田一政・内閣府経済社会総合研究所長)

 何より、切り捨てられた労働者のほとんどは寒空の中にほうり出され、生活保護によってしか救済されない状態です。

 衆院の代表質問で、この問題を追及した日本共産党の志位和夫委員長に、麻生太郎首相は「住居のない方も含め生活保護によって適切に支援する」と答弁しました。住居をなくした人には支給を認めない理不尽な行政を改め、生活保護を柔軟かつ迅速に適用する必要があります。

 共同通信の調査では、四万人以上の大量解雇を進めている大手製造業十六社の内部留保(ため込み金)は、この六年半で倍加して三十三兆六千億円に上っています。うち五社が株主配当を増やし、五社は配当を維持、残る六社は未定で、この時点で配当を減らす企業は一社もないというのです。

 四万人を超える人減らし計画は、巨額のため込み金のごく一部、わずか0・4%を取り崩すだけで撤回できます。

 かつては、大企業の経営者にももう少し節度がありました。経営不振に陥っても、まず配当を減らし、連続二年赤字になって初めて雇用に手を付けるのが暗黙の「ルール」になっていたといいます。株主への配当を増やしながら雇用を削減する現在の大企業のやり方は、経営者として「堕落」していると言うほかありません。

 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は、配当を減らして「株主を軽視することになれば、マーケットから見た企業価値が低下」するとのべています。配当は役員賞与に連動します。配当を減らして役員賞与を増やすわけにはいかないからです。社員よりも株価が大事、自らの賞与が大事だというのが本音だとすれば、そんな経営者は企業にとっても「百害あって一利なし」です。

政府は厳しく指導を

 安易な人減らしは、個々の企業に当面の利益を生むかもしれませんが、みんながやったら不況が深刻になります。海外で需要が冷え込んでいるときに内需を破壊すれば、企業も経営不振を打開する見通しが立たなくなります。

 財界の中枢にいた経営者からも「人間は道具でもないし部品でもない」「雇用の問題は国の責任だと思っている大企業の経営者がいたら、ビンタですよ」(前田勝之助・東レ名誉会長、『BOSS』三月号)と厳しい批判が出ています。

 大企業の「派遣切り」には一片の道理もありません。身勝手な雇用削減をやめるよう、政府は経営者を厳しく指導すべきです。



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