2009年1月25日(日)「しんぶん赤旗」
麻生内閣4カ月
暴走始めた「1割政権」
麻生内閣が発足して、二十四日で四カ月。内閣支持率は一割台へ急落しながら、政治的には暴走を始めています。麻生太郎首相は、消費税引き上げのレールを敷き、アフリカ・ソマリア沖への自衛隊派兵、国会議員定数削減などを次々打ち出しています。定額給付金と消費税増税の方針決定で与党内の「造反」は最小限に抑え込んだ形ですが、国民との矛盾は大きくなるばかりです。
消費税増税
「党内論議」で地ならしの党略
「全党一丸となっていける(内容だ)」。麻生内閣が二十三日に閣議決定・国会提出した二〇〇九年度税制「改正」関連法案について“消費税増税反対の急先鋒(せんぽう)”といわれた自民党の中川秀直元幹事長はこう評価しました。
同法案は付則で、二〇一一年度までに消費税増税の法律を成立させ、実施時期は別の法律で定めるシナリオを明記しました。
消費税の増税は、国民の暮らしを直撃します。消費税増税というなら、少なくとも総選挙で国民の審判を仰ぐべきですが、その審判を受けないうちに勝手に消費税増税のレールを敷いてしまおうというのです。
消費税問題で「政局にする」と宣言していた中川氏らの勢力が政府に注文をつけたのは、消費税増税方針そのものでなく、その手順・段取りにすぎません。
与謝野馨経済財政担当相は付則の内容について、「税制抜本改革の開始時期は一一年度を含む考え方なので、政府の立場からあいまいや先送りという印象はない」(二十三日の記者会見)と説明。まずは消費税増税の法律、次に実施時期の法律と「二段階」であっても、麻生首相が掲げる「一一年度からの消費税増税」も可能という読みです。
浮き彫りになったのは、「党内論議」で消費税増税の地ならしを進めた党略だけです。
ソマリア沖派兵
武力行使の危険 前のめりに推進
「しっかり対応してほしい」。麻生首相は二十三日、首相官邸を訪れた浜田靖一防衛相に、ソマリア沖派兵の準備をすすめるよう指示しました。
ソマリア沖派兵は昨年の臨時国会で民主党議員が提起し、首相が検討を約束したもの。新法制定による派兵を主張していた防衛省を押し切る形で、新法制定前にも自衛隊法の海上警備行動による派兵を前のめりに進めたのは麻生首相でした。米新政権に向けての“実績”づくりとの思惑も指摘されています。
海上警備行動はそもそも日本近海での領海侵犯や不審船対応などを想定したもの。重装備の海賊と応戦したら、本格的な武力行使になる危険も大です。
ソマリアの場合は、内戦と無政府状態のため海賊行為が多発しているのが現状。対岸国のイエメンなどは、海賊取り締まりのため、日本に資金援助などを申し入れています。海賊対策というなら、ソマリアへの民生支援とともに、国際機関や周辺国への技術・資金支援などを実施すべきです。
こうした真剣な対策の検討もなしに、自衛隊派兵に固執する麻生内閣。海上警備行動の口実さえつけば、いつでもどこへでも派兵できる危険な道を開こうとしているのです。
国会議員定数
“身削る”ふりで参政権を削る
議会制民主主義の問題も見過ごせません。
麻生首相が「国会の運営や制度を見直さなければならない」(十八日、自民党大会)と発言したことを受け、自民党は国会議員の定数削減の検討を始めました。党内からは、衆院の比例代表制を廃止して単純小選挙区制にすることや、参院の地方選挙区をなくす案も出ています。比例代表を廃止すれば、民意の切り捨てがいっそう進み、少数政党もしめ出し、大政党優位になります。
日本の国会議員は衆参合わせて七百二十二人。人口十万人あたりの議員数は〇・五七人です。
一方、ヨーロッパ各国の人口十万人あたりの議員数は、イギリスが二・三人、イタリアが一・六人、フランスが一・五人、ドイツが〇・八人です。日本の議員数は決して多いわけではないのです。
議員定数削減は「増税するにはまず身を削る姿勢を見せるべきだ」(伊吹文明前財務相)など消費税増税の口実として打ち出されたもの。自らの“身を削る”ふりをしながら、民意を削り、国民の参政権を削る大暴走を始めているのです。
「身を削る」というなら、国民の税金を山分けしている政党助成金をきっぱり廃止すべきです。
暴走助ける民主党
3課題、方向同じ
消費税増税、ソマリア沖派兵、国会議員定数削減などは、いずれも民主党と気脈を通じる問題です。
民主党は昨年末発表した「税制抜本改革アクションプログラム」で、消費税の「社会保障目的税化」などを行った上で、消費税増税を検討するとしています。国会審議では「与党の皆さんと差はない」(民主党の大塚耕平参院議員)と述べています。
ソマリア沖派兵も、民主党が先べんをつけたもの。同党の長島昭久議員は衆院予算委員会で「新しい法律も含めて議論しなければならない」「現行法の範囲内でもやれる行為ではないか」(〇八年十月十七日)と麻生首相に決意を促しました。
国会議員削減も、同党は〇三年衆院選マニフェスト(政権公約)から衆院比例定数の八十削減を掲げ、法案も提出。さらに、「(衆院議員定数の)二割削減も」と自民党と削減で競い合う姿勢を見せています。
これでは、麻生政権の暴走を助けるだけです。
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