2009年1月21日(水)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト

大銀行 この横暴

三井住友 勝手な基準で選別
三菱UFJ 返済額交渉中に口座凍結
みずほ 借り換え拒否

参院予算委 大門議員告発


 庶民には消費税増税でいっそうの負担増、中小企業への大銀行の「貸し渋り・貸しはがし」には手を打たず―日本共産党の大門実紀史議員は20日の参院予算委員会の基本的質疑で、麻生政権の国民への冷たい姿勢をただしました。中小企業を倒産に追いやる大銀行の「貸しはがし」の実態を具体例で示した大門氏の追及に、麻生首相も「問題がある」と認めざるを得ませんでした。


写真

(写真)大銀行の貸し渋り・貸しはがし問題で麻生内閣を追及する大門実紀史議員=20日、参院予算委

体力あるのに中小融資減

 深刻な経済情勢のなかで、中小企業は、年度末に向け大変厳しい状況が続いています。

 大門氏は、赤字でも債務超過でもない「運転資金の欠乏」による倒産の件数が二〇〇七年の七百四十三件から〇八年の九百九十四件へと前年比で34%も増加し、九八年以降、最多になったことを明らかにしました。(グラフ参照)

1兆円減

 大門 この原因はどこにあると考えるか。

 二階俊博経産相 景気が急速に悪化するなかで、中小企業の売り上げが悪化、金融機関の貸し出しも厳しい態度だ。借り入れ難易度はいずれも悪化している。

 大門氏は、六大銀行の貸し出し動向の推移を示すパネルを掲げました。〇七年十一月からの一年間で大企業向けの融資は六兆円増える一方、中小企業向けは、一・一兆円も減らされました。

 大門氏は、大銀行は、貸すお金はあるのに中小企業には貸さない一方で、三菱東京UFJ銀行が、米国のモルガン・スタンレーに九千億円出資するなど、各行とも米国の銀行には巨額のお金を出している実態を批判しました。

首相擁護

 大門 自己資本も十分ある。「百年に一度の経済危機」というときに、かつては公的資金で助けてもらった銀行が大企業・米企業に貸し、日本の中小企業の融資をわざわざ減らす。こういう大銀行の姿勢はいかがなものか。

 麻生太郎首相 大銀行にしてみれば、リスクの少ないほうに貸すという姿勢だ。気持ちとして分からないではない。

 銀行擁護の姿勢をとる首相に対し、大門氏は、「大銀行は、苦しくて貸さないのではない」と厳しく批判しました。

グラフ


大門 この姿勢放置し景気よくなるか

金融相 「あってはならない」
首相 「大きな問題。認識同じ」

 中小企業に貸す力があるのに、無慈悲な「貸し渋り」「貸しはがし」にはしる大銀行の横暴さ―。大門氏は、自ら現場を回った独自調査にもとづき、具体的な銀行名をあげて告発しました。

調査約束

 三井住友銀行に「貸し渋り」をされた、メディア関係の中小企業社長Aさん(兵庫県)のケース

 年末の運転資金で二千万円が必要になったAさん。信用保証協会が八割を保証する「責任共有制度」で借りることになり、以前から取引があった三井住友銀行兵庫支店に借り入れを申し込みました。しかし、銀行側は「いくら保証協会がオーケーしても、うちは決算期が二期以上ない新しい企業には貸さない」という勝手な基準をもち出し、融資を拒否しました。

 大門 こんな勝手な基準を制度融資にもうけるのは許されるのか。

 経産相 金融機関は、中小企業向け金融の円滑化のために、適切な役割を果たすべきだ。われわれとしても実情を調べたい。

どよめき

 三菱東京UFJに「貸しはがし」をされた、コンピューター関係の会社を経営するBさん(東京都内)のケース

 今後の売り上げが減ると予測し、取引銀行の三菱東京UFJ銀行日本橋支店に返済額の減額を相談しました。しかし、銀行側は「条件変更」に応じず、交渉中にもかかわらずBさんの銀行口座を凍結しました。

 大門 中小企業が口座を凍結されたら、資金繰りに困って、倒産してしまう。こんなことが法的に許されるのか。

 中川昭一財務・金融相 突然、凍結することはあってはならない。

 大門氏が、みずほ銀行が、中小企業からの毎月の返済額を減らしてほしいという「条件変更」や、今まで借りていた融資の借り換えの要求を拒否し、債権回収会社に売却したケースも告発すると、委員会室にどよめきが起きました。

 「大銀行にこんな姿勢を続けさせて、日本の景気はよくなるのか」と迫る大門氏に対し、当初「銀行の気持ちもわからんでもない」と述べていた麻生首相も「今のような形で、途中で一方的に止められると、資金繰りがつかなくなり、まったく企業は回転しなくなる。今のような状況は非常に大きな問題。認識はまったく同じだ」と答えました。与党幹部から「共産党と認識が一致した」との声が上がりました。

 大門氏は「銀行の姿勢を国会の場でただす時期に来ている」と述べ、杉山清次・全国銀行協会会長(みずほ銀行頭取)の参考人招致を求めました。


 責任共有制度 中小企業が金融機関から融資を受ける際に、これまでは信用保証協会が融資額の全額を保証していたものを、原則八割しか保証せず、残り二割は金融機関が自己責任を負うことになった制度。二〇〇七年十月から導入されました。同制度の導入によってリスクを回避したい金融機関は保証の承諾を大幅に減らしました。このため、中小企業の資金繰りがいっそう厳しくなっています。


給付金は2兆円 国民負担は50兆円

負担増路線の転換こそ

 大門実紀史議員は家計を冷え込ませる自公の経済政策を追及しました。

 定額給付金は生活支援であり、消費を増やす効果があると繰り返す麻生太郎首相。大門氏は「家計消費を冷え込ませてきた最大の理由は何だと考えているのか」とただしました。

 首相は、「デフレーション下の不況、可処分所得が伸びなかった」と答弁。大門氏は、「つまり、所得、収入が伸びないのに、負担だけが増えている」と述べ、小泉政権時の二〇〇二年以来の七年間で国民の負担増をパネルで示しました。(図参照)

 大門 介護保険や年金の保険料の引き上げなど〇二年度から〇八年度までの七年間の国民負担増を累計すれば五十兆円近くになる。一回限り、二兆円をバラまいても、消費が上向かない。求められているのは負担増を減らす方向、一番の生活支援、景気対策だ。負担増路線の抜本的な転換こそ必要ではないか。

 麻生首相 給付金は景気押し上げ効果があると認識している。

 大門氏は、「定額給付金」は、与党支持者も含めて国民の反対が多数だと指摘。自治体関係者も含めて国民の意見を聞く公聴会などの開催を要求しました。

消費税増税方針

消費さらに冷え込ます

 さらに大門氏は、自民・公明政権が一一年度から消費税増税をめざしていることについて「国民にいっそうの不安を与え、ますます消費を冷え込ませることになることは明白」だと批判しました。

 消費税増税には「世論調査」で国民の約六割(「日経」〇八年十二月二十九日)が反対しています。

 にもかかわらず、政府は、来年度の税制関連法案の付則に消費税増税をあたかも決まったことのように書き込もうとしています。

 大門 定額給付金とあわせて、国民世論を無視することになる。

 首相 今国会に道筋を盛り込んだ法律を提出したい。先行きはきちんと示しておかないと、無責任になる。

 大門 将来の増税にレールを敷くということは、選挙で公約に掲げ、信を問うてからやるべきでないか。

 大門氏は、消費税増税にあくまで固執する首相の姿勢を厳しく批判しました。

図

 (※)すでに決まっている負担増は、2008年度の平年度ベースでは13兆円弱であるが、厚生年金保険料の引き上げ(年間6200億円)が10月分給与からで半年分しか効いてこないことなどにより、年度内の負担増額は若干少なくなっている。

 資料=各年度の予算関係資料、各省庁の統計データなどにより作成。一部、見込み額を含む。


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