2009年1月12日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

自転車 分離 歩行者

歩道4メートル広げる

東京・中野 住民運動粘り強く


 いま、東京都豊島区から目黒区までの11キロ間の環状6号線(通称山手通り)で、道路の拡幅と地下高速道路の建設が進められています(高速道路は2008年から一部供用開始)。通過点となるわが中野区内の山手通りでは歩道と車線の間に2メートルの自転車通行帯が設置され、工事は続いています。

来住和行(日本共産党中野区議会議員)


地図

 自転車と歩道の分離は、自転車が大変なスピードで走ったり、事故も心配されていただけに「安心して歩けるようになった」と区民に期待されています。現在はまだ先行整備区間だけですが、三年後には計十一キロの全区間まで延伸されることになっています。

安心優先道路へ

 自動車優先の道路から人が安心して歩き、買い物も楽しめる人間優先の道路への一歩と言ってもいいかもしれません。

 東京都は一九九〇年に事業計画を決定し、土地買収に着手しました。当初の計画では、道路幅を四十メートルに拡幅し、上下六車線、歩道幅五メートル、中央分離帯は地下高速道の換気塔建設のため九メートルとするものでした。

 これに対し、通過点となる中野区内では、沿道住民を中心に党区議、支部も参加した「山手通りの環境を良くする住民の会」「山手通り問題本町・弥生町の会」が結成され、地下高速道の排ガス除去対策や山手通りの車線数と中央分離帯を削り、歩道を拡幅することなどを求めました。また、都決定の翌年には「車線を増やさず、歩道を広くとり、樹木を密植すること、換気塔には脱硝装置を取り付けること」を旨にした区議会の陳情が二つの地域からそれぞれ提出されました。

 私たちは党国会、都議団とも共同して東京都や首都高速道路公団(当時)にこれらの要求と提案を繰り返しおこなってきました。地元党区議を中心に議会で取り上げてきました。この結果、中野区も八回に及ぶ要望書を国や東京都等に提出してきました。

住民参加の「会」

 この取り組みを通じて、走行車線数は六車線から四車線に変更となり、歩道幅は五メートルから九メートルと大幅に拡大され、自転車道と歩道の分離が可能となりました。

 九メートルとなった歩道幅については、道路構造令の一部が二〇〇一年に「自動車から独立した歩行者・自転車の通行区間の確保」と改正されたこととあいまって、山手通りでは歩道と車道の自転車通行帯が設置されることになりました。

 さらに中野区においては「山手通り意見交換会」が住民参加で結成され、七回の会合で歩道の色、高木、低木等の植栽の種類、歩、車道の照明、植栽帯の幅の決定に加わる仕組みができたのも画期的なことでした。

 私たちは、沿道の住民のみなさんと、それぞれの区で運動体をつくり、「山手通り関係五区連絡会」として、毎期例会を開き、交流するとともに、毎年六月と十二月の二回、NO2(二酸化チッソ)測定を二百カ所で実施してきたことも力の一つとなっています。

 工事完成までにはまだ三年あります。環境と区民の健康と安全を守る取り組みはまだまだ続きます。


始まった走行空間整備 取り組み全国に

 自転車がいま見直されています。昨年のガソリン価格の異常な値上がりのなかで、自転車利用者、愛好者が一気に増えたといわれます。環境にやさしい乗り物として、また、手軽な健康維持の手段としても改めて注目を集めています。いいことずくめに見える自転車。その一方で、普及に伴って新たな課題も浮かびあがっています。

事故が5倍

 その一つが、自転車対歩行者の事故の急増です。

 今月二日に発表された昨年の交通事故状況によると、交通事故死者数は五千百五十五人と、前年をさらに下回りました。過去最悪だった一九七〇年の一万六千七百六十五人に比べて七割近い減少です。

 ところが全事故も事故死者数も減っているのに、自転車対歩行者の事故は、最近十年間で約五倍と急増しています。

 「やはり高齢者の方の事故が多いのではないか。自転車が歩道を猛スピードで走り、歩行者に接触して大きな事故につながったり。マナーの問題もあります。歩道と自転車通行を切り離していかない限り、なかなか減らせないと考えています」(国土交通省道路局地方道・環境課 道路交通安全対策室課長補佐・坂憲浩さん)

98地域指定

 道路交通法では自転車は車両の一種であり、車道通行が原則です。しかし一九七〇年に法の一部が改正され、車道が危険な場合は歩道通行も可能となりました。その後「自転車および歩行者専用」マークがついた歩道に限って自転車の通行が認められました。しかし自転車が走れる空間は、日本の道路百二十万キロメートル(高速道路除く)にたいしてわずか二千六百六十キロメートル(二〇〇七年現在)。総延長のわずか0・2%にすぎません。自転車が見直されているとはいえ、まだまだ車優先社会であることが、こうした数字からもうかがえます。

 こうした現状をなんとかしなければと、地方自治体、国も足を踏み出しています。昨年から始まった「自転車通行環境整備モデル地区」の指定もその一つです。

 歩行者や自動車から分離された「自転車走行空間」を広げるというもので、全国で九十八地域が指定されました。ここで二年間に「自転車道又は自転車レーン(自転車専用通行帯)」を設置していくというものです。

 これらが順調にすすめば来年三月末までに、新たに約百十キロの自転車道、レーンができることになります。

 「ヨーロッパなど自転車先進国の経験にも学んで、取り組みをネットとして全国に広げていきたい」(国土交通省・坂さん)

 自転車・歩行者の事故を減らし、快適な自転車生活空間を広げていくためにも、こうした施策の拡大が急がれています。

(金子義夫)


自転車通行モデル地区

 ▽東京・江東区亀戸地区

 駅近くを走る京葉道路の車道左端に幅2メートルの自転道を設置。歩行者と自転車の走行を分離した。2008年3月から。

 ▽岡山市・岡山駅東口地区

 一方通行の2車線の道路で、第1車線を午前7―9時の間、自転車専用通行帯として交通規制。2008年1月から


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