2009年1月8日(木)「しんぶん赤旗」

軍事費増?減?/核兵器は

米で見直しめぐり議論


 【ワシントン=小林俊哉】オバマ次期米政権は、大規模な財政出動を通じた経済刺激策を提案していますが、それに便乗して、経済学者から軍事費拡大の提案が出ています。

 レーガン共和党政権の経済諮問委員会委員長(一九八二―八四年)だったハーバード大学のマーチン・フェルドスタイン教授がその人。「軍事支出は大きな経済刺激策」と題した論文を米紙ウォールストリート・ジャーナル(昨年十二月二十四日付)に寄稿しました。

米軍体系全体見直す考えも

 同氏は、グリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任候補にも名前が挙がった著名経済学者ですが、「軍が購入するほとんどの装備は米国製であり、国内の需要と雇用をつくりだす」などと論じています。

 しかし、折からの経済危機で、軍事費も減額を覚悟せざるをえないとの意見が大勢です。米政府がイラク、アフガニスタン戦争に費やした経費は累計九千四十億ドル(約八十二兆円)に上るとの試算を、米シンクタンク戦略予算評価センター(CSBA)が発表したばかりです。

 フェルドスタイン氏の意見の背景には、「テロとのたたかい」などに備え、米軍の兵器、人員体系全体の見直しが必要だとの認識があります。同氏自身「(陸海空軍の)すべてが重大なインフラ整備の必要性を抱えている」と述べています。

 オバマ次期政権での留任が決まっているゲーツ国防長官も、米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』(〇九年一―二月号)への寄稿で、国家間の紛争に備えた従来の「通常戦力」と、テロやゲリラとのたたかいに向けた「非通常戦力」のバランスを見直す必要があると主張しています。

 こうした軍事費見直し議論は、オバマ次期政権内の意見の食い違いを浮き彫りにする可能性があります。戦力体系の見直しに踏み切った場合、核兵器問題が避けて通れない課題となるからです。

中核問題での不一致を指摘

 米シンクタンク・ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏は、ワシントン・ポスト紙昨年十二月二十五日付で次のように分析しています。

 オバマ氏が、新たな核兵器をつくらず、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を議会に求めると主張する一方、ゲーツ氏は、核実験ができない状況では実験なしに核抑止力を維持できる核兵器の最新化が必要だとしており、「中核問題での不一致」がある―。

 米議会予算局で核兵器問題を分析してきた同氏は、オバマ氏は核兵器の新型化をすべきでないと主張しています。

 オバマ氏の経済刺激策は、生活関連公共事業や気候変動対策を視野に入れた新エネルギー開発への投資などが中心です。新政権が軍事費問題でどのような対応をとるのか、注目されます。



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