2009年1月8日(木)「しんぶん赤旗」

主張

財界「雇用」発言

まず無法な解雇をやめてこそ


 日本経団連の御手洗冨士夫会長が新年のメッセージで「雇用の安定に手段を尽くす」とのべ、経済同友会の桜井正光代表幹事が年頭見解で「若者が希望の持てる社会の構築」を提唱するなど、新年から財界団体首脳の雇用問題での発言が続いています。六日開かれた財界三団体の共同記者会見でも雇用問題での発言が相次ぎました。

 大企業を先頭にした雇用破壊が深刻な社会問題になっていることの反映ではありますが、問題は、「派遣切り」など違法・無法な解雇に反省がないことです。雇用の安定をいうなら、まず財界・大企業が無法な解雇をやめることです。

雇用破壊は企業の責任

 東京・日比谷公園に設けられた「年越し派遣村」に数百人もの人たちが殺到したように、雇用破壊は大きな社会問題です。急激な雇用悪化は、トヨタやキヤノン、ソニーなどの名だたる大企業が先を争って「派遣切り」「期間工切り」などの無法な解雇を強行しているためで、自然災害でも、働く人の責任でもありません。労働者を「使い捨て」のように解雇する大企業と、不安定な雇用を野放しにしたうえ大企業の無法な解雇をやめさせない自公政府の責任です。

 六日の財界三団体のパーティーと記者会見の会場では、「派遣村」の代表らが「派遣切り」や寮からの追い出しをやめるよう御手洗日本経団連会長あての公開質問状を手渡そうとしました。日本経団連側は受け取りさえ拒否しました。

 世界でも有数で日本を代表する大企業が、巨額の内部留保をため込み、役員への高額報酬や株主への配当は続けながら、多少もうけが減りそうだというだけで労働者を切り捨てる―無法な解雇への批判はいまや全国に渦巻いています。無法な解雇を続けながら、いくら「雇用の安定」とか「若者が希望の持てる社会」といっても、それは国民の信用に値しません。

 御手洗日本経団連会長は「新規雇用の創出」や「ワークシェアリング(仕事の分かち合い)も選択肢の一つ」といいますが、まずはこれまでため込んだもうけを吐き出してでも無法な解雇をやめ、雇用を確保することです。「賃金よりも雇用」だといい、「ワークシェアリング」だからと、これまでより低い賃金で働くよう強制するのは、大企業の腹は痛めないで労働者には新たな犠牲を求めるだけです。

 トヨタやキヤノンなど大手製造業十六社の昨年九月末の内部留保は過去最高の三十四兆円近くに上っており、これらの大企業は大規模な人員削減を進めながら株主への配当では五社が増配、五社が前期と同じとしていることが、一般紙でも批判されました(昨年十二月二十四日付「東京」など)。内部留保のうち利益剰余金や資本剰余金だけでも、資本金十億円以上の大企業製造業はこの十年間に約三十二兆円も増やしています(本紙四日付)。もともと労働者を安く働かせてため込んだ内部留保のごく一部を吐き出せば、雇用確保の体力は十分あります。

内部留保を雇用の確保に

 かつては日本の財界首脳も、利益の従業員への還元を口にし、「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」とまでいったことがあります。

 財界・大企業が「雇用の安定」を本気で考えるなら、口先だけでなく、まず率先して内部留保を吐き出し、雇用を確保すべきです。



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