2008年12月29日(月)「しんぶん赤旗」

主張

軍備拡大予算

小さく見せる小細工やめよ


 二〇〇九年度政府予算案で、軍事費は〇八年度から五十五億円減の四兆七千七百四十億円です。

 財政がきびしいといいながら、今年度に比べわずか0・1%しか削らず同水準にしたのは、軍事費を削って福祉や暮らしに回せという国民の願いをふみにじるものです。国民の暮らしより日米軍事同盟を優先した結果です。わずかな頭金で装備品などを買い込む後年度負担などを使って、初年度は小さく見せかけながら次年度以降も巨額の予算を注ぎ込む、軍事費拡大の仕組みを続けています。

初年度はわずかでも

 後年度負担とは、艦船のように発注してから取得するまで複数年かかるものを購入する場合、最初から複数年度の契約にして、翌年度以降も支払いを続けるもの、というのが防衛省の説明です。

 最初の年は契約だけで見かけは少ない予算を計上しても、翌年以降、何年にもわたって予算を先取りすることになります。予算の「単年度主義」という原則を掘り崩すことにもなります。

 例えば、イージス艦を守る護衛艦二隻の調達額は千四百五十一億円ですが、来年度の支払いは二億円で残りは後年度の負担に回されます。それでも護衛艦調達の目的は達成されるのです。

 見過ごせないのは、後年度負担の仕組みを悪用して、軍備を拡大し、戦争態勢づくりの予算を長年にわたって確保する仕組みがつくられていることです。初年度は少ないとはいっても、来年度の新規の後年度負担額は一兆七千四百一億円にのぼります。これは軍事予算のあらゆる分野で後年度負担の仕組みが使われているためです。

 後年度負担の乱用ぶりは目に余ります。陸自のCH47大型輸送ヘリ四機の改修予算二百五十六億円も後年度負担です。予算のうえでは来年度の支出はゼロで、すべて後年度に先送りです。

 改修は、地上からの攻撃に耐えられるようにヘリの底に防弾板を取り付け、「多様な環境下での活動を可能にするため」です。米政府から圧力が強まっているアフガニスタン本土へのヘリ部隊の派遣に備えるためなのは明らかです。アフガン本土への派兵は憲法違反が明らかで、まだ正式に決めることもできないのに、頭金さえなしに改修だけは進めるというやり方が許されるはずはありません。

 軍事予算をめぐるこうした小細工は、後年度負担の仕組みだけではありません。米軍再編でも来年度の予算は総額八百三十八億円と飛躍的な伸びとなっていますが、これさえ三兆円ともいわれる日本の負担総額に比べればごく一部です。最初は少なく見せても、いったんそこへ踏み出せば、予算が膨らみ、国民の負担が増える仕組みがつくられているのです。

削減のメス入れてこそ

 後年度負担などの乱用は、事実上翌年度以降の予算を先取りするものだけに、巨額の軍事予算を何年も続けさせることにつながります。後年度負担で圧迫される軍事予算を、また新たな後年度負担で補う、出口のない悪循環です。

 いま国民は、社会保障費をはじめ国民生活予算の削減に加え、経済危機の追い打ちで苦しんでいます。この危機的事態を乗り切るために、最大のムダづかいである軍事費に思い切った大幅削減のメスを入れることが重要です。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp