2008年12月23日(火)「しんぶん赤旗」

規制改革会議

保育市場化を拡大

答申 「派遣全面解禁」消える


 政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎日本郵船会長)は二十二日、「規制改革推進のための第三次答申」を決定しました。労働分野では「派遣労働の全面解禁」などの従来の主張が消え、「労働者保護」の必要性を説くなどの変化が見られます。ただ、労働者派遣の抜本改正には背を向けているのをはじめ、保育分野などでは民間事業者の参入拡大を強く主張するなど、市場原理を各分野に徹底させようとする基本姿勢は変わりません。

 第三次答申は、急激な雇用悪化に触れて「環境変化を意識した労働者保護政策が必要」と指摘。「雇い止めや派遣契約の中途解約等に対して派遣先企業へ警告し、法令違反を見逃さない態勢整備が重要」と述べています。第二次答申にあった派遣期間の制限や派遣業種の限定の完全な撤廃、派遣労働者への雇用申し込み義務の見直しなどは盛り込まれませんでした。

 一方で、日雇い派遣の原則禁止にさえ「雇用機会の萎縮を生む」との“懸念”を表明するなど労働分野の規制緩和に固執しています。

 保育分野では、国と市町村が保育実施に責任を持つ現行の公的保育制度を「画一的・硬直的」と一蹴(いっしゅう)。利用者が保育所に入所を申し込む直接契約方式や、利用者の人数に応じて保育所に補助金が入る直接補助方式への転換など、保育の「市場化」の拡大を求めています。

 教育分野では、「学校選択制の普及促進」を提言。「教育バウチャー制度」(児童生徒数に基づく予算配分)の研究・検討も行うべきだとしています。

 政府は答申を受け、来年三月に「規制改革三カ年計画」を改定する予定です。


解説

雇用の願いに応えず公的保育解体を推進

 規制改革会議が二十二日決定した第三次答申には、労働分野での規制緩和から規制強化への“潮目の変化”が色濃く現れています。

 同会議は、昨年末には「労働者の権利を強めるほど、労働者の保護が図られるという安易な考え方は正しくない」(第二次答申)と断言してはばかりませんでした。ところが第三次答申では、非正規労働者やワーキングプアの増加などにもふれ、「労働者保護政策」の必要性をうたったのです。

 深刻な問題になっている雇い止めや中途解約についても「法令違反」との認識を示し、派遣先企業の責任にもふれざるを得なくなっています。

 労働分野での規制緩和の旗振りの急先鋒(せんぽう)だった同会議が、このように認めざるを得ないところには、現状の深刻さと国民のたたかいの反映があります。

 しかし、「真の労働者保護は規制の強化により達成されるものではなく」として、日雇い派遣の原則禁止をはじめ、不十分な政府の派遣法改正案にさえ「産業空洞化を招来する懸念」を表明し、背を向けています。これでは、貧困をなくし、安定した雇用を求める労働者の願いに応えることはできません。

 いま焦点となっている公的保育制度についても、答申は解体の“旗振り”をやめていません。

 答申は、国と市町村の保育実施責任を投げ捨てる直接契約制度の導入を、「利用者から選ばれる保育所となるための努力を促す」という名のもとに強力に主張。“競争させれば質が上がる”という破綻(はたん)した市場原理万能論を、無反省にふりまいています。

 「サービス内容と利用者が支払う負担が見合ったものとする必要がある」として、現行の所得に応じた保育料設定をサービス量に応じたものにすることを提言。株式会社の保育への参入を促すために運営費の使途制限を見直すことや、国の最低基準を満たさない施設の設置の促進も求めています。

 ここにあるのは「効率」の視点だけで、子どもの福祉が後退することへの懸念は、まったく顧みられていません。

 直接契約制度になり、保育料負担が上がれば、低所得世帯などが排除される恐れがあります。答申は「公による優先度の判断や、それに対応した応諾義務等により利用の確保を行う」としています。

 これらは、厚生労働省の社会保障審議会が現在、「公的契約」の名のもとに検討している仕組みと符合します。政府が狙う保育制度改悪の本質が、答申で図らずもあらわになったといえます。(坂井希)



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