2008年12月22日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

未来奪う“新卒切り”

日本綜合地所 53人内定取り消し


 来春卒業予定の学生の就職内定の取り消しが全国で相次いでいます。内定を取り消された高校生や大学生は11月25日の時点で331人。その後も広がっており、採用試験を行いながら合格者を1人も出さずに採用を打ち切った企業もあるなど、卒業を前に多くの若者たちが不安を募らせています。(田代正則)


 大手不動産会社、日本綜合地所(東京都港区)は学生など53人の採用内定を取り消しました。同社は13日、内定を取り消した学生と家族への説明会を本社で行いました。

 一度は脱いだリクルートスーツに再びそでを通した学生たちが、同社のビルに足早に入っていきました。

 説明会で、西丸誠社長は内定取り消しの理由を「入社してもらっても、しあわせにできない」と説明。「迷惑料」を100万円払うと述べたといいます。

 学生たちは、「納得できる回答ではない」「ここに至った経緯を隠しているのではないか」と怒りや不信感を表明しました。

 大阪から大きなスーツケースを持って説明会に参加した男性。「会社に宅地建物取引主任者の資格を取るよう指示され、資格専門学校に9万円払ったが補償はなかった」と話します。

 日本綜合地所は、2007年のマンションの発売戸数が全国6位、首都圏では2位の大手企業。基本方針では、「すべての関係者の人権を尊重し、社会経済の健全な発展に貢献する」「業務に関する法令、その他社会的ルールを順守する」「利益と倫理が相反する場合は、迷わず倫理を優先する」と述べています。


労働契約は成立済み 泣き寝入り必要ない

 笹山尚人弁護士の話 企業が正社員として採用内定を出した時点で労働契約が成立します。それを取り消すことは解雇にあたり、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効です。(労働契約法16条)

 学生が留年で卒業できなかった場合などをのぞき、解雇には厳しい審査が必要になります。

 正社員として採用したら、定年退職まで雇用し続けるのが前提ですから、それまでの期間に景気の変動があることは、当然準備して採用に踏み切ったはずです。世界金融危機だけでは理由になりません。

 内定を取り消された人は、泣き寝入りする必要はありません。解雇の了承を求める書類への署名には応じてはいけません。会社からは「不景気だから」というような抽象的な言葉ではなく、具体的な数字や事実での説明を求めることが大事です。ひとりでは難しいと思ったら、労働組合や専門家に相談してください。


会社の指示で資格の勉強

 都内大学に通うAさん(男性、22歳)は、日本綜合地所から内定取り消しを受けました。

 4月時点ですでに内定を受けており、ゼミでの研究に熱心に取り組んでいました。日本綜合地所からは、就業前から、宅地建物取引主任者の国家資格を取得するよう指示を出され、夏休み返上で勉強しました。

 卒業論文のテーマには、「男性の育児休暇」を選びました。安心して暮らせ、男性も女性も生き生きと働ける社会をつくりたいと考え、ヨーロッパの制度などを4月からずっと調べていました。日本綜合地所は、社員の育児支援をアピールしている企業です。

 11月に卒論の中間報告をした3日後、内定を取り消されます。留年してもう1年間、学生を続ける余裕はありません。それ以降、就職先を探すため、ゼミに参加できなくなりました。

 Aさんは、「迷惑料をもらっても、就職先がなければどうしようもない」といいます。ゼミの仲間にも「人生をくるわせてひどい」と怒りの声が広がっています。

共産党・民青同盟 実態調査や指導要請

 日本共産党は、日本民主青年同盟(民青同盟)の若者たちと協力し、各地で高校・大学から実情を聞き取り、自治体や労働局など関係機関に企業の内定取り消しをやめろと指導するよう申し入れなどを行っています。

 笠井亮衆院議員、谷川智行衆院東京比例予定候補と党東京都議団は8日、都内4年制大学の4割にあたる39大学で少なくとも82人が内定を取り消されていたという調査結果を明らかにし、東京都と東京労働局へ、内定取り消しの根絶、雇用確保、失業者の生活支援を申し入れました。

 兵庫県では11月19日、瀬戸恵子衆院比例予定候補と平野貞雄兵庫7区予定候補が民青同盟と一緒に、関西学院大学から聞き取りを行いました。

 応対した森田伸一キャリアセンター次長は、当時報道で2人と発表されていた内定取り消し学生数が、5人に増えたことを話し、「労働者はモノじゃないんだから、企業でじっくり育成できるようにすべきやと思う。学生に安定した雇用を確保したいし、ぜひがんばってほしい」と述べました。

大学の就職担当者も切実な声

 日本共産党東京都議団が行った採用内定取り消し調査には、大学担当者から切実な声が寄せられました。いくつか紹介します。

 ■早い時期から 「従来の内定取り消しは、3月ぎりぎりまで頑張ったけれどどうしてもダメというケースが多かったが、今回は早い時期に、資金繰りが厳しくなったと、8月終わりから9月ごろにかけて行われたのが特徴です」

 ■企業に不信感 「内定式を10月に行い、企業によっては研修も行っている状況であったため、取り消し企業に不信感を持っている」

 ■先が読めない 「9月以降の米国の金融危機から一気に内定取り消しがきた。いままったく先が読めない。2、3月に経営状況が悪化し、卒業決定後に取り消しになる場合は『第二新卒』として扱われ、就職活動で最も悪い状況になる」

 ■社会的責任を 「企業の社会的責任を果たしてほしい。学生に口頭だけで取り消しを告げられたところもあった。不誠実な対応に憤りを感じる」

就職連絡会が中央行動

 教職員組合や青年・学生団体などでつくる「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(就職連絡会)は10日、学生の内定取り消し問題の解消などを求めて、東京都内で中央行動を行いました。

 集会であいさつした日本共産党の小池晃参院議員は「内定取り消しは指名解雇と同じだ」と厳しく批判。問題の解決に向けて、ともに奮闘する決意を述べました。


お悩みHunter

彼が借金。返済手伝うか迷う

  将来は結婚を考えている彼氏が、デジカメやCDをカードで買い、銀行に100万円近い借金をしていることが分かりました。今の彼の収入では返せる見込みがありません。「もう絶対に借りない」と言ってカードも捨てた彼の言葉を信じて、私もお金を出し、返済を手伝うべきか迷っています。(27歳 女性)

2人のためにも彼が返済を

  彼は、なぜそこまで借金をしてしまったのでしょうか。私自身はお金の管理はシビアな方なので、正直理解しがたいところがあります。

 私はお金を借りることがすべて悪いこととは思っていません。この不況の中、暮らしや商売が立ち行かなくなり藁(わら)にもすがる思いで借りる人もいるでしょう。

 しかし一方で、大した必要性も緊急性もないのに簡単にお金を引き出せるために、まるで「打ち出の小づち」のように無計画にお金を借りてしまう人もいるようです。

 こういう人はお金を借りているという感覚がないので、自分のお金のごとくどんどん引き出してしまうのでしょう。あなたの彼もこちらに当たるのではないですか。

 とりあえず彼は「打ち出の小づち」を捨てたのですから、これ以上借りたらマズイことには気づいたのだと思います。

 ところで彼は借りたお金を返す気があるのでしょうか。借りたという感覚がなければ返す気もないのではないですか。

 お金はあくまでも彼が返済すべきです。

 そうでないと何の教訓にもなりません。

 返済を手伝うこと以外のことは何でもしてあげてください。

 これから一緒になるのならあきらめずに、ときには厳しく接することが2人のためなんだと思います。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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