2008年12月21日(日)「しんぶん赤旗」

財務省原案

社会保障費削減 230億円に“圧縮”

世論恐れた一時しのぎ

抑制路線と決別こそ


写真

(写真)社会保障費増を求めた10・19中央集会=東京都内

 二十日に公表された二〇〇九年度予算財務省原案は、麻生内閣が、国民のくらしや健康、命を守る責任も意思も欠落していることを改めて示しました。その象徴が、社会保障予算削減路線をめぐる「決着」でした。

 政府は、表向き、「毎年二千二百億円を削減する路線」を堅持する旗を降ろしませんでした。しかし、国民の強い批判と怒りの前に、実質の削減幅は二百三十億円に“圧縮”されました。財務省原案は、深刻な矛盾に満ちた内容です。

 小泉純一郎内閣時代に決められた、「二千二百億円の削減路線」は、現在の「医療崩壊」「介護難民」という深刻な事態をもたらしてきた「元凶」です。

 高齢化などによって自然に増える必要な医療・年金・福祉予算までも無理やり削減するやり方にたいして、「削減路線の撤廃」の声が広がり、政府・与党内からも「削減路線は限界」との声が公然と上がりました。

 この声を無視できなくなった政府は、社会保障財源そのものを拡充することはせずに、一時的な財源で穴埋めするという「奇策」に出ました。「削減」の旗を掲げる一方、別枠で財源調達をするという「冷房を入れながら、暖房を入れる」(自民党のある議員)手法をとったのです。

 財源調達の方法も予算編成の過程で迷走しました。当初は「たばこ増税」から一千億円程度を当てにしましたが、「取れるところから取る」という安易なやり方に批判が集中し、直ちに断念に追い込まれました。代わって、年金特別会計の「埋蔵金」から千三百七十億円をひねり出し、それでも不足する分を道路特定財源から六百億円回すという、つぎはぎだらけの財源確保策となりました。その結果、社会保障費自然増分削減幅は二百三十億円に圧縮され、その分は後発医薬品の使用促進によってまかなうとしています。「削減方針」への異常なこだわりです。

 「社会保障費の年二千二百億円の抑制を見直すべきである。シーリング(概算要求基準)にこだわって、国民の健康・安心を踏みにじるべきでない」。政府の予算編成が大詰めを迎えた十七日、日本医師会はこんな見解を発表して、機械的な削減路線の撤回を強く求めました。

 医療関係団体などは、シーリング路線が維持される限り、今年度で削減幅を圧縮された分が一〇年度以降への削減額の拡大へとツケ回しにされることを強く警戒しています。

 「削減圧縮」に使われる「埋蔵金」も一時的な手当てにすぎず、「埋蔵金」の先には「恒久財源」として消費税増税の路線がはっきりと見えてきます。

 選挙を控えて、「削減路線」をごまかす政府・与党のやり方では、国民の不安と不信は増幅するばかりです。

 社会保障制度は、国民が安心して暮らすことができるための「最後のセーフティーネット」です。行き詰まった社会保障削減路線とは一刻も早く決別し、〇二年以来の削られた一兆六千二百億円を復活させるなど抜本的な政策転換こそが急がれます。(宮沢毅)



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