2008年12月20日(土)「しんぶん赤旗」

紛争を戦争にしないことができる、とは?


 〈問い〉 志位和夫委員長の党創立86周年記念講演に「人類の英知によって、紛争を戦争にしないことはできる」とありますが、どういうことですか? 戦争と紛争の区別は何ですか?(愛媛・一読者)

 〈答え〉 世界で起こる紛争にはさまざまな理由と背景があります。問題は、それをどう解決するかです。対話と交渉による平和的解決か、それとも武力によって決着をつけようとするのか。記念講演が強調しているのは、現代の世界には、武力を行使しないで紛争を解決する可能性があるという点です。

 実際、世界の武力紛争の様相は、1990年代以降大きく変化しています。世界の武力紛争の調査を続けているスウェーデンのウプサラ大学の研究では、90年代初めから04年の間に武力紛争はほぼ半減し、その後の3年間でもさらに減少し、全世界で06年現在残っている武力紛争は56件とされています。

 『広辞苑』では、戦争とは「武力による国家間の闘争」とされています。戦争と武力紛争との区別に厳密な定義といったものはありません。ただ、ウプサラ大学の研究では、小規模紛争(年間の死者が25人〜千人未満)、中規模紛争(紛争の全期間を通じて死者が千人超)、戦争(年間の死者が千人超)と、犠牲者の数で三つに区分しています。

 人類は、20世紀、二度の悲惨な世界戦争を経験するなかで、戦争を違法なものとする方向にすすんできました。現在の国際秩序の基礎となる国連憲章は、国連安全保障理事会が決定する集団安全保障としての軍事的措置と自衛のため以外の武力の行使を禁じています。

 近年、世界で広がる平和のための地域的共同の広がりは、紛争を戦争にしないで解決する大きな力となっています。欧州共同体(EU)では、もはやEU加盟国を侵略・占領して勢力を拡大しようというような脅威はない、という認識に立ち、直面しているのは、テロ、大量破壊兵器の拡散、地域紛争、破綻(はたん)国家、組織犯罪という「単なる軍事的手段では対処できない」脅威だとしています。

 しかし、日本の一部では、いまだに、日米軍事同盟が日本の安全の保障という主張がくり返されています。これは、平和と安定を脅かす問題をどう解決していくかではなく、20世紀の帝国主義の時代そのままに、軍事力で他の国々よりも優位に立つというものでしかありません。

 米国の軍事力に依存する国際秩序ではなく、21世紀の新たな脅威に対処する国際の平和秩序を世界は求めているのです。(村)

 〈参考〉『前衛』08年10月号、森原公敏「地域共同の発展―21世紀の『脅威と平和秩序』」

 〔2008・12・20(土)〕


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