2008年12月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米軍機低空飛行

これ以上激痛を押し付けるな


 米軍機が全国いたるところで低空飛行訓練をくりかえし、各地の住民を苦しめています。

 低空飛行訓練は減少したといわれますが、北海道や東北、群馬県や長野県、中国・四国の山地、鹿児島県トカラ列島などどこでも住民の告発が続いています。日本各地を飛んでいるFA18Dホーネット戦闘攻撃機が最近アメリカの住宅地に墜落し死者をだしたことで、住民の恐怖は大きくなるばかりです。住民の安全を守るには、「影響を最小限に」ではなく、低空飛行訓練の中止が欠かせません。

百五十メートル以下の飛行

 地上すれすれを高速で飛ぶ米軍機の低空飛行は、耳をつんざく金属特有の音を発し、進行方向にある建物の窓ガラスも衝撃音で割れることがあるほどです。突如現れて、いきなり襲いかかる米軍機のごう音で、住民は「心臓が破れる」というほどの衝撃を受け、平穏な生活が破壊されています。

 ことし四月、日本共産党の仁比聡平参院議員が低空飛行をやめさせよと追及したさい、石破茂防衛相(当時)でさえ、「(ごう音を受ける側は)本当に物すごい恐怖を感じることは、私自身、身をもって体験した」(四月十八日参院決算委員会)といったほどです。住民に恐怖を押し付けていることがわかっていながら、低空飛行を続けさせるのは筋が通りません。

 政府は、米軍が日本の航空法を尊重しているかのようにいい、低空飛行を規制しようともしていません。しかし米軍機は、人口密集地では三百メートル以上、それ以外の地域では百五十メートル以上という航空法の規定に違反して飛んでいるというのが各地の目撃証言です。

 政府は知らぬ顔を決め込んでいますが、米軍自身が八月、徳島県の照会に対して人口密集地以外の地域で、高度百五十メートル以下で飛んでいたことを公式に認めています。米軍に飛行実態を問いただすこともせず、飛行実態の調査も拒んできた政府の態度は重大です。

 いま必要なのは、アメリカいいなりに低空飛行を認めるのではなく、低空飛行による住民の苦痛を一刻も早く取り除くことです。

 政府が住民の安全よりも低空飛行を優先するのは、日米安保条約を後生大事にしているからです。政府は米軍機のパイロットの技能を維持・向上するのは「即応態勢という軍隊の機能を維持するうえで不可欠の要素」と言い張っています。

 米軍機は「日本防衛」のために低空飛行訓練をくりかえしているのではありません。低空飛行は先制攻撃戦略にもとづき世界各地へ軍事介入するための軍事行動です。侵略先でレーダーで探知されるのを避けながら、標的に接近し攻撃する技量をみがくのが飛行訓練の狙いです。アメリカの無法な戦争のための低空飛行訓練を認めるわけにいかないのは当然です。

中止に向け対米交渉を

 憲法は国民が平和的に生存する権利を保障しています。米軍機の低空飛行が住民を危険にさらし、平穏なくらしを奪っているというのに、米軍に「訓練を中止するということを申し入れるというのはなかなか慎重であるべきだ」(十一月十四日衆院国土交通委員会、西宮伸一外務省北米局長)などという政府の態度は言語道断です。

 政府はアメリカいいなりをやめ、低空飛行訓練の中止を正面にすえた対米交渉を行うべきです。



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