2008年12月10日(水)「しんぶん赤旗」

主張

銀行に10兆円法案

厳しい指導・監督が必要だ


 自民・民主は新金融機能強化法案を十一日の参院財政金融委員会で採決することで合意しました。

 麻生太郎首相は「一次補正で借り手側の対策はできた。問題は貸し手側」だとのべ、「貸し渋りが起きないように、早急に成立を」と言っています。しかし、借り手側の対策は依然として不十分であり、貸し手側の対策は銀行への大盤振る舞いにすぎません。

アメリカと比べても

 従来の金融機能強化法(三月に期限切れ)では公的資金の規模は二兆円でした。今回の法案では、資産百兆円クラスの大銀行にも投入できるよう、公的資金枠を五倍の十兆円に膨らませています。

 メガバンクと呼ばれる大銀行グループは、優遇税制によって法人税の負担をほとんど免れています。特に二〇〇一年から〇七年の七年間は十兆円の大もうけをあげながら国の法人税はゼロ、たったの一円も納税していません。そのメガバンクが、わずか一年半の間に中小企業向けの貸し出しを五兆円以上も減らして、貸し渋り・貸しはがしの先頭に立っています。

 全国銀行協会は法案の早期成立を求めていますが、それ自体、根深い腐敗体質の表れです。全銀協会長の杉山清次みずほ銀行頭取は貸し渋り批判に対し、「貸し渋りをしている意識はない。貸せないところには貸していないということだ」と言い放っています。

 法案は金融機関の収益性・効率性を高めることを第一の目的にして、破たん前の金融機関に予防的に資本注入(金融機関株の買い入れや出資)する枠組みです。

 最大で約七十兆円を投入できるアメリカの緊急経済安定化法は、五年後に損失が出た場合、大統領が金融業界に損失額を請求する法案を出すことになっています。しかし、新金融機能強化法案では損失は国民に転嫁します。

 中川昭一金融担当相は「アメリカにはアメリカのやり方、日本には日本のやり方がある」と答弁しました。日本政府の大銀行奉仕はアメリカと比べても異常です。

 この十年間に銀行業界には十二兆円以上の資本注入など、総額四十六兆八千億円もの公的資金を投入してきました。そのうち少なくとも十兆円以上が焦げ付いて、国民負担になることが確定しています。日銀の超低金利政策や保有株の買い取りなど、銀行業界には至れり尽くせりの応援策を講じてきました。

 それにもかかわらず、銀行業界は中小企業への貸し出しを全体で八十四兆円も減らしています。

 国民へのツケ回しを担保にした銀行応援は、乱脈融資や投機で失敗しても「税金で助けてくれる」という腐敗した経営体質をはびこらせました。しかも、新金融機能強化法案は、かつては資本注入した金融機関に求めていた中小企業への貸し出し目標さえ外しています。貸し渋りを防ぐ保証がまったくないばかりか、銀行の経営倫理の崩壊を促進するだけです。

深刻な貸し渋り倒産

 民間信用調査会社は、緊急保証制度が始まっているものの、資金繰り悪化による倒産が高水準だと指摘しています。年末に向け「貸し渋り倒産」は極めて深刻です。

 雨の日に無理やり傘を取り上げるような大銀行を、公的資金で甘やかすのではなく、貸し渋りをやめさせる厳しい指導・監督こそが緊急に必要です。


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