2008年12月6日(土)「しんぶん赤旗」

Q&A 改正国籍法ってなに?

「法の下の平等」を保障


 参院本会議で五日、日本共産党を含む賛成多数で改正国籍法が可決・成立しました。同改正法についてはマスメディアなどでもさまざまな意見が紹介されています。なぜ改正するのか、なにが変わるのかをQ&Aで考えてみます。

なぜいまか

  なぜいま改正するのですか?

  今年六月四日、日本人の父親とフィリピン人の母親との間に生まれた八―十四歳の子ども十人が、日本国籍を求めていた裁判の最高裁判決が出ました。判決は、現行の国籍法の規定が憲法一四条の「法の下の平等」原則に反するという違憲判断をし、原告全員の日本国籍を認めました。これは画期的なことです。

 これを受けて政府は、国籍法の改正案を国会に提出しました。

 最高裁判決は、「児童が出生によっていかなる差別も受けない」という国際人権B規約や児童の権利に関する条約を引用しています。今回の法改正は世界の流れに沿ったものです。

どんな中身

  どんな中身なの?

  国籍法は、日本国籍の取得や喪失についての法律です。

 現行の規定では、日本人の母親と外国人の父親との間に生まれた子どもは、無条件で日本国籍を取得します。

 日本人の父親と外国人の母親の子どもは、生まれる前に父親が認知していれば、出生と同時に国籍を取得します。

 しかし、出生後に認知した場合、両親が結婚しなければ国籍を取得できませんでした。父親が日本人なのに日本国籍を取得できない子どもは三万人にのぼるともいわれ、子どもの基本的人権が侵される事態が起きています。

 今回の国籍法改正によって、父母の「婚姻要件」が削除され、日本人の父親から出生後に認知されれば、法務局に届け出て日本国籍を取得できることになりました。

 これまで日本国籍を取得できないために、戸籍や住民票、健康保険などがないという差別を受け、基本的人権の保障の上で重大な不利益を被っていた実態に対して、「法の下の平等」を保障するという意味で、一歩前進の内容です。

犯罪増える?

  法改正で、虚偽の認知をして国籍を取得しようとする犯罪が増えるのではないかという声があります。

  制度を悪用し、虚偽の認知で国籍を得ようという行為や、ブローカーまがいの組織的な偽装認知は犯罪であり、その防止は大切です。

 しかし、憲法違反である現行法の規定を正すことと、偽装認知の防止は別の問題です。最高裁判決も、父母の婚姻を要件とした今までの規定が、偽装認知防止と「合理的関連性を有するものとはいい難」いとしています。

 偽装認知を防ぐために、法務省は、法務局の窓口に国籍取得の届け出に来た母親や関係者によく事情を聞き、関連書類と矛盾はないかなど十分に審査するとしています。偽装認知は法改正後の運用で防ぐ問題です。

  父親と子どもにDNA鑑定を法律で義務付けるべきだという声もありますね。

  偽装認知防止は当然ですが、新たなハードルを設け、真実の認知が排除されるのは本末転倒です。

 参院法務委員会で日本共産党の仁比聡平議員は、「法の下の平等」を実現するため、「子どもの福祉や利益が最優先という考え方で運用されるべきだ」と要求。法務省の倉吉敬民事局長は「真実の父子関係があり、日本国籍がほしいと届け出ている人たちの権利が損なわれないように、つらい思いをさせることがないようにするのは、もちろん大事だ」と答えました。

 森英介法相も「しゃくし定規でなく、事例に応じて実施にあたりたい」と述べています。

 外国人を母親とする子どもを認知する場合にだけDNA鑑定を義務付けるとすれば、新たな差別を生むことになります。また、DNA鑑定には多額の費用がかかり、父親から検体(検査材料)の入手が不可能な場合はどうするのか、検体のすり替えの危険性、鑑定の正確性の担保など、さまざまな問題があることを法務省も認めています。

 参院法務委員会の参考人質疑で日弁連の遠山信一郎氏は、「DNAは究極の個人情報」であり、「DNA鑑定の義務付けは、まごうことなく人権侵害だ。よほどの理由がない限り、個人情報の人権は守らなくてはいけない」と反対しました。


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