2008年11月27日(木)「しんぶん赤旗」

輸入汚染米

「食の安全」より売却を優先

有識者会議報告に見る


 輸入汚染米の不正転売を検証してきた内閣府の有識者会議(座長・但木敬一前検事総長)は二十五日、報告書をまとめました。そこには、農水省の「誤り」「不作為」「不適切」「責任感の欠落」「体制に大きな不備」などの言葉がならびます。「政府全体の取り組み欠如が事故米穀の不正流通の根本的問題」と指摘した同報告書から浮かび上がってきたものは―。(宇野龍彦)


不正転売招いた農水省

「極力主食用」の通知は未解明

 報告書は、国会での日本共産党の追及や、「しんぶん赤旗」で明らかになった問題に触れるなど、農水省の責任を追及する国民の運動や世論を意識したものといえます。報告書は、三笠フーズなどによる汚染米の不正転売を招いた「直接的原因」が農水省自体にあったとし、つぎのように指摘しました。

何重にも誤り

 「農林水産省は、保管中の汚染米の有害性を認識しながら、『食の安全』を確保することよりも、安価早期処分を優先させた誤りにより、汚染米の食用への流通防止のための有効な手段を何一つ講じなかった」

 「誤り」「不作為」は何重にもくりかえされました。(1)廃棄処分を検討せず、需要の調査不十分のまま工業用糊(のり)用途で売却を決定した(2)売却先について、不正業者を排除するなど制限も設けなかった(3)汚染米を着色するなど横流れ防止を講じなかった(4)流用防止マニュアルも作らなかった―などをあげています。そのうえで、農水省の対応を「職務の自覚や責任感の欠落」「官僚主義的体質」と批判。残留農薬検査成績書つきで告発のあった不正転売を示す文書をうやむやにした対応についても「組織上の責任は免れない」としました。

 農水省が三笠フーズを九十六回も検査したにもかかわらず、不正転売を見逃したことについて、報告書は「検査の在り方の問題に起因する」と分析。「食糧法」(五二条)にもとづく立ち入り検査ではなく任意の調査ですませ、販売先の調査もおこなわなかった責任の重大性を明らかにしました。

 不正転売が生じることを予測できたにもかかわらず、汚染米を非食用として流通させることは、農水省として「不適切なもの」と指摘。農水省が汚染米の食用以外への用途を容認したのは、汚染米であってもMA(ミニマムアクセス)米の輸入実績にカウントできるようにする側面があったとも指摘し、MA米と汚染米の関係にも触れています。

 報告書は、本紙がスクープした二〇〇七年三月の総合食料局長通知「物品(事業用)の事故処理要領」で、事故米の用途に「食用」(酒類やみそなど調味料、米菓類)と「非食用」が混在していた問題点を指摘。しかし、事故米を極力主食用として売却することを、この通知でなぜ書き加えたのか、もっとも重要な問題については明らかにしていません。

厚労省を批判

 三笠フーズとともに、三笠フーズなどに事故米を売却した輸入商社にも契約順守させなかった責任があるとしました。そして、「最も重い」責任があるとしたのは農水省総合食料局長などの幹部職員とし、「『食の安全』を守るべき職責を担っているという責任感も使命感も欠如していた」と、組織の統括者である歴代の農水相、事務次官に強く反省を求めました。

 きびしく農水省の責任をあきらかにした報告書ですが、それは農水省だけなのか。厚生労働省は、事故米が「非食用」になった時点で、食品衛生法上の規制対象でなくなり、権限行使の枠外だと説明してきました。

 しかし、「非食用」農産物の輸入は、事故米だけでなくトウモロコシなどを含めると三万八千トン(二〇〇七年度)にのぼり、「食の安全」に大きくかかわっています。

 報告書は、厚生労働省に「法律上の権限の外であっても、責任ある対応が必要であった」と指摘。輸入商社などから厚労省(検疫所)が、食品衛生法にもとづく事故米の処理計画書や最終処分の完了報告書の提出を受けていたことを明らかにしました。

 にもかかわらず、農水省に監視を要請するなど、食用不正転売防止に生かされなかったことを指摘。「結果として検疫所が実施した検査の効果が事実上失われてしまったことを重く受け止めるべきだ」と問題視し、汚染米の流通は農水省の責任といわんばかりの厚労省の対応を批判しています。


 有識者会議 汚染米不正転売問題の原因究明や責任の所在を第三者の立場から検証しようと、内閣府にことし九月十九日に設置された「事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議」のこと。法曹関係者、消費者問題の専門家ら八人で構成。


根源のコメ輸入は中止を

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 紙智子参院議員の話 有識者会議の報告書は、農林水産省の責任を明確にした点で、評価できます。ただ、「事故米を極力主食用に充当する」という考え方が導入された経緯や問題点の解明が不十分なことは、残念です。

 また、食の安全・安心を行政全般に貫くためにも、私たちが明らかにした食品衛生法違反の輸入食品の非食用としての輸入の是正は不可欠です。さらに、今回の事故米問題の根源となったミニマムアクセス米の輸入中止に向けて、今後とも全力を尽くしていきたい。



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