2008年11月24日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

あったか福祉灯油 拡充へ高まる運動


 低所得の世帯の灯油購入を支援する「福祉灯油」は、積雪寒冷地の「命綱」です。投機による石油の高騰が大きな問題となった今冬は、全自治体での実施や制度の拡充を求める運動が高まっています。


券手渡し、手紙で通知

利用しやすい制度へ工夫

長野各地

 長野県では、全八十一市町村中、二十五の自治体が福祉灯油の実施を決定、もしくは十二月議会に向けて前向きに検討されています。

 昨年度の経験から、九月議会や臨時議会で決定して給付時期を前倒しして早めの対応をとる自治体や、制度の充実を図る自治体も見られます。

 茅野市では、九月議会での日本共産党の伊藤眞智子市議の質問で、市が実施を約束。地元紙にも伊藤議員の質問が一面で紹介されました。

 諏訪市では、党市議団の申し入れに、市長が「検討したい」と回答。同市では昨年、利用者の申請ではなく民生委員を通した直接の灯油券手渡しを行い、利用率が93・3%に達しました。党市議団は、物価高で生活がさらに苦しくなっていることから、昨年度(十二月末実施)より早めの対応を要望。今年度は十二月一日から使えるようになりました。議会では、原油の値下がり傾向の指摘もありましたが、市側は「平成十八年度一月時点で一リットル七十五円であり、現在の八十円台は当時より高い」との認識を示しました。

 申請方法をとる佐久市でも、「より使いやすいように」と党市議団が求めてきた対象世帯への案内通知の郵送が実現します。

 対象世帯を拡大する自治体も生まれています。高山村では、対象世帯となる「母子及び父子家庭」について、対象を昨年の十八歳未満から二十歳未満の子どもをもつ世帯に拡大。新たに、子育て世帯にも対象を広げました。

 日本共産党と住民の共同も広がっています。長野市では十月、生活と健康を守る会が市に申し入れを行いました。参加者は「生活保護を受けているが、ストーブや風呂はお金がかかって使えないし、新しい衣料や布団も買えない」「今までストーブなしで我慢してきたけど今年は買いたい。市として暮らしを応援して」など切実に訴え。同席した党市議団は、市に申し入れを行い、十二月議会で引き続き実施を求めていきます。

今年も県補助

生活保護世帯にも

岩手

 岩手県は十七日の十二月県議会提出予定議案等説明会で、今年度も、福祉灯油を実施する市町村に経費の一部を助成する補正予算案を提出することを明らかにしました。

 今回の補正予算額は約一億二千五百万円。助成対象は高齢者世帯、障害者世帯、ひとり親世帯で市町村民税非課税の世帯と、市町村が灯油購入費を助成した生活保護世帯です。補助率は二分の一となります。

 岩手県では昨年度、三十五の全市町村が福祉灯油を実施し、県の助成額は「約一億二千二百万円で、全国一だった」(県の担当者)といいます。

 今年度の福祉灯油の実施を求めて十四日に県に要請した、岩手県母親大会実行委員会の渡辺喜代子委員長は「交渉したかいがあった。寒さがきびしくなる中で、福祉灯油は低所得者にとってあったかい、うれしい制度だと思う」と話します。

 日本共産党の斉藤信県議は「いち早く実施の方向を示し、昨年度に続いて予算化したことは、県民運動の貴重な成果だ」と語っています。

札幌で実施 今年こそ

北海道 共産党と住民 各地で奮闘

 北海道内では、福祉灯油制度が昨年以上に広がりつつあります。各自治体で活動する日本共産党議員団は、福祉灯油実施へ住民と協力して、要求前進へ力を尽くしています。

 福祉灯油制度はもともと高齢者や障害者、母子家庭など生活困窮世帯への生活支援策として始まりました。道内では昨年、百七十六自治体が実施(二〇〇八年一月現在)しました。

道は3億円計上

 今年、道社保協や道生連などの運動や日本共産党道議団の追及もあって、道は九月、福祉灯油事業に昨年の約三・五倍にあたる三億円を計上しました。

 各市町村はいま、福祉灯油の実施・拡充へ動きだしています。

 旭川市(西川将人市長)では、七十歳以上の高齢者がいる世帯や父子家庭も対象に入れ、昨年に比べ約四千世帯拡大することに。党市議団とおぎう和敏衆院比例候補(道6区重複)や民主団体がくり返し要望してきたことが実りました。

 蘭越町(宮谷内留雄町長)では、町独自に「原油・原材料価格高騰の緊急対策」を打ち出し、四千三百万円の補正予算を計上するとともに、福祉灯油では昨年の四百万円から二・五倍以上の千五十万円に増額しました。町民税非課税の七十歳以上の高齢者や障害者、ひとり親、生活保護の各世帯を対象に助成します。特別養護老人ホームの燃料費高騰対策として、二分の一を限度に助成も行います。

 全道の自治体が財政難のなかでも、「灯油高騰は死活問題」ととりくむ一方で、百八十九万の人口を抱える札幌市は「福祉灯油は十三億円かかり、財政的に厳しい」「貸付金の『あったか資金』制度がある」と実施に背を向け続けています。

 二月末の市議会本会議では、市民が提出した福祉灯油実施を求める陳情と日本共産党市議団が提案した「福祉灯油助成条例案」を民主、自民、公明などの反対で否決しました。

今後も粘り強く

 「今年こそ福祉灯油を」。党市議団はいち早く行動しています。

 八月、上田文雄市長に「この冬は昨年以上に高齢者や障害者の生活は厳しく、福祉灯油の要望は強い」と緊急対策を迫りました。

 九月の市議会代表質問でも、井上ひさ子団長が「生活困窮者への支援は待ったなし。市民の要求や国、道の動向に逆行し、実施しないのは許されない」と厳しく追及しました。

 党市議団は十月十四日には、「市民と議会の意思を重く受け止めよ」と上田市長に再度申し入れました。九月の代表質問で共産党のほか、自民、公明両党が実施を求めました。三党で議会の過半数を占め、「市長は議会の意思を尊重せよ」との声が広がっています。

 党市議団の宮川潤幹事長は「市民の命とくらしを第一義的に考えるなら、一致協力して福祉灯油を実現すべきです。これからも粘り強く呼びかけていきます」と話しています。(北海道・土田浩一)

「拡充」宣伝の公明党

市議会で陳情反対したのに

青森

 公明党は青森県内各地で「生活を守るのは、公明党です」というビラを配布しています。この中で、「福祉灯油、福祉ガソリンを拡充」とうたい、特別交付税の補助率を引き上げる、としています。

 ところが公明党は、青森生活と健康を守る会が青森市の九月市議会に提出した「生活困窮世帯を支援する『福祉灯油』事業の実施を求める陳情」に対し、自民党などといっしょに反対しました。

 県内の灯油価格について、大柴正文・市健康福祉部長も「市民生活に影響を及ぼしています」と答弁せざるをえない状況です。公明党に「福祉灯油を拡充」などという資格はありません。


 日本共産党の「基本政策」から

 「低所得者向けの福祉灯油を今年の冬を大きく上回る規模で実施するために、国の財政支援を抜本的に拡充します」


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