2008年11月24日(月)「しんぶん赤旗」

売り上げ6割減 老後の蓄え取り崩す

大阪の中小零細企業


 世界的な金融危機に伴う景気悪化が、全国の中小零細企業の経営を直撃しています。「仕事がない」「もうけが出ない」と、輸出向けの自動車部品などを扱う製造加工業の経営者らからもれるのは悲痛な叫び。中小企業の街、大阪府内の現状を見ると―。(松田大地)


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 府南部に位置する河内長野市。市の主要産業品の一つに数えられるベアリング(軸受け)などの金属加工業者(65)は「老後のための備蓄」で運転資金を補う状態がつづいています。

 妻(65)と一緒に山あいの自宅に併設した工場を切り盛りして四十五年。大手取引先からのベアリングの受注は三分の一まで激減し、加工賃がベアリングより二十円高い自動車のブレーキ回り部品の受注は、金融危機が沸き起こった九月からなくなりました。月二百五十万円前後の売り上げが百万円を割り込んでいます。

 夏の北京五輪まであった忙しさが、いまは様変わりして三日に一日は工場を休まざるをえません。

 「原油高で一気に落ち込んだうえに、一番の自動車消費国のアメリカがガクッとなったあおりがきつい。これだけ急激な不況はいままでなかった」と、驚きを隠せません。

 資材価格の高騰を受け、大手取引先からは「1、2%分はかぶってくれ」と加工賃単価の圧縮を迫られます。自前で仕入れる機械油なども値上がりし、前年同期比で三割も経費がはね上がりました。取引先数社を訪ね営業に回る日々です。

 「しんどいだけだが、年金は夫婦合わせても月八万円しかない。もうけがなくてもやらないと」といい、「生涯現役」と自らを奮い立たせますが、「先行きに希望が見えない」と肩を落とします。

“11月、仕事がない”

中小零細融資 柔軟に

大阪

 大阪府中部の八尾市内で両親とともに金属加工会社を営む経営者(40)。十月末から、ファクスで届く取引先からの注文書が一切途絶えました。「残業どころか、十一月に入って仕事ありませんわ」と、口を真一文字に結びます。

 代わりに九月末から届いているのは、経費値上げの通知。一リットル当たり一、二円ほどで推移していた、加工過程で使う切削油が三十五円に高騰したため、初めて書面で通知されました。主力の建築用鋼材の仕入れ値も、五年前の二倍に。自動車のバッテリー部品の受注数は二割台に落ち込んでいます。

工場が更地に

 価格転嫁もできず、売り上げは減り続けています。「近所の同業の工場がいつのまにか更地になっている。モノづくり文化を支えた金属加工の技術やノウハウが失われるのは残念。政治はもっと中小零細企業に目を向けてほしい」と声を強めます。

 中小企業への融資も厳しさを増しています。「(貴社は)今年は赤字を出しているから…」。融資審査で難色を示す信用保証協会の姿勢に、東大阪市内の機械メーカー社長の男性は「画一的なマニュアル(審査)だ。セーフティーネットのほんまの意味は何やねん」と不満を吐きます。約三十人の従業員を抱える中堅企業です。

 政府の緊急信用保証制度を受け、今月中旬に五千万円の融資を求めて申請しました。同協会窓口には連日、多数の経営者が相談に殺到しています。

 二〇一〇年の中国・上海万博に向けて昨年から設備投資を続けてきました。しかし、「真綿で首を絞められる」ような原油高にアメリカの金融危機、円高が追い打ちをかけ、今年の年間売り上げは三割減になる見込み。つなぎの運転資金も銀行が貸し渋る状態です。「先がないねん。このままなら、いつか破たんする」と声を落とします。

 市内の中小企業経営者から聞くのは「仕事が半減した」「初めて赤字を出した」「(今後、親会社の)発注が中国に移るのでは。恐ろしい」といった悲鳴です。

 前出の社長は「何兆円も公的資金を受けた大銀行が、特に製造業の会社には貸さない。中小企業をあまりにないがしろにしている」と怒りをあらわにします。

収益圧迫88%

 大阪商工団体連合会(大商連)が調査した実態告発(七月―九月)によると、製造加工業のほか建設・飲食関連業などを含めた中小零細企業の経営者三百四十五人のうち、原材料価格の高騰が「収益を大きく圧迫」しているのが54%。「やや圧迫」を加えれば88%に達します。一方、価格転嫁が「まったくできていない」経営者は半数にのぼりました。

 大商連の担当者は語ります。

 「相当体力が落ちている中小零細企業に、金融危機の影響がさらに広がると考えられます。信用保証協会や銀行は融資に対し、もっと柔軟な対応をとるべきです。政府の中小企業予算が大幅に減るなか、雇用や自治体の税収増などの観点からも地域経済を活性化する政策が求められます」


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