2008年11月22日(土)「しんぶん赤旗」

政党構図と日本共産党、世界金融危機について

CS放送「各党はいま」 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は二十一日放映(二十日収録)のCS放送・朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、今日の政党構図と日本共産党、世界金融危機などについて、星浩朝日新聞編集委員の質問に答えました。その要旨を紹介します。


いよいよ行き詰まった麻生政権――「政権延命」の党略しかない

  麻生政権が発足して二カ月になりますが、やや失速気味というか迷走気味です。どうご覧になっていますか。

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(写真)「各党はいま」でインタビューにこたえる志位和夫委員長

 志位 一言でいって、麻生自公政権というのは、「政権の延命」という党略しかない政権だと思うんです。それがいよいよ行き詰まってきた。この党略にたって、最初は自民党総裁選で盛り上げ、正体不明のうちに(臨時国会で)冒頭解散をやろうとしたけれども、うまくいかないで頓挫した。つぎは第一次補正予算を通して、十一月の終わりには選挙をやろうとして、これも頓挫した。国民の批判に押されて、ズルズルと選挙が決断できないでここまで来てしまった。

 しかし選挙をやらないとなると、何かやらなければと出してきたのが、あの「追加経済対策」でした。しかし最初から真剣に景気対策を考えて出してきたものでなく、「政権延命」という党略が先にあって出してきたものですから、いろいろなほころびが次から次へと出てきた。

 例の二兆円の定額給付金のバラマキについても、ばらまき先も決まらなくて迷走し、最後は自治体に丸投げという最悪の結果になりました。批判が噴出し、「目玉」にしようとした定額給付金が、致命傷になりつつある状態だと思います。

  給付金は、景気対策、社会政策としてある程度効果を持ちうるんでしょうか。

 志位 景気対策としては、意味がないものだと思います。本気でいまの景気をよくしようと思ったら、内需主導で持続的に経済が発展していくようにしていく必要がある。そのことを考えたら、安定した雇用が必要ですし、社会保障の安心が必要です。庶民への減税も、私たちは消費税の食料品非課税を主張していますが、貧困や格差を是正していく方向での所得再配分につながる恒久措置が必要です。そういう内需・家計を持続的に温める措置をまったくやらないでおいて、一回こっきりの二兆円をばらまいても、経済政策としても意味がありません。

 くわえて、小泉内閣以来、庶民への増税は、社会保障の負担増と合わせて十三兆円ですよ。それを続けたまま、たった一回こっきりの二兆円をばらまいて勘弁してくれといっても、これは勘弁ならんということになります。

 もう一点言いますと、三年後の消費税増税がセットで出てきましたでしょう。大増税の予告つきで一回こっきりの二兆円の給付金をもらっても、景気がよくなる道理はない。二重、三重にこれは愚策というほかありません。白紙撤回するしかありません。

民主党――「対決路線」というが二重に道理がたたない党略優先の態度

  そうしたなかで、自民党と民主党の党首会談が開かれました。委員長は、麻生内閣も迷走なら民主党も迷走だといわれていますが、自民党と民主党の駆け引きをどんなふうにみていますか。

 志位 さきほど、自公政権はただ「政権延命」という党略で動いているといったんですが、民主党もやはり党略優先で動いている。「早期解散と政権交代」という党略を最優先させて、国民からみて筋の通らないことを繰り返し、こちらも迷走しています。

 民主党が、臨時国会でまずとった戦略は、(早期解散のためには)何でも与党に協力しましょうということで、後期高齢者医療制度の存続を前提にした一次補正予算に賛成した。新テロ特措法の延長案も衆院段階では早く通せと主導したわけです。これが行き詰まって、うまくいかなくなると、突然、方向転換をして、“対決路線”だという。しかし、いま民主党が主張していることは、「二次補正予算案を早く出せ、出したら新テロ法延長案の採決をしてもいい」ということでしょう。これは二重におかしな話になってしまいます。

 まず、第二次補正予算案なるものは、野党の側から「早く出せ」というような代物なのか。ここには給付金のばらまきが入っている。私は「白紙撤回すべきだ」といったけど、民主党の菅さん(代表代行)も翌日「白紙撤回すべきだ」といったでしょう。自分たちで「白紙撤回」といっているものを、「早く出せ」というのは、まったく矛盾しています。さらに、第二次補正予算案を出したら新テロ法延長案は採決していいと、絡めて取引するのも、まったく道理が立ちません。民主党も、党略優先で右往左往というのは、結局、自民党の路線にたいして、本当に対決軸になる政治路線を持っていないという問題が根本にあると思います。

 自民党も民主党も、国民の暮らしそっちのけ、党略優先になっている。いま重要なのは、景気悪化でこれだけ国民の暮らしが深刻になっているのですから、残る国会の期間で、どういう基本的立場で景気対策をやるか、堂々と国民の前で議論することです。私たちも対案(「緊急経済提言」)を出しました。いったいだれを応援する景気対策をやる必要があるのか。政府がいうように大企業や大銀行応援でいいのか。それとも暮らしと家計を応援する景気対策をおこなうのか。この根本のところをしっかり議論する必要がある。これが政治の責任だと思います。

世界金融危機――極端な金融の規制緩和、自由化路線が破たんした

  目を転じて、金融危機の問題ですが、共産党は「資本主義の限界」ということも言われていまして、ある意味では共産党の言われているところと沿うような展開のような気がしますけれども、どんなふうにお考えですか。

 志位 いま起こっていることは、米国を中心に、一九八〇年代、九〇年代とすすめられた金融の規制緩和、金融の自由化、カジノ資本主義、これが極端なところまできて、破たんしたことの結果だと思うんです。米国で、一九二九年の大恐慌のあとに、グラス・スティーガル法という銀行業と証券業を分離する法律がつくられたのですが、これが九〇年代に廃止されたのは、その象徴です。この極端な金融の自由化が、膨大な投機マネーをつくることになった。

 専門家によると、世界のGDP(国内総生産)の総計が四十八兆ドル。金融資産の総額は百五十二兆ドルで三倍にもなる。さらに、店頭デリバティブ(金融派生商品)の取引残高は五百十六兆ドルにもなる。世界のGDPの十倍もの規模で投機的な金融商品が取引されている。こういう極端なところまで投機マネーを膨らませてしまった。それが自ら壊れつつあるなかで、世界の実体経済を破壊しているのが、いまの局面だと思います。

 ですから、本格的な投機の規制という方向に進むことが強く求められます。私たちは、もともと資本主義と信用制度の本性からして、過度の投機を生むと考えていますけれど、まずは資本主義の枠組みのなかでも、国際的な協調で規制強化の方向に踏み出さないといけない。この点では、先日行われたG20(金融サミット)は重要な一歩だというふうに考えています。

規制強化に踏み出したG20(金融サミット)の三つの注目点

  G20が開かれ、金融機関の規制に乗り出すということなんですけど、各論になってくると、果たして大丈夫かどうか、このあたりはいかがですか。

 志位 もちろんその具体化は今後の問題ですが、私は、あのG20の首脳宣言を読んで、注目点が三つほどあると思うんです。

 一つは、(金融危機の)原因についてです。「いくつかの先進国では、政策・規制当局は、リスクを適切に評価せず、対応ができなかった」。つまり、金融自由化政策が今回の事態を招いたということで、市場原理主義、カジノ資本主義を断罪したわけです。

 二つ目に、「すべての金融市場、商品、参加者が、適切に規制され、監督の対象になる」。これは規制強化の方向に踏み出そうと(うたった)。どういうものを対象にしていくかは、今後の課題ですけれども、規制強化という方向に踏み出した。これは非常に大事な方向だと思っています。

 三つ目に、「国際金融機関の改革」です。いまのIMF(国際通貨基金)などの体制を、「最貧国を含め新興国と途上国がより大きな発言権と代表権を持つようにする」。これまでのIMFというのは、アメリカが絶対的な力を持っていて、ノーといえば何も決められなかったわけです。それを新興国や途上国の意見も反映するものに民主化していこうという方向がうたわれた。

 この結論に照らしてみますと、日本政府はどれも反対をやっている。日本政府は、金融自由化路線をアメリカに言われるまますすめ、「貯蓄から投資へ」とあおってきたが、それが断罪されたわけです。それから、金融規制の問題でも、サミットのなかでアメリカの側に立って、金融市場は自由であるべきだという立場をとったが、これは退けられた。IMFについても、日本は十兆円のお金を出すと威張っているけれども、問題はIMFのあり方なのです。アメリカ中心の機構から、民主的な機構に変えていこうということが問題になっているのに、ドル中心の基軸通貨体制を支えることが大事なんだと旧態依然の立場に終始しました。日本のこれまでの金融政策が否定される方向に、(G20で)かじが切られたという点が、大事な点だと思います。

  国際的な金融機関にたいする規制というのは、どういうことが考えられますか。

 志位 いくつか考えられますが、一つは、金融投機の先兵になっているヘッジファンド、あるいはデリバティブなど投機的金融商品の情報公開をして、闇の部分を表にだすことです。いま一つは、短期的に国境を越えて動く投機マネーに適正な課税をする。これによって、投機マネーの動きを抑える。これらはやる気になればできることです。

アメリカ一極支配は終焉を迎えつつある――日本の経済政策も抜本的転換が必要

  委員長の見立てだと、G20の結果は一種のアメリカ一極支配の終焉(しゅうえん)というか、大きな変化の第一歩ということになるんですか。

 志位 そう思います。戦後、アメリカは、国際的金融の面で、決定的な力を持っていました。IMF、世界銀行などの国際金融機関に対しても、絶対的な権限を持っていた。そしてドルが基軸通貨として世界に君臨してきた。

 そういう体制がもたなくなって、欧州、新興国、途上国なども含めて、世界全体がプレーヤーになる、アメリカ支配から、民主的体制に、国際経済が移行していく一つの大きな変わり目に来ていると思います。

 そのときに、日本がどうするかが大事なのですが、日本はこれまで、ともかくドル支配を支えるということを最優先にして、金融政策でも、必ずアメリカの金利より日本の金利を低くおさえてきた(日米金利差)。そのことによって、日本からアメリカにお金が流れていく仕組みをつくって、ドルを支えてきました。これが投機マネーを膨らませることにもなったわけです。さらに、「円キャリートレード」といって、金利の低い円でお金を調達して、金利の高いドル建ての証券などに投資し、金利差で稼ぐというやり方もおこなわれ、ここでも投機マネーを膨らませました。

 “ドルの下僕”でいることが、投機マネーを膨張させることにもなってきたわけで、日本もアメリカに従属した金融経済政策を抜本的に転換していかなければならない。いつまでも“ドルの下僕”でいたら、世界の流れとはまったく合わないことになるということを言いたいですね。

国会論戦と、国民のたたかいで、自公政権を追い詰める

  いずれ総選挙で民意を問うということなんですが、委員長の見立てはどうですか。

 志位 なかなか先を読むのは難しい、言うのも難しいですね。ただ、いまの麻生内閣の実態からすると、国民の批判にズルズル押されて、解散ができない状況にだんだんなりつつある。そのもとで主導的に解散にいかに追い込むかということを考えますと、二つ大事なことがあると思います。

 一つは、正面からの国会論戦で追い詰めていく。政府は、「追加経済対策」を十月三十日に出しましたが、その後、一回も予算委員会を開いていない(星「そうですね」)。予算委員会を開いて、集中審議をおこない、いったいどういう立場で経済対策をやるべきかの基本のところでの議論が必要です。党首討論も、共産党も含めた形で、(星「そうですね」)これはしっかりやる。国会の論戦で追い詰めていく。

 もう一つは、国民のたたかいです。私たちは、雇用を守るたたかい、社会保障をよくするたたかい、農業を再生するたたかい、いろんな分野で大いにたたかいを起こしていこうとよびかけ、とりくんでいます。たたかいによって景気悪化から現実に国民の暮らしを守りながら、選挙に備えるという見地が大切です。

 国会論戦と国民のたたかいで、相手を追い詰めて、解散・総選挙に追い込んでいくというたたかいに、意気高くとりくんでいきたいと思います。



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