2008年11月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張

定額給付金

「選挙目当て」が迷走招いた


 「給付金方式で全所帯について実施します」(十月三十日)。「生活に困っているところに出すわけだから、豊かなところに出す必要はない」(十一月四日)。「五千万円もらっても高額所得じゃないという人もいれば、五百万円もらっても(給付金は)いらないという人もいる」(十日)

 麻生太郎首相の発言がコロコロと揺れ動き、自民党と公明党が追加経済対策の目玉にした「定額給付金」は迷走を重ねました。自公は十二日、その大枠をようやく決定しました。

公金を使った選挙買収

 与党の合意によると、「定額給付金」の受給に所得制限を設ける場合は「千八百万円」以上にするとしています。その一方で、現実に所得制限を設けるかどうかや支給の方法などの具体策は、窓口となる市区町村に丸投げしました。迷走の果てにたどりついた決着も、極めて無責任です。

 一連の経過と結末には、与党内からも「政府の統治能力の問題」(閣僚経験者)と批判が出るほどです。統治能力の欠如をさらけ出すようなドタバタに陥った根本には、消費税増税にからんだ「よこしまな動機」があります。

 六月十七日、当時の福田康夫首相が消費税増税について「決断しないといけない。大事な時期だ」と発言しました。これに対して自民党の伊吹文明幹事長(当時)が、「(総選挙に)勝とうと思うと一種の『目くらまし』をしなければしょうがない」と、地元・京都の講演会で吐露しています。

 実際に麻生首相は、「定額給付金」が売り物の追加経済対策を発表した十月三十日の記者会見で、同時に「三年後の消費税増税」を打ち出しました。「定額給付金」を消費税増税の「目くらまし」に仕立てる狙いが、くっきりと浮かび上がっています。

 発想そのものが「目くらまし」にすぎず、与党がまじめに国民の暮らしや景気の立て直しを考えていないことは明らかです。「公金を使った選挙目当ての買収だ」と言われても仕方がありません。ここに迷走の根本原因があります。

 「定額給付金」のモデルである「地域振興券」(一九九九年の上半期に配布)は、民間調査でもほとんど景気浮揚の効果がなかったことが明確になっています。財務大臣さえ、地域振興券には「むだが多かった」と批判しているほどです(二〇〇一年、当時の塩川正十郎財務相)。

 首相自身が「百年に一度」の経済危機だとのべているのに、「天下の愚策」と呼ばれ、効果が薄いと分かっている対策に貴重な財源を投入するのは愚の骨頂です。

消費税一生ぼったくり

 小泉内閣以降、お年よりには後期高齢者医療制度で差別医療や保険料の増加が押し付けられ、過酷な年金課税の強化など、さんざんな負担増の連続です。若い世代を含め、定率減税の廃止で所得税・住民税が年額三・三兆円も増税となり、社会保障と税金で年間十三兆円もの負担増・給付カットになっています。一回限りの「定額給付金」では家計は大赤字です。

 何より「定額給付金」で「目くらまし」をもくろむ消費税増税で、与党は近い将来に二ケタへの税率引き上げを狙っています。わずかな「給付金」は一瞬で消え、大増税は一生続くという“ぼったくり”にほかなりません。


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