2008年11月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

社会保障最終報告

到底納得できない消費税増税


 社会保障国民会議の最終報告(四日)は、「社会保障の機能強化」の財源として二〇一五年に最大で消費税率11%、二五年に13%分の負担増が必要だとしています。

 政府は同会議の目的について、「すべての人」が安心できる「社会保障のあるべき姿」と、「どのような負担を分かち合うか」を議論することだと説明してきました。

 最終報告には安心できる社会保障も負担の分かち合いもなく、“初めに消費税増税ありき”の姿勢だけが浮き上がっています。

大企業に応分の負担を

 社会保障国民会議は公費負担の規模を、一貫して「消費税率に換算」して明記しています。あたかも公費負担の財源は消費税しかないかのような描き方です。

 この会議が、社会保障にふさわしい財源のあり方、「どのような負担を分かち合うか」を真剣に検討した形跡すらないのはどうしたことか。麻生太郎首相は十月三十日の記者会見で「三年後に消費税の引き上げをお願いしたい」とのべました。最終報告は、その地ならし役にしか見えません。

 同会議は、社会保障について「『所得再分配の機能』を通じて、給付の平等・負担の公平という『社会的公正』を実現するもの」だとのべています。

 「所得再分配」とは、資本主義経済がもたらす貧富の格差を是正するため、富めるものから貧しいものへ所得を移し、社会的な連帯ときずなを守る仕組みです。その財源として、低所得層ほど所得に占める負担割合が重くなる逆進的な消費税が、ふさわしくないことは明らかです。消費税の逆進性は税率が高くなるほど過酷になります。消費税率引き上げは社会保障制度の所得再分配の機能を台無しにしてしまいます。

 社会保障の恩恵を受けるのは低所得層だけではありません。その財源には、しっかりした所得再分配の役割が求められます。

 消費税は市場で優位に立つ大企業なら価格にすべて転嫁できる税制です。おまけに輸出企業は、「輸出戻し税」で仕入れにかかった消費税の還付まで受けられます。一方で下請け中小企業は赤字でも自腹を切って納税しなければならず、消費者はどこにも転嫁できません。「負担の公平」とは対極の不公平税制です。

 社会保障国民会議の議論でも、「企業に社会的な責任、あるいは歴史的な責任をもう少し自覚してもらいたい。今後のさまざまな負担関係でいうと企業が後ろに引きすぎている」という指摘が出ています。自公政府は大企業、高額所得層や大資産家に年間七兆円もの減税をばらまいています。「負担の公平」というなら、こうした既得権益層にこそ応分の負担を求めるべきです。

「貧困大国」なのに

 何より最終報告には、毎年二千二百億円の社会保障予算の抑制路線の撤回も、後期高齢者医療制度の廃止も盛り込みませんでした。「安心」は無いのに消費税率引き上げだけは鮮明です。こんな増税には到底納得できません。

 日本の貧困水準は、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で悪いほうから数えて四番目です。アメリカに肉薄する「貧困大国」の日本が、たとえ社会保障のためであったとしても、低所得層を直撃する消費税の比重を高めることは許されません。



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