2008年11月6日(木)「しんぶん赤旗」
オバマ氏
差別を乗り越え黒人大統領誕生
アメリカ国民がまた新しい歴史をつくりました。史上初の黒人大統領の誕生は、長い間の人種差別と偏見の壁を前向きに乗り越えていく人民の力を示しました。世界中でいわれない差別と抑圧、隷従に苦しみ、社会のひずみとたたかう人びとへの大きな励ましです。
ほころび始めたとはいえ、世界を支配しリードする超大国。その指令塔であるホワイトハウスに、マイノリティー(少数派)の代名詞ともいえる黒人が入ることを、だれが予想していたでしょう。
奴隷船、「アンクル・トムの小屋」、「ルーツ」…。黒人問題と人種対立は、自由と理想のたいまつをかかげた合衆国の暗部であり、病巣でした。その矛盾はときに犯罪となり、暴動となって爆発しました。リンカーン暗殺(一八六五年)の悲劇を生みました。ケネディの暗殺(一九六三年)も、黒人の公民権運動が盛り上がるなかでの出来事でした。
軍人として国民的な英雄となり、大統領候補の呼び声が高かったパウエル元国務長官。彼が最終的に出馬を見合わせたのも、人種の壁といわれました。今度の選挙でも、オバマ氏優勢が伝えられながら、有権者が実際に投票する段になればどうなるかわからない―そういった声が聞かれました。
その懸念を打ち破ったのは、ブッシュ政治からの転換と変化を求める国民の期待と要求でした。イラク・アフガン戦争やごう慢な外交、覇権主義。金さえあれば何でもできる弱肉強食の市場優先主義。その破たんで直面した経済と生活の不安。国の行く末を根本的に変えなければだめだ、この願いと行動が国民を動かし、人種の壁を打ち破りました。社会の矛盾を草の根からの一票の力で正していく力をも示しました。
「変化」を掲げたオバマ次期大統領のもとで、米国は本当に変わるのか。多くの人々が期待しています。その期待と要求にオバマ氏がどうこたえていくか、世界は真剣に見守っています。(田中靖宏)

