2008年10月18日(土)「しんぶん赤旗」

首相の「全治3年論」

6年来の口癖

故福田赳夫氏の引き写し


 麻生太郎首相は首相就任以来、日本経済全治三年論を展開しています。月刊誌十一月号では、その持論が「故福田赳夫氏(元首相)が掲げた標語である」とのべ、その引き写しだったことを明らかにしました。しかし、しょせんは他人の借り物、麻生流全治三年論は福田元首相のそれとは似て非なる中身です。


 ○…麻生首相は、九月の自民党総裁選で発表した政権政策「日本の底力―強くて明るい日本をつくる―」で、「日本経済はいま、全治三年。短期集中・重点特化型の立て直しをします」と打ち出しました。

 首相就任後の所信表明演説(九月二十九日)では「日本経済は全治三年と申し上げます。三年で日本経済は脱皮できる、せねばならぬ」と強調しました。日本経済の苦境を打開する麻生流処方せんは企業・投資減税が中心でした。

 ○…福田元首相の「日本経済全治三年」論は、一九七三年十一月に田中角栄内閣の蔵相に就任したさい、打ち出しました。折から狂乱物価、超インフレ、石油危機が重なる国民生活は苦境。福田氏はのちに真意を『回顧九十年』で語っています。

 「『簡単にはこの混乱状態は治りませんよ。時間がかかりますよ』という意味において『今回は、全治三カ年』と、大胆な言い方をしたわけだ」

 「企業も以前のような成長を期待しない、家庭はまた消費需要を控え目にする、これが根本的な治療のために絶対必要なのだ、と国民に向かって繰り返し強調した」

 福田氏は国民に耐乏を求めながら、企業にも「以前のような成長を期待しない」自重を求めたのでした。

 ○…麻生首相は、どうか。国民に今後三年間、負担増と暮らしの我慢を求めるところは福田元首相と同じですが、大企業にいっそうの政策減税の大盤振る舞い。大企業優遇という面で、元祖・福田流「日本経済全治三年」論とは大きく異なります。

 ○…麻生氏は自民党政調会長当時の二〇〇二年八月二日の内外ニュース東京懇談会の講演でも、日本経済の回復見通しをただされて「三年というところがいいとこかなと考えています」と答えていました。最近六年来、麻生首相は「日本経済は全治三年」が口癖です。

 ○…公立病院勤務医(内科)に聞くと「ケガや病気で全治三年という診断はない。それはもう慢性疾患です」。

 口を開けば「全治三年」といい続ける麻生首相の真意は、アメリカ追随・大企業優遇の自民党経済政策が生み出す国民生活における苦悩の増大という慢性疾患を治す意思がないことの表明に聞こえます。


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