2008年10月16日(木)「しんぶん赤旗」

参院予算委・小池議員の質問

「後期医療」 欠陥制度存続は無責任 「廃止」が国民の声


 後期高齢者医療制度の「見直し」を口にする一方、保険料天引きは拡大し、高齢者いじめ計画は着々と進める―。十五日の参院予算委員会での日本共産党の小池晃政策委員長の質問は、制度廃止に背を向ける政府の無責任な姿勢を浮き彫りにしました。


「7割が負担減」論

国民欺く宣伝やめよ

写真

(写真)パネルを示して質問する小池晃政策委員長=15日、参院予算委

 後期高齢者医療制度の廃止を求める声に対し、政府は“七割の方は保険料負担が減っている。そういう人たちの負担が増えるのは問題だ”と宣伝しています。

 小池氏はこの数字に何の根拠もないことを具体的に突きました。

 まず小池氏は、「七割が負担減」という数字は六月に発表されたもので、十五日から新たに保険料を取られるサラリーマンの扶養家族(約二百万人)と健康保険組合の被保険者本人(約三十五万人)を含めて計算したものではないと指摘。舛添要一厚生労働相は「入っていない」と認めました。

 また、「七割負担減」は、国民健康保険に加入している世帯のうち十二パターンだけを取り出し、厚労省に都合のいいモデルをあてはめた机上の計算をした数字であることも明らかになりました。

 小池 サンプル調査はしたのか。

 厚労相 年金額で三つのケースを調査し、それを所得分布を推計して出し、主な傾向を出した。

 小池 それはモデル調査という。サンプル調査は無作為に抽出して比較をすることだ。

 厚労相 モデル世帯でやったので、サンプル調査ではない。

 追及を受け、実態を反映した数字でないことを認めながら、あくまで「大体の傾向としては間違っていない」と居直る舛添厚労相。小池氏は「七割という数字の根拠はもう崩れている。それをはっきり認めるべきだ」と批判しました。

 さらに問題なのは、後期高齢者医療制度の保険料は、七十五歳以上の人口が増えるにつれて、二年ごとに自動的に上がっていく仕組みになっていることです。

 「今後の保険料額の推計はしたのか」とただす小池氏に対し、舛添厚労相は「今後検討していく」と試算していないことを認めました。

 小池氏は「制度をはじめて保険料が上がったのか下がったのかの実態調査もしない。これから保険料がどうなるかの計算もしない。本当に無責任だ」と批判し、保険料が今後どうなるのか、独自に試算したパネル(図)を示しました。現在平均月六千円の保険料が、二〇一五年には八千円、二五年には一万三千円、三五年には二万一千円になります。

 政府は「七割は負担減」と強調しておきながら、今後どんどん保険料が上がっていく仕組みを作っているのです。小池氏は「保険料が下がるような宣伝はやめるべきだ」と厳しく批判しました。

図

パネル拡大図PDF形式

「年金天引き」拡大

「見直し」でなく中止を

 高齢者の生活の糧である年金からの天引き拡大計画も明らかになりました。

 舛添厚労相は、十五日に後期高齢者約三百万人、六十五―七十四歳の国民健康保険加入者約百三十万人の計四百三十万人が新たに年金から保険料を天引きされたと答弁。小池氏は「つい最近まで六百二十五万人といっていた。まともに調べもしないで、批判が高まるとあわてて数字が変わる」と批判しました。

 さらに小池氏は、来年十月から六十五歳以上の人は住民税まで年金から天引きされることを指摘しました。

 小池 対象者は何人か。なぜこういうことをするのか。

 総務相 徴収の手間を省くのが最大の意味だ。対象者は、六十五歳以上の二割強に当たる六百五十五万人になる。

 小池 結局、役所の手間だけの話ではないか。

 小池氏は、住民税の年金天引きは、四月に衆院で与党が三分の二の再議決で強行した地方税法改悪によるものだと批判しました。

 小池氏は「来年四月には介護保険料が引き上げられる。来年十月には住民税まで天引き。高齢者の心情を逆なですることになる」と怒りを込めて語り、「制度を見直すといいながら、一方で決めたことはどんどん進めていく。いっていることとやっていることが違う。ただちに天引きの拡大はストップすべきだ」と迫りました。

 しかし、麻生太郎首相は「丁寧に説明すれば理解は得られる」などと述べ、天引き拡大にあくまで固執する姿勢に終始。小池氏は「まったく無責任だ」と強く批判しました。

医療費適正化計画

5年かけ7500億円削減

 「医療費をどんどん削減していくつもりはない」と強弁する舛添要一厚労相に対し、小池氏が突きつけたのが、政府が九月に決定した「医療費適正化計画」の問題でした。後期高齢者医療制度と一体に高齢者を狙い撃ちしたものです。

史上初めて

 同計画は、政府の医療費抑制路線のもと、長期療養が必要な患者が入院する療養病床の削減や、入院日数の短縮などの目標を定めたものです。政府が各都道府県に目標を立てさせ、それを国が全国計画としてまとめました。病院に入院した患者の一回あたりの平均的な入院日数(平均在院日数)を、二〇一二年度にはいまより二・四日短縮する―などの目標を掲げています。

 舛添厚労相は、五年後に約七千五百億円もの医療費を抑え込む「効果」があると、同計画を正当化しました。小池氏は「医療費を削減するつもりはないと言いながら、実際は五年間で七千五百億円を超える医療費を削減する。数値目標を決めた削減は、史上初めてではないか」と厳しく批判しました。

現場に悲鳴

 「入院したらすぐに退院の日取りの相談になる」「行く当てもなく途方に暮れてしまう」…。小池氏が質問で取り上げたように、いまでも病院からの患者追い出しに対して、医療の現場では悲鳴があふれています。

 小池 こういうときに、さらに入院日数を減らせという数字の目標まで出して都道府県に競わせる。介護の受け入れ態勢ができていないなかで、こんな計画を進めたら大変なことになるのではないか。

 厚労相 国民全体で医療費を抑えていく努力はやらないといけない。無駄があれば、無駄を排さないといけない。方策は間違っていないと思っている。

 小池 日本の医療費に無駄があるんですか。大臣は現場を回っているように言うが、入院日数なんてみんなギリギリにやっていますよ。大変な努力をしているじゃないですか。

 開き直る舛添厚労相に対し、小池氏は、いまでも現場を苦しめている入院日数を「さらに減らせという大号令をかけて、機械的に削減目標をすすめる。本当にとんでもない話だ」と指摘。後期高齢者医療制度を「見直す」と言いながら、高齢者を狙い撃ちにした医療費削減計画をそのまま実行しようとする、政府の姿勢を批判しました。


これだけ切り込んだ政党はない

メールで電話で反響相次ぐ

 十五日に行われた日本共産党の小池晃政策委員長による参院予算委員会での質問に対し、党本部に電話やメールなどで「たいへんよい質問だった」「胸がスッとする思いだ」「今度の選挙では、共産党に入れる」と反響が寄せられました。

 「切り口が、他党の議員と違って、これだけ切り込んだ政党、ないですよ。まさに今日、後期高齢者の保険料、年金からの天引きがあるわけですから…」(高齢者・福岡県の男性)「不服申し立ての数など、新しい角度で追及していてメモをとりながら聞いていた」(高齢者・男性)

◆………◆

 夜勤明けでテレビをつけながら寝ていたという名古屋市に住む女性から、「『民主党がいいこといっている』と思って起きたら、共産党の小池さんだった。これまで民主党ががんばっていると思っていたが、目からウロコだった。こんな人が共産党にいたんだ」との感想が寄せられました。

◆………◆

 大学一年生の男性からは「政治的な思想・信条はないのですが、小池さんの質疑を見て、聴き、大変説得力があり、同調しました」とのメールが来ました。

 「答弁が実態とかけ離れているので怒りを覚えて電話した」という東京・品川区の男性(60)は「自分は二月に腰を痛め、二カ月入院し、七月に再発して、再入院した。もっと入院して治療・療養が必要だが、病院からは『早く退院しろ』といわれ退院することになった。治療・入院が必要な人が追い出されている現状がある。小池さんにはがんばってほしい」と語りました。


“筋が通っている”

自民党議員

 「さすがだ。ずっと反対しているから筋が通っている」。15日の参院予算委員会で、日本共産党の小池晃議員が後期高齢者医療制度の廃止を迫った質問後、ある自民党議員は小池氏にこう語りかけました。

 政府が宣伝する「7割が負担減」に根拠がないことを暴き、年金からの天引きが拡大するという本質を突き、“国民の怒りを代弁”した小池氏の質問には、ところどころで他党議員から「そうだ!」などの声が上がりました。

 なかでもわいたのは、小池氏が、舛添要一厚生労働相が作成した「行き先はうば捨て山かな」とバスの中でお年寄りがつぶやいているイラストを掲げた場面。「制度の本質的な説明になっている」「どうしてこのバスを止めないのか」と追及すると、委員会室がどっとわき、厚労相にやじが集中しました。(拓)


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