2008年10月11日(土)「しんぶん赤旗」

社会リポート

絶滅危惧種 アオサンゴの大群落

新基地と両立できない

沖縄・名護


 日本政府も加盟する国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧(きぐ)種にリストアップされたアオサンゴは、沖縄県名護市の大浦湾で大群落が確認されています。同湾の辺野古崎では、日米両政府が米軍新基地建設を予定しており、「新基地とは両立できない」として計画撤回を求める世論がさらに高まることは必至です。(山本眞直)


 アオサンゴはインド洋から太平洋にかけて分布。日本では石垣島の白保海域での群落が有名です。

 白保のアオサンゴが平坦な浅瀬に形成されているのに対し、大浦湾では深く切り込んだ斜面に棒状に成長しているのが特徴です。

 大浦湾のアオサンゴ群落は昨年九月、自然保護グループが通称チリビシといわれる海域で発見しました。

世界有数規模

 群落は長さ六十メートル、幅三十メートル、高さ十二メートルほどです。面積では石垣島には及びませんが、サンゴ研究者の間では「湾内での群落としては世界有数の規模」とされています。

 今年一月には、四つの自然保護団体(日本自然保護基金・WWFジャパン、国士舘大学地理学研究室、沖縄リーフチェック研究会、じゅごんの里)がアオサンゴの生息環境状況を合同調査しました。

 WWFジャパンはその報告書でサンゴ礁の重要性をこう強調しています。「サンゴ礁の海は、海洋面積全体の0・2%を占めるのみですが、海に生息する生きものの四分の一がサンゴ礁の自然にかかわって生きているといわれています。サンゴ礁の保全は、海の環境保全の大きなテーマの一つです」

 事実、大浦湾にはアオサンゴのほかにも、ユビエダハマサンゴ、「動くサンゴ」といわれるスイショウガイの殻に着生するキクメイシモドキなど多くの種の生息が確認されています。豊かな海藻をめあてにジュゴンも回遊しています。四団体の合同調査報告書は、大浦湾の生態系をこう特徴づけています。

 「この海域では、サンゴ礁の礁縁・礁斜面で代表される外洋的環境から干潟、マングローブ、底泥地のような内湾的環境が隣接し、さらにアオサンゴ群集で代表されると考えられる中間的環境もふくめた多様な生息環境が用意されている」

 その結果、「生物種の多様性も非常に高く、このような海域は沖縄県内でもきわめて特異的存在である」

群落から3キロ

 日米両政府が名護市辺野古崎に予定しているV字形滑走路、戦闘機装弾場や洗機場などを設備した巨大新基地計画は、アオサンゴ群落からわずか三キロの距離です。政府は二〇一四年の完成にむけ環境アセス法違反の「事前調査」などをくりかえしています。

 日本政府は一九九五年にIUCNに国家会員(窓口は外務省)として加盟しています。アオサンゴやジュゴンなどの生物多様性の保全、持続可能な利用を目的とした「生物の多様性に関する条約」にも加盟しています。

 合同調査にも参加した「平和丸」船長で、ヘリ基地建設反対協議会の大西照雄代表委員は、一〇年に名古屋で予定されている「地球サミット」の生物多様性条約第十回締約国会議にふれながら、こう指摘します。

 「大浦湾のもつ生物多様性に富んだ生態系を実証したアオサンゴ群落の発見は自然保護団体と平和団体の共同の成果。防衛省は莫大(ばくだい)な予算と人員を投入しながら調査内容を隠したまま新基地建設を強行しようとしている。アオサンゴの絶滅危惧種指定は、名古屋サミットのホスト(議長)国のこの暴挙を地球が許さないことを告発している。新基地建設は撤回しかない」



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp