2008年10月6日(月)「しんぶん赤旗」

補正予算案

首相「早期成立を」と強調するが…

これで国民の不安解消?

家計応援へ切り替え必要


 六日から衆院予算委員会で二〇〇八年度補正予算案(九月二十九日提出)の本格的な審議が始まります。麻生太郎首相は「一日も早い成立を」と求めています。補正予算案は八月に政府が発表した、生活者の不安解消のためとする「緊急総合対策」を裏付けるもので、一・八兆円の規模となっています。

 しかし、そこには重大な問題がいくつも含まれています。

◆「後期医療」

 最大の問題は、国民が今一番不安と怒りを感じ、廃止の世論が高まっている後期高齢者医療制度の存続を大前提にしていることです。

 政府・与党が決めた▽低所得者への保険料の軽減▽新たに保険料を徴収される被扶養者の保険料負担軽減―など小手先の手直しのための予算に約二千五百億円が盛り込まれました。

 このなかには、「軽減」策宣伝の説明会を小学校区ごとに開く費用まで含まれています。

◆非正規雇用

 首相が売りものにしている非正規雇用対策への予算は全体のわずか0・3%以下です。「ネットカフェ難民」などに対してアパート入居時の初期費用などを貸与することに八千五百万円を計上したことが目玉といいますが、これで五千四百人(厚生労働省調査)以上いる「ネットカフェ難民」を救えるのかは疑問です。

◆資金繰り策

 また、政府は中小企業の資金繰り対策に四千億円を計上したことを強調しています。しかし、昨年十月に中小企業信用保証制度が改悪され、「責任共有制度」が導入されました。

 同制度は、信用保証協会が全額保証してきた中小企業の弁済を80%に減らし、残りの20%は金融機関が自己責任を負うというもの。この改悪で、金融機関による中小企業への融資姿勢が厳しくなり、“貸し渋り”の大きな要因となっています。予算をつけても、中小企業への有効な資金繰り対策になるのか疑問視されています。融資を受ける力がないほど弱っている中小企業への直接支援が求められています。

◆燃油高対策

 農漁業分野における燃油高対策には、約千五百億円計上しています。しかし、燃油急騰の大きな原因である投機マネーへの有効な規制へ向け、国際社会に働きかける姿勢はありません。

 燃油費の補てんを受けるには、「省エネ対策」に取り組むことを条件にしており、「使いにくい」との声が上がっています。設備投資費などを考えると、経営難を救う効果は限定的で、関係者からは「条件をつけないで直接補てんを」という切実な声が上がっています。

 補正予算案は、自民・公明政権が続けてきた悪政を改めず、部分的な手直しをしているにすぎません。しかも、政府・与党からは二次補正予算、追加経済対策が必要だという声すら挙がっており、自ら今回の補正予算では不十分だということを認めているのです。

 貧困と格差の拡大を打開し、国民生活を守るには、後期高齢者医療制度の廃止、労働者派遣法改正などによる雇用の抜本的な改善をはじめ、大企業応援から家計応援に政治の姿勢を根本から切り替えることがどうしても必要です。(小林拓也)


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