2008年10月3日(金)「しんぶん赤旗」
博士問題で学術会議が提言
文教予算を増額し若手研究者育成を
日本学術会議がこのほど、提言「新しい理工系大学院博士後期課程の構築に向けて」を発表しました。
同会議第三部(理学・工学)の若手・人材育成問題検討分科会がまとめたものです。わが国の大学院博士課程をめぐっては、博士課程への進学者の減少や短期雇用のポスドク研究者の就職難など、危機的といえる状況があるなかで、大学院のあり方と必要な政策に焦点をあて、大学はじめ政府や産業界などに提言しています。
「提言」によれば理工系での博士号取得者数は年間約五千人で、大学や研究機関の教育・研究職への就職は約千五百人にすぎません。任期つきの非常勤を転々として高齢化するポスドクが増加し、理工系のポスドクは約九千五百人といいます。
また、大学や研究所での定員削減で助教などの若手教員ポストが減少しているなか、短期的に業績をあげることが求められるプロジェクト型研究の資金で採用されるポスドク研究者の割合が増加していることは「独創的な研究を展開することを妨げる恐れがある」こと、そうした競争的資金の獲得において大学間格差が広がっており、私立大学や地方大学での若手の人材育成は困難になっていると指摘しています。国内総生産(GDP)比で高等教育への公的支出が経済協力開発機構(OECD)加盟国中最低にある日本の文教予算を増額し、長期的な視野に立った若手研究者の育成を進めるべきだ、とのべています。
大学や政府や産業界にたいする提言では、大学院教育を見直す、大学院の学生定員制度を柔軟化する、国際比較でみれば少ない博士人材を長期的な展望で確保する、大学院生の生活基盤を保証する財政支援や研究費の支給などの整備、民間や行政など多様な分野へ進むための博士号取得者への社会的処遇の改善、大学院の実態と若手人材の動きについて情報提供の強化などを挙げています。