2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」

米国発 世界金融危機

公的資金投入 下院が否決

NY株 史上最大777ドル安


 ブッシュ米大統領は三十日、米下院が公的資金投入のための金融安定化法案を否決したことを受け声明を発表し、「われわれは、わが国経済にとって決定的瞬間に直面している」と強調しました。これに先立つ二十九日、ニューヨーク株式市場は史上最大の下げ幅を記録し、為替市場でも円高・ドル安が加速しました。一方、米銀行大手ワコビアは同日、金融大手シティグループに買収され、欧州では銀行が国有化。米連邦準備制度理事会(FRB)は同日、世界の主要中央銀行がドル資金供給を六千二百億ドル(六十五兆円)に倍増したと発表しましたが、世界的な金融不安は収まりませんでした。三十日の東京株式市場は、日経平均株価が一時六〇〇円近い大幅な下落を記録しました。


 【ワシントン=西村央】米下院は二十九日、七千億ドル(約七十五兆円)の公的資金を使って金融機関から不良資産を買い取る法案を否決しました。ブッシュ政権は金融不安を招いた失政に続き、巨額の公的資金を投入することに議会からノーを突きつけられました。

 下院の否決を受け、ニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均は前週末比七七七・六八ドル安となり、一日の下げ幅としては、二〇〇一年の同時テロ直後を上回る史上最大を記録しました。

 この日午後からおこなわれた下院の議決では賛成が二〇五、反対が二二八。民主党が一四〇対九五と賛成が上回ったのに対し、大統領与党の共和党内で六五対一三三と、三分の二以上が反対に回りました。両党の議会指導部で法案に合意しながら、反対議員が過半数となった背景には、巨額の税金投入への有権者の強い批判がありました。また、共和党議員のなかに「小さな政府」の立場から税金投入への抵抗が根強くありました。


解説

がけっぷち経済の背景には

 いま、マーケットにあるのは金融恐慌の危機です。歯車の回転はごう音をたてて加速しています。

 市場原理主義のもと、徹底した金融緩和と規制緩和で演出されたのが住宅バブルでした。うたげの後、栄華を誇った一握りの大手金融機関は巨額損失を抱えて倒産あるいは、再編の渦の中です。

 米政府が、巨額の税金投入で危機を回避しようとしたものの、「バブルに酔いしれたウォール街の連中の後始末はご免」とする世論の批判を背景に米下院は公的資金投入策を否決しました。「今度はどこが倒産するのか」。マーケットを覆う疑心暗鬼は沸点に達し、世界の株式市場が暴落しました。

 市場原理主義者たちが信仰してきたマーケットは機能停止状態です。金融市場を支えられるのは唯一、各国通貨当局だけになりました。ところが、協調介入のためのドル資金が巨額に積み上がっても、「ドルの流動性はほぼ枯渇した状況」(白川方明日銀総裁)です。「ドル暴落の危険をはらみつつ、世界経済はがけっぷち」(証券マン)です。「資本主義的生産の真の制限は、資本そのものである」としたマルクスの言葉がよみがえります。(金子豊弘)


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