2008年9月26日(金)「しんぶん赤旗」

イージス艦海難審判

「あたご」側に主因

前艦長らに勧告請求


 イージス護衛艦「あたご」衝突事故の第五回海難審判が二十五日、横浜地方海難審判庁(織戸孝治審判長)で開かれ、横浜地方海難審判理事所が最終の意見陳述を行いました。

 理事所は事故の主因があたご側にあったとして、指定海難関係人の舩渡健・前艦長(53)らに対する勧告を求めました。

 理事所は意見陳述で「本件衝突はあたごが動静監視不十分で、(漁船)清徳丸の進路を避けなかったことによって発生した」と認定。一方、清徳丸も「回避のための最善の協力動作をとらなかった」とし、一因になったと述べました。

 理事所は、事故八分前には両船が互いの動静を監視する必要のある「見合い関係」に入ったと認定しました。この場合、相手を右に見るあたごに一義的な回避義務があります。

 その上で、衝突時の当直仕官の長岩友久・前水雷長(35)と、前当直の後瀉桂太郎・前航海長(36)に対し「動静監視を十分に、交替時の申し継ぎを適切に行うよう」と勧告することを求めました。

 また同艦の「航行指針」が、厳重な見張りや艦橋とCIC(戦闘指揮所)との情報の共有などを定めていたが守られなかったとして、前艦長に「指針順守の指示徹底」を勧告するよう請求。CIC責任者だった安宅辰人・前船務長(43)と、あたごが所属する第三護衛隊にも指導徹底などの勧告を求めました。

 あたご側は審判で「清徳丸はあたごの後方で行きちがう航路を走っていて、後に右転したため衝突した」と主張。舩渡前艦長は独自の航跡図も提出していました。

 中谷啓二理事官は審判後の会見で、「あたご乗務員の証言による清徳丸の灯火の見え方などから、(艦長の主張は)ありえないとみている」と指摘しました。


 海難審判の「勧告」 海難審判は刑事裁判とは別に、事故原因を究明する行政手続き。海難審判理事所の申し立てを受けた海難審判庁が、証拠調べなどの審理を経て、判決にあたる「裁決」を出します。審判庁は裁決で、指定海難関係人に対し、再発防止に向けた勧告ができます。


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