2008年9月23日(火)「しんぶん赤旗」

原爆症 新基準外も認定

札幌地裁判決 肝障害や甲状腺炎


 「病気を原爆放射線のせいだと認めて」と七人の被爆者が国に求めていた北海道原爆症認定集団訴訟(第一陣)で、札幌地裁(竹田光広裁判長)は二十二日、四月から運用が始まった新基準で既に国に原爆症と認められていた三人を除く四人全員を認定する判決を出しました。これにより第一陣の原告七人全員を救済する画期的な判断となりました。

 判決は、新基準で認定されなかった四人について「症状並びに既往症を総合的に考慮して、被爆者の申請疾患が原爆放射線に起因するものであるかを判断するのが相当である」と指摘し、国の処分を取り消しました。新基準で積極的に認定される「五疾病」に当てはまらない二人の肝機能障害、二人の慢性甲状腺炎(橋本病)などを原爆症と認定しました。

 「全員救済」判決が知らされると、札幌地裁前に集まっていた百人余の支援者に拍手が起こり、「北の大地でも全員が勝利したぞ」「原告のみなさんの頑張りに感激した」と喜びを爆発させました。

 入院先から車いすで来た原告団長の安井晃一さん(84)は「必ず勝利するという確信でたたかい、支援者のみなさんとの運動が実りました。核兵器がある限り、被爆者はなくならない。たたかいは死ぬまで続けます」と語り、支援者と次々に握手を交わしました。

 原爆症認定集団訴訟は二〇〇六年五月の大阪地裁以来十一回、原告が連続勝利しています。

 報告集会で高崎暢弁護団長は「控訴して争うことは、被爆者に対するさらなる加害行為だ。判決を真摯(しんし)に受け止め、国は全面解決に踏み出すべきだ」と訴えました。

控訴断念 国に要請 被団協や原告団

 原爆症認定集団訴訟の札幌地裁判決を受けて二十二日、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)と同訴訟全国原告団、弁護団は厚生労働省内で記者会見をおこない、厚労省に要請しました。

 会見で、全国原告団の山本英典団長は「新しい認定基準が被爆の実態にあっていないことがはっきりしたのだから、認定範囲をぐっと広げることを早急にしてほしい」とのべ、国が判決に控訴せず、今回勝訴した四人を認定するよう「切に要求していきたい」と語りました。

 厚労省への要請では、(1)国の控訴断念(2)被爆実態に即した認定基準の再改定(3)訴訟の一括解決(4)認定行政への反省と被爆者への謝罪(5)厚労相の面談―を申し入れました。

 今回の判決で勝訴した北海道の原告、金子廣子さん(68)、北海道弁護団の高崎暢団長ら四人が上京し、要請に臨みました。金子さんは「控訴しないで、認めてもらうようお願いしたい」と訴えました。

 全国弁連の宮原哲朗事務局長は「今回の判決で、司法と行政との乖離(かいり)がさらに拡大した」とのべ、原告側と厚労省側との協議の早期再開と、新しく任命される厚労相との面談を要求しました。

 厚労省の担当者は「厳しい内容の判決だ。内容を検討し、関係省庁と協議する必要がある」とのべました。



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