2008年9月15日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

このまち どんなまち?

住民目線で今 発見


 市民の手による地域調査、研究が盛んです。自分たちの住む地域を知れば、愛着もわく、再発見もある、改善の道筋もでてくる―市民の目線ですすめるまちづくり活動です。


名産品調べて振興

京都 舞鶴かまぼこ調査隊

地図

 舞鶴市は、京都府北部で日本海に面した人口九万人の赤煉瓦(れんが)で有名な港町です。まいづる市民自治研究所は、二〇〇五年十一月に市民有志で設立しました。地域と自治体に関する研究活動を行い、住民の「自治の力」をはぐくむことによって、豊かで充実した地域生活づくりに寄与することを目的にした会員制の研究所です。

 現在会員は、農業青年、会社員、市役所職員、小中学校教員、女性団体役員、自営業、病院職員、農協職員、大工、幼稚園教諭、信用金庫職員、税理士ら多彩な職業を持つ約四十人です。応援会員として岡田知弘先生(京都大学大学院経済学研究科教授)をはじめ十人の研究者の方々に企画運営を支えていただいています。(活動は別項)

地元の財産知る

 今年は初めての地域調査に取り組んでいます。「地元にあるものの価値に気づくことが大切」であり、地元の良さを調べることが地域の「財産」の再発見につながります。調査対象は舞鶴の名産品として長年市民から親しまれている「かまぼこ」としました。

 「舞鶴かまぼこ」は、「良質な原材料」と「蒸し上げ方法」に特徴と個性があります。取り組みの名称は「行け行け!かまぼこ調査隊〜地元の良さを調べる『舞鶴のかまぼこ』編〜」と銘打ちました。

 目的の一つは、かまぼこの生産、流通、消費という一連の流れの現状と課題、そして市民の認知度を調査することによって、地域経済の振興をめざすことです。二つ目は、市民の調査能力の向上です。自分たちが普段生活している「足もとの地域」を自らが調べ、分析し、政策活動を展開していく作業は、大きな意義を持つものと考えています。

 調査は、四月に市民調査員を公募し、十人で「行け行け!かまぼこ調査隊」を結成し、五月にかまぼこ工場見学と蒲鉾協同組合研究員の方からレクチャーを受けました。

愛されるように

 六月にすべての製造者へのヒアリング調査を行いました。話を伺って感じたことは、おいしさと食の安全性への工夫と努力など「よりよいかまぼこづくりにかける気迫と情熱」でした。

 七月には「かまぼこ市民アンケート」調査を実施し、八百四十五通もの回答がありました。自由意見欄には、「舞鶴かまぼこは大好きです。おみやげには必ず持って行きます」「本当においしいよね〜!」などの声が多く寄せられ、愛着度の高さを示していました。

 調査結果をもとに二十三日、「かまぼこの街 まいづる 再発見フォーラム」を西駅交流センターで開催します。調査報告と具体的な提言を行い、岡田知弘先生と舞鶴蒲鉾協同組合、行政の方々をお迎えして、パネルディスカッションを行います。そして報告書にまとめます。

 こうした活動によって、「舞鶴かまぼこ」がよりいっそう市民から愛され、地域経済の振興とにぎやかなまちづくりにつながることを願っています。

(まいづる市民自治研究所事務局長 長谷博司)


まいづる市民自治研究所

 まいづる市民自治研究所(略称「まい研」)は地域レベル(市町村)の「まちの研究所」です。

 活動は、月一回の会員通信『ニュースレターまい研』の発行、年二回の地域づくりなどをテーマにした公開の市民講演会、二カ月に一回の定例会(市内在住講師による会員向け学習会)、舞鶴市の決算カードを元にした財政分析勉強会、交通問題研究会などです。

 とくに定例会は、まちの人から学ぶことで自分たちのまちを支える人々の存在を改めて実感できる機会となっています。


定例会に招いた講師

 舞鶴蒲鉾協同組合、日本板硝子舞鶴事業所、住民の目線で第三火薬廠を記録する会、舞鶴伝統野菜倶楽部、京都大学舞鶴水産実験所、八島おかみさん会、舞鶴地方史研究会、赤煉瓦倶楽部舞鶴、京都中小企業家同友会舞鶴支部、京都北都信用金庫、舞鶴ふるるファーム、舞鶴商工会議所中小企業相談所、若狭湾生物同好会、舞鶴市財政課


景観、道路 多彩な提言

茨城・つくば 市民白書づくり

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 市民白書づくりで地域調査、提言を試みたのは茨城県つくば市の市民グループです。

 タイトルは「市民の目でみたつくばの今」(白書実行委員会編集・発行、百四十ページ、五百円)。七月半ばに刊行し、千部をほぼ完売。五百部を増し刷りするほど普及・売れ行きは絶好調です。

写真

(写真)つくば市民白書2008。表紙の写真は税金の無駄遣いでマスコミに大きく報じられた「回らない風車」。本文で13ページの特集を組んでいます

 目をひくのは多彩な執筆陣です。市民団体、農業団体、労組、NPОなどに所属する四十三人(四十七編)が市民運動と現場からリポートしています。市の行財政、施策とともに、景観、街路樹、駅前整備、生活道路、大気汚染など身の回りのテーマが目立ちます。

 水質汚染の生物的指標として有用なタナゴが川を泳ぐ都市づくりを―と、その具体策も示したユニークな提言もしています。

 つくばエクスプレス開通の恩恵が望めない地区に、実は鎌倉時代の貴重な遺跡があるうえ、山中を迷いながらハイキングコースを次々整備し三百六十度の山頂パノラマを実現。隠れた“資源”を生かしたNPОの「郷土づくり」のドラマもつづられています。

 茨城県自治体問題研究所理事長(当時)の田村武夫茨城大名誉教授は、白書が市政の現状をえぐり出すと同時に、「地域の創造者たらんとする姿勢をも示しており、感動を呼び起こします」と推薦文を寄せています。

 白書編集責任者の山本千秋氏は「せっかくできたつくば養護学校がわずか一年で過密になり教室不足やスクールバスの問題がおきている報告もあり、私自身も学びました。どんな問題があり、どうとりくんでいるか、つくばを知る一冊になったと思います。多様な施策提言が盛り込まれており、市政にも必ず影響を与えるでしょう」と話しました。


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