2008年9月5日(金)「しんぶん赤旗」

イージス艦事故

海自、責任を転嫁

海難審判 “漁船右転で衝突”


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 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」が漁船清徳丸に衝突、漁船の親子が行方不明(後に死亡認定)になった事故の第一回海難審判が四日、横浜地方海難審判庁(織戸孝治審判長)で開かれました。指定海難関係人の舩渡健・あたご前艦長(53)は「清徳丸の位置についてわれわれの意見と異なるところがある」と主張、衝突時の当直士官だった長岩友久前水雷長(35)は「衝突の危険はないと認識していた。その後清徳丸が右転したため新たな危険が生じ、衝突に至った」と述べました。

 自衛官個人は海技免状を持たないため、指定海難関係人に指定され出廷しました。

 審判では横浜地方海難審判理事所の理事官が審判申し立て理由を説明。(1)両船は事故発生の二月十九日午前三時五十八分ごろには、互いの動静を監視する必要のある「見合い関係」に入った。相手船を右に見るあたごに回避義務があった(2)当直態勢だったあたごは監視を怠り、衝突した(3)仮眠中だった艦長と、第三護衛隊(あたごが所属)も安全指導を徹底していなかった―と述べました。

 これに対し長岩前水雷長は「動静は監視していた」と反論。衝突直前に当直を交代した後瀉桂太郎前航海長(36)も「監視を怠ってはいない」と述べました。

 舩渡前艦長は冒頭の意見陳述で「大変責任を感じている。申し訳ない」と謝罪。その一方で尋問に対し、「清徳丸は理事所が主張するより南を走っていた」と説明、「位置の確認をお願いしたい」と述べました。

 今年七月の防衛省の報告書「不祥事の分析と改革の方向性」は理事所の申し立てを前提に、「あたごは衝突一分以内まで清徳丸を認識できなかった」と記載していました。今回の主張はこれと大きく食い違います。

 なだしお事故で海難補佐人を務めた日本海事補佐人会長の田川俊一弁護士の話 清徳丸の位置が違うという主張は、見合い関係が成立したこと自体を争う姿勢だとみられる。次回以降、理事所がどう尋問を進めるか注目したい。


 海難審判 海難事故の再発防止のために原因を究明し関係者の行政処分を行う、海難審判法に基づく行政手続き。被告人に刑罰を科す刑事裁判とは異なります。海難審判理事所の理事官は、事故原因に関係があると判断した者を「受審人(海技免状所有者)」や「指定海難関係人(免状を持たない個人・法人)」として審判の当事者に指定。海難審判庁に審判開始を申し立てます。審判官が言い渡す「裁決」(判決にあたる)によって、受審人への業務停止などの行政処分や、指定海難関係人への勧告がされます。


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