2008年9月3日(水)「しんぶん赤旗」

関東大震災時の朝鮮人虐殺、日弁連の勧告とは?


 〈問い〉 関東大震災時の朝鮮人虐殺数は? 日弁連が、国に謝罪を求める勧告をしたそうですが、どんな内容ですか?(東京・一読者)

 〈答え〉 85年前の1923年9月1日に起きた関東大震災時の朝鮮人虐殺について、国は、責任を認めず、この犯罪を隠しつづけてきました。このため、虐殺数の確定がむずかしく、「数千人に達したことは疑いないが、厳密に確定することはもはや不可能」(山田昭次『関東大震災時の朝鮮人虐殺』創史社、第6章「虐殺された朝鮮人数の諸調査の検討」)とされます。山田氏は「司法省調査に比べれば、在関東地方罹災朝鮮同胞慰問班調査の数字(6661人)は、より現実に近いと断言できる」とも書いています。

 震災3カ月後の23年12月15日、衆議院本会議で永井柳太郎は、内務省警保局長の電文その他、官憲が朝鮮人暴動のデマを流した証拠をあげて、「鮮人事件の全責任は唯々自警団にのみ存するが如き観」をなしているが、「政府自ら出したところのこの流言蜚語(ひご)に対して責任を感じないのか」と、政府に謝罪を迫ります。これにたいして、山本権兵衛首相は「目下取り調べ進行中…最後に至りまして事柄を当議場にうったえる時もございましょう」という答弁で逃げ、以来、今日まで日本政府は、山本の態度を踏襲し、調査結果の発表も謝罪もしていません。(同前)

 日本弁護士連合会(日弁連)が2003年8月25日におこなった内閣総理大臣あての「勧告」にも回答していません。

 日弁連の「勧告」は、在日朝鮮人から「父の知人が関東大震災直後に虐殺されたり、虐殺をうけた朝鮮人が遺体に残酷な仕打ちをうけているのをみたりして深く傷ついた。国は、責任を認め、あるいは謝罪したことは一切ない。同種の事件を再発防止するためにも政府の責任を明らかにしてほしい」という人権救済申し立てを受けたものです。

 日弁連人権擁護委員会は、調査、史料検討を行い、虐殺の背景に戒厳宣言があり、軍隊による多数の朝鮮人・中国人虐殺があったこと、内務省警保局長発の打電が流言飛語の原因となり、自警団創設につながったこと、などを認定、次の2点を勧告しました。

 (1)国は関東大震災直後の朝鮮人、中国人に対する虐殺事件に関し、軍隊による虐殺の被害者、遺族、および虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺の被害者、遺族に対し、その責任を認めて謝罪すべきである(2)国は、朝鮮人、中国人に対する虐殺の全貌(ぜんぼう)と真相を調査し、その原因を明らかにすべきである。

 勧告内容全文は、『日弁連人権侵犯申立事件 警告・勧告・要望例集5』(明石書店)に収録されています。(喜)

〔2008・9・3(水)〕


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