2008年8月20日(水)「しんぶん赤旗」

最高裁が大法廷、小法廷で審理する基準は?


 〈問い〉バウネット・ジャパンの審理が最高裁小法廷でされたことに違和感をもちました。表現の自由の侵犯などの審理は当然、大法廷と思っていました。大法廷、小法廷で審理を分ける基準は?(福島・一読者)

 〈答え〉最高裁判所は、憲法で、下級審の憲法判断の適否を最終的に決定する裁判所であると定められ(第81条)、大法廷と小法廷が置かれています。

 大法廷は15人の裁判官全員で構成され、最高裁長官が裁判長となります。法令等が憲法違反であるとの判決を出す場合は、8人以上の裁判官の意見が一致しなければなりません。

 小法廷は各5人で構成され、どの裁判官も第一〜第三小法廷に属しますが、最高裁長官は出席しないのが普通です。裁判長は事件ごとに各小法廷で定め、判決は多数決で決めます。

 事件を大法廷、小法廷のいずれで扱うかは「最高裁判所裁判事務処理規則」に基準が定められています。最高裁が受理した事件は、能率的な処理のため、まず小法廷で審理されます。

 大法廷で扱われるのは、裁判所法で小法廷が扱ってはならないと定めている三つの基準にあたる事件です。

 (1)当事者の主張にもとづき、法律、命令、規則、処分が憲法に違反するか否かを新たに判断する時(2)当事者の主張を待たずに、法律、命令などが憲法に違反すると認める時(3)憲法や法令の解釈適用についての意見が以前の最高裁判例に反する時―です。ご質問の「表現の自由にかかわる場合」などの基準はありません。

 小法廷の裁判官の意見が二つに分かれ、同数の場合や、小法廷が大法廷で裁判することを相当と認めた場合も、大法廷で扱われます。

 裁判官は「良心に従(したが)ひ独立してその職責を行」うことが憲法で保障されていますから、過去の最高裁判例を見直すような場合、小法廷から大法廷に回付することを求めるのがルールです。

 しかし、大阪空港騒音公害訴訟では、1975年11月、大阪高裁が夜9時から朝7時まで飛行差し止めと健康被害などに対する損害賠償などを命じたのにたいして、最高裁は第一小法廷が審理を終え、判決日を指定する直前になって突然、審理を大法廷に回し、高裁判決後6年もかけ、飛行差し止めを否定する逆転判決を言い渡す異例のことを行いました。

 最近は、以前にくらべ大法廷で扱う事件が減っており、憲法の番人の性格が弱まっているのではないかとの指摘もあります。ご質問にあるように、大法廷での審議がもっと活発化されることが望まれます。(光)

 〔2008・8・20(水)〕


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