2008年8月11日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

放置される危険家屋

倒壊が心配

行政の対応一刻も早く

京都


 放置され荒れ果てた空き家の近隣住民が不安な日々を送っています。市町村は倒壊のおそれのある家屋の通報を受けても、「私有財産だから対策に限界がある」として住民の求める安全策の要望にこたえにくい状況です。京都市では、危険家屋対策の要綱づくりをすすめています。危険家屋対策に取り組んでいる日本共産党の加藤広太郎京都市議会議員のリポートを紹介します。


建築基準法の活用で

写真

(写真)加藤広太郎市議

 「子どもたちがケガをしたら困る」「買い物客が危険だ」「台風が来たら危ない」と、私が京都市右京区花園の危険家屋の相談を受けたのが、二年前です。

 その建物は以前の公設市場のそばにあり、二階建ての小さな小屋でした。自営業者の老人が亡くなり、相続人の息子さんたちも「何もかかわりたくない」と遠ざかり、解体工事を求めようとしても連絡の方法もありませんでした。

打つ手ない状態

 地域の自治連合会の会長に相談にいっても、「困っている」状況でした。区役所、弁護士に相談しても“個人の資産に手を出せない”とのことで、打つ手がない状況で時間が経過しました。

 その後、京都市都市計画局建築監察課の担当者が努力して相続人を探し出し、話を詰める中で相続人の力で解体工事が行われました。今は更地となって地域の人は喜んでいます。

 今年二月八日付(夕刊)の「京都新聞」に「危険家屋 京で通報増加」「老朽化『崩れそう』『瓦落ちかけ』」と題して大きな記事が出ました。「年々通報が増加し、高齢化と核家族化で空き家が増えている(二〇〇六年度四十八件)」と記事にありました。京都市の対応は、「家の維持・管理は所有者の義務」「第三者にけがさせると所有者の責任」で相続人に対処を求めていると紹介していました。

 私は、新聞に出ていた家屋や市が指導している危険建物を視察して、「相続人同士が、話し合いができない」「資力がなくて、解体工事ができない」事例も知りました。

 個人情報の壁もあり、私が相続人と接して話をすることは不可能ですが、行政にはその役目をはたすことは可能です。

 私が視察した京都市東山区弓矢町の建物について、隣接者のご主人が「十年も前から言っているのに、消防分団の人がシートを張ってくれただけや」と、怒っておられました。

市議会で要求

 私は、市議会で住宅問題を担当する「まちづくり消防委員会」に所属しています。私は、担当課長と相談しながら委員会で「相続人が手を打てない時は、市民の安全、安心を守る点からも、京都市が代わって解体工事をやる必要がある」と、再三にわたり取りあげています。

 部長は「建築基準法第一〇条の保安上危険家屋に対する措置ができる」を活用し、「危険な状況とは何か」などを検討することや、「年度内に代執行ができるようにすべきだ」との私の質問にも「今秋には代執行を視野に入れた要綱づくりをする」と答弁したのが六月二十六日の委員会でした。

 読売テレビ(本社・大阪市)のニュース番組「倒壊危険家屋の実態」と題した特集も放映(六月十三日)され、私の活動が紹介されました。

 今は、その要綱を待っているところですが、現場の危険な状況は変わりません。一刻も早く代執行が可能となり執行できるように、予算措置された一千万円の代執行予算(古都“京都”を守る代執行を可能とする総予算)の出番が近づいています。(別項は栗山正隆)


東山区

地図

 京都市東山区弓矢町の空き家 南北に通り抜けできる道(幅約二メートル)をはさみ民家が並んでいます。その東側中央に倒壊の恐れのある木造瓦ぶき二階建ての空き家があります。北側外壁の大半が損壊し、大屋根の一部が垂れ下がっています。この家は両隣家に接しています。一部を青いシートで覆っているものの、外壁などが通路側にも倒れこむのではないかと感じさせます。(写真、七月二十八日撮影)

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西京区

地図

 京都市西京区樫原上ノ町の空き家 三ノ宮神社南側で第一種低層住居専用地域(建物の高さ十メートルまで)に、木造二階建て瓦ぶきの家と平家の空き家があります。いずれも傾き、激しく壊れています。二階建ての家は、北側の道路への倒れこみを生い茂った樹木で防いでいるようです。道路側の塀に、「落下物に注意」をよびかける看板が取り付けられています。(写真、同日撮影)

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 建築基準法一〇条 建築基準法は、危険な家屋など建物の対策として一〇条で「保安上危険な建築物等に対する措置」を定めています。

 一〇条の前文は「特定行政庁は(中略)損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、または著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物またはその敷地の所有者、管理者または占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上または衛生上必要な措置をとることを勧告することができる」とのべています。

 特定行政庁は、建築主事を置いている地方自治体の長のことをいいます。建築主事は、建築確認や違反建築物への是正命令、斜線制限(日影規制)、建物の高さなど建築基準法にもとづいて執務をします。


 家屋の解体工事費 危険な家屋の放置要因のひとつは、解体工事費をつくれないことにあるといわれています。解体工事費は廃材処理を含めて三・三平方メートル(一坪)あたり、京都府で木造建物が二万五千円―三万円、鉄骨建物が四万円、東京都で木造三万円―五万二千円、鉄骨三万五千円―四万八千円が相場といわれています。危険な家屋の安全策をとるため、解体工事費をどうするのかも検討課題になりそうです。

 各地の解体工事費の状況は、インターネット・解体業者のホームページで調べることができます。


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