2008年8月7日(木)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

実態を直視し大幅引き上げを


 厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」が六日、二〇〇八年度の地域別最低賃金の引き上げ幅の目安として、全国平均で時給(現在は全国平均六百八十七円)を十五円アップすることを決めました。昨年度実績(十四円)を一円上回り、初めて平均七百円を超えますが、「せめて時給は千円以上(年収二百万円)」を求める労働者の要求とはほど遠い水準です。

 目安額は、各都道府県の審議会の議論を経て、具体的な引き上げ額が決まります。労働者の実生活を正面から見据え、実態に見合った大幅な引き上げが必要です。

実態とかけ離れた時給

 ことし六月には、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」(政府と労使代表で構成)が、最低賃金を二〇一二年度までに小規模事業所の「高卒初任給の最も低い賃金」を目安に引き上げることで合意しています。昨年十一月に成立した改定最低賃金法は「生活保護との整合性に配慮する」との規定が盛り込まれ、七月から施行されています。

 今年度の審議は、「円卓会議」の合意と改定最低賃金法を踏まえ、“最低賃金と生活保護との乖離(かいり)額”が目安に加わり、最低賃金の大幅引き上げが焦点となりました。

 最低賃金の上げ幅は、都道府県をA―Dの四つのランクに分け、東京、神奈川、大阪など五都府県がAランクの十五円、埼玉や京都、広島など十府県がBランクの十一円、北海道や宮城、岡山、福岡など十六道県がCランクの十円、青森や島根、高知、沖縄など十六県がDランクの七円としています。

 改正最低賃金法を受けて、最低賃金が生活保護費を下回る「逆転現象」がある十二都道府県については上積みを求め、二―五年以内に解消するよう指摘しています。最低賃金と生活保護水準との差額は、神奈川が八十九円、東京八十円、北海道五十三円、埼玉四十一円などとなっています。

 問題なのは、指標としている生活保護基準の取り方です。支給額が高い県庁所在地を外して県平均値を使ったうえ勤労控除を除くなど、生活保護水準を低く抑え込んでいることです。現実には、すべての地域が生活保護を下回っているのが実態です。時給平均が七百円とは、年収にしてわずか百五十万円ほどです。

 賃金は上がらないのに税金や保険料の負担が増え、諸物価は高騰し、暮らしを直撃しています。老後や介護、医療の不安が増すなかで個人消費が縮小しています。

千円以上は共通の要求

 経済政策の軸足を家計に移すと同時に、大幅な賃金の底上げこそ貧困・格差の解消と、中小企業を中心とした地域経済の健全な発展への道です。

 賃上げの必要性については、福田改造内閣の新しい閣僚も認めざるを得ません。野田聖子・消費者行政推進担当相は「賃金が上がっていないということが一番問題」と指摘し、与謝野馨・経済財政相は「正規雇用と非正規の賃金格差も考えないといけない」とのべています。全国一律最低賃金制を基本に時給千円以上への是正と、抜本的な中小零細企業対策をあわせておこなうのは政治の責任です。

 最低賃金引き上げのたたかいは都道府県の審議会に移ります。労働者や労働団体が一致して求める時給千円以上の実現へ、国民的共同の力を発揮するときです。



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