2008年8月6日(水)「しんぶん赤旗」

“鉄砲水が来た”

都市型災害再び

マンホール作業員不明

東京・豊島


 東京都豊島区雑司が谷のマンホール内で下水道工事中に作業員五人が流され、うち二人の死亡が確認された五日、警視庁や東京消防庁は引き続き捜索を続けました。


 現場付近では消防や警察の車両が行き来する騒然とした雰囲気の中で捜索が進められていました。午後も突然の大雨に見舞われ、二次災害を警戒しながらの捜索となりました。

 作業員五人が流された豊島区雑司が谷の現場は傾斜の谷底に当たる部分でした。

 近所の男性(82)によると、事故のあった下水道は戦前につくられたといいます。下水道ができる前は現場周辺には幅一メートルほどの川が流れていて、雨のたびに増水を繰り返していたといいます。

 都によると、下水道は幅二メートル、高さ一メートル四十六センチの角形。通常、水位は二十センチ前後ですが、雨水も流れ込んで増水した可能性があるといいます。

 現場周辺は、午前中は晴れていましたが正午前ごろに空が急に暗くなり、雨がポツポツと降り出し、数分後に大雨になったといいます。食料品店の女性(59)は「あの雨量だと相当の水が集中したのでは」と話します。

 現場近くの青果店の女性(59)は、「現場監督の五十代くらいの男性が雨がポツポツと降り出したときに、『雨が降り出したとみんなに伝えて』とマンホールの中や作業員に話していた」と証言します。

 脱出した男性は「六人は近くで作業をしていたが、鉄砲水が急に来て流された」と説明しているといいます。

 パン屋の女性(37)は、「作業員がばたばたして、電話をかけたりしていました。見ていると紺色のTシャツとパンツ姿でずぶぬれの男性がいました。顔面が蒼白(そうはく)で、顔を見れば何かあったとわかりました。後で聞いた話で自力で助かった方だったとわかった」と、直後の様子を語りました。

あふれやすい合流型

 首都圏など都市部では、地表の大部分がコンクリートやアスファルトで覆われているため、水はけが悪く、局地的な豪雨で、下水道や河川が短時間で一気にあふれ出します。

 大雨注意報・警報が十分生かされていたのかどうか。今回のような事故を繰り返さないために、指導、管理のマニュアルづくりをすすめるなど、教訓を生かす必要があります。

 近年、一時間に五〇ミリを超えるような集中豪雨が増えているなかで、工事現場の安全対策がどうだったのかが問われます。

 同時に、大量に降った雨水が、全部下水道に流れ込む現在のシステムでいいのかどうか。都市づくりのあり方も問われています。

 東京都の下水道は基本的に生活廃水と雨水をいっしょに処理する合流型。下水道から水が逆流してあふれ出す「内水型はんらん」への対策が必要です。

 都は二十三区の河川で一時間当たり五〇ミリの雨に耐えられるように護岸整備を進めていますが、今回、現場近くの豊島区南大塚では一時間に六六ミリの雨量を記録しました。

 墨田区などでは、雨水を排出するのではなく、貯留・浸透をはかる雨水利用施設の導入を進め、洪水対策でも成果をあげています。

 都市での総合的治水対策が求められます。


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