2008年7月29日(火)「しんぶん赤旗」

主張

派遣法研究会報告

潮目の変化実らす抜本改正を


 労働者に低賃金と不安定な雇用を押し付け、「ワーキングプア」(働く貧困層)拡大の原因と批判されてきた労働者派遣制度見直しの報告書が発表されました。厚生労働省の派遣法研究会がまとめたもので、問題にされてきた「日雇い派遣」の原則禁止、派遣先企業への勧告などが盛り込まれています。

 労働者派遣制度をめぐっては、労働者・国民のたたかいと日本共産党などの追及で、「規制緩和」一辺倒の流れから大きな「潮目の変化」が始まっています。政府・厚労省の研究会が派遣労働の規制を強化する方向を打ち出したのは、その重要なあらわれです。

「労働白書」も問題認める

 法律にさえ禁止された危険な職種への派遣や大幅なピンはねなど違法な派遣の横行、低賃金でアパートも借りられずネットカフェなどに寝泊まりして携帯電話で仕事の連絡を待つ「ネットカフェ難民」も増えているなど、派遣など非正規労働の深刻な実態は社会問題です。先日発表された厚労省の「労働白書」は、非正規労働者の増大が、正規労働者への成果主義賃金の導入と並んで、労働者から労働への満足感を奪い意欲を低下させていると、政府の白書としては異例な形でその弊害を認めました。

 派遣労働はかつて「人貸し」ともいわれたように、派遣元企業が派遣先企業の求めに応じて安上がりで不安定な労働を提供するしくみです。戦後は原則的に禁止されていたのに一九九九年の「原則自由化」以降急速に拡大し、二〇〇四年からは製造業でも解禁されました。これをきっかけに、正規労働者を派遣労働者に置き換える動きが急速にすすみ、「首切り自由の不安定雇用」が急増しました。

 派遣労働をめぐって、「規制緩和」から「規制強化」へ、大きく「潮目の変化」が起きているのは、違法派遣や貧困の拡大が大きな社会的な問題になり、労働者・国民が派遣労働の見直しと正規労働の拡大を求めてたたかってきた結果です。野党だけでなく与党からも「日雇い派遣」の禁止など見直しの声がだされ、大企業の中にも派遣労働の見直しが始まっています。

 もちろん、派遣労働は見直しても、雇用期間限定の「期間工」などに置き換えるだけでは、人間らしい労働は実現しません。「首切り自由の不安定雇用」そのものの一掃が重要であり、派遣法もそれに沿った、抜本改正が不可欠です。

 雇用の基本は使用者が雇用の責任を取る、直接・常時雇用です。日本共産党はその立場から、派遣法の抜本改正では、「労働者派遣は、臨時的・一時的業務について行われるものであり、常用代替として行われてはならない」という大原則を明記するよう求めています。「いつでも首にできる、使い捨て自由の不安定労働」を一掃する、抜本的な法改正を実現すべきです。

登録型は厳しく規制を

 その上で労働者派遣については九九年の「原則自由化」以前に戻し、「常用型派遣を基本とし、登録型派遣を例外としてきびしく規制する。日雇い派遣は禁止する」ことを日本共産党は求めています。

 厚生労働省が研究会報告で「日雇い派遣」禁止などを認めたのは一歩前進ですが、「登録型」派遣をどう規制するかは明記していません。厚生労働省がこれから始める法案化の作業で、抜本的な改正へ前進させることが求められます。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp