2008年7月22日(火)「しんぶん赤旗」

鋼材試験データ偽造

認証機関は天下り団体

業界ぐるみ


 新日本製鉄、JFEスチールの鉄鋼上位二社などによる土木工事用鋼材の価格カルテルが公正取引委員会に摘発されたことに続いて、メーカー各社による鋼材の試験データ偽造が相次ぎました。日本鉄鋼連盟が六月十八日に、会長(宗岡正二新日鉄社長)コメントを発表、加盟各社の副社長クラスをメンバーとする専門部会を設置し、対応策を早急に取りまとめることを決めてから一カ月がたちましたが―。

 鉄鋼メーカーによるデータ偽造は、日本工業規格(JIS)や業者との契約に定められた試験を行わなかったり、行っても別の試験のデータを提出していたというもの。新日鉄の子会社「ニッタイ」、JFEスチールなど、国内のメーカー九十社のうち、十社で偽造が判明しました。(表参照)

 大手五社では、住友金属工業を除いて、四位の神戸製鋼所の子会社「日本高周波鋼業」、五位の日新製鋼でも偽造が発覚、まさに業界ぐるみといった様相です。

 なぜ、業界ぐるみの不正が生まれるのか―。

 「試験には時間がかかるので生産性が落ちると製造所長が判断したようだ」(日新製鋼・松永成章副社長)、「現場が生産性を優先した」(日本高周波鋼業・池田辰雄社長)―。データ偽造発覚後の各社トップの弁明です。現場のせいにしていますが、もうけ優先の姿勢にあることは明白です。

 同時に、二〇〇四年の工業標準化法「改正」で、従来、おもに国が評価し、認定を行ってきたJIS規格の適合性は、国の審査を通った第三者機関が認証するようになったこともあります。

 経済産業省は今回の事態に、審査のあり方について認証機関に注意を喚起。これまでに「ニッタイ」、日新製鋼尼崎工場、日本冶金工業の子会社「ナストーア」の茅ケ崎製造所(神奈川県茅ケ崎市)の三工場のJIS認証が取り消されました。

 ところが、これらの工場を認証した経産省所管の財団法人「日本品質保証機構」の理事長は元特許庁総務部長、専務理事は元経産省生活産業局繊維課長といった天下り団体です。また、民間認証機関「日本検査キューエイ」(資本金六千万円)にいたっては、新日鉄、JFEスチールなどの鉄鋼メーカーや鹿島、清水建設などのゼネコンがおもな株主に名前を連ねています。

 しかも日本鉄鋼連盟の専務理事と、三人いる常務理事の一人の計二人は経済産業省OBです。

 JIS規格を順守する厳格さが“官民”双方に不足しているとの指摘もあります。昨年来、相次いで発覚した耐火・防火建材の性能偽装問題で、「大臣認定」というお墨付きを与えてきた性能評価機関が国土交通省などの天下り団体だったように、業界と行政の癒着がきびしく問われます。

鉄鋼メーカーの主なデータ偽造

新日本製鉄※
 ステンレス鋼管12万5500本の水圧試験未実施。チタン鋼管など5300本の契約で定めた試験省略

JFEスチール
 鋼管2500本の水圧試験未実施

日新製鋼
 ステンレス鋼管55万2000本の水圧試験未実施

神戸製鋼所※
 鋼材206トンで強度試験を実施せず、ステンレス鋼棒1082トンで契約した試験を省略

日本冶金工業※
 ステンレス鋼管97万6000本の水圧試験を省略

日本金属工業※
 ステンレス鋼管4万7000本で空気圧試験を実施したが水圧試験と記載

不二越
 鋼材1万4000トンで契約した硬さ試験を省略

大同特殊鋼
 鋼材11万7000トンで契約した検査を代替、虚偽記載

淀川製鋼所
 溶融亜鉛めっき鋼板など48万4000トン以上でJIS規定を満たさず

三菱製鋼※
 高炭素クロム軸受鋼4400トンでサンプル採取頻度がJIS規定を満たさず

《注》各社の発表などで作成。※は子会社


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